地方議会議員・首長のボーナスアップ議案はなぜ問題なのか

この12月、日本各地の地方議会で、地方議員・首長のボーナスアップ議案が提案されているようです。このボーナスアップ議案について、なぜ提案されてしまうのか、なぜ問題があるのかについて書きたいと思います。

まず、地方公務員の給与についてですが、議員や首長ではない一般職の職員は、民間給与に連動して給与が増減するようになっています。これは、職員は、政治的中立性が求められる職務の特殊性から、労働基本権が制約されているため、第三者機関である人事委員会が民間給与を調査し、これにあわせて地方公務員一般職の給与の適正な額について勧告をすることになっているためです。勧告された自治体の側も、ほぼこの勧告どおりに給与の基準額を変更する議案を議会に提出し、議決されています。なぜ12月なのかについては、おそらく、4月に民間の給与が変更になる→調査する→勧告する→当局が具体的に給与基準を改定する→職員組合と交渉する・・・とやっていると大体12月議会の時期になるからだと思われます。改定された給与基準は、民間の給与の変更時期にあわせて、4月分から遡って適用になるので、給与改定の議案の議決後、アップした分の給与が職員に支払われることになります(給与が急激に上がると結構な金額になるので、第2のボーナスと言われていた時期もあったようです)。

では議員や首長の給与はどのように決まっているでしょうか。まず、議員や首長は、選挙によって選ばれる特別職であり、一般職の公務員に必要とされる政治的中立性は求められません。議員については議員報酬、首長については給料であり、これらは条例で定めなければならないとされていますが(地方自治法203条4項、204条3項)、この条例を提案したり、議決したりするのも首長や議員・議会自身です。政治的な中立性も求められず議員報酬や自分の給料も自らの判断で決められる、ということになると必然的に「お手盛り」となってしまいかねません。そこで、当時の自治省は、昭和39年に、議員報酬や首長の給料は、議員や首長自身で決めるのではなく、住民から意見を聞いて決めるように通知を出し、これが現在、各自治体で制定されている「特別職報酬等審議会条例」のもとになっていて、報酬等の条例案を提出するときは、この審議会を開催しなければならないことになっています。自治省からは、昭和43年、48年にも、特別職報酬等審議会のことについて通知が出されてて、内容としては、特別職は一般職とは性質が異なるのだから、一般職に出している手当を一般職の例に倣って出したり、一般職の給料のアップにあわせて特別職の給料もアップさせたりすることがないよう、しっかり審議会=住民の意見を聞いて給料を決めるように、という感じのものになっています。

特別職の報酬等は、その職務の特殊性に応じて定められるべきものであって、生計費や民間賃金の上昇等に相応して決定される一般職の職員の給与とは自ずからその性格を異にし、また、その額は個々具体的に住民の前に明示するよう条例で定めるべきものであり、したがって、一般職の職員の給与改定に伴い、特別職の報酬等についても自動的に引上げられることとなるような方式を採用することは、法の趣旨に違背するばかりでなく、特別職の報酬等の額の決定について広く民意を反映させるために設置されている特別職報酬等審議会の実効性が失われることにもなるので、かかる方式を採用することのないよう、厳に留意されたい。

特別職の報酬等について(昭和48年12月10日自治給第77号自治省行政局公務員部長通知)

ではなぜ、この12月、日本各地の地方議会で、特別職報酬等審議会が開かれることなく、議員や首長のボーナスアップ議案が提出されているのでしょうか。まず、一般職の職員の給与は、民間給与にあわせて改定されることになっているので、昨今の民間の給与アップにあわせて、給料やボーナスを増やすよう勧告がなされ、これにあわせて給与改定議案が提出されています。特別職は、審議会を開催しなければならないはずですが、昭和39年の自治省通知では↓のようになっています。

議員の報酬の額に関する条例を議会に提出しようとするときは、あらかじめ当該報酬の額について、審議会の意見を聞かなければならないものとすること。なお、知事、副知事及び出納長の給料の額についても同様の手続により措置することが適当であること。

特別職の報酬等について(昭和39年5月28日自治給第208号自治事務次官通知)

では、ボーナスアップの議案はどうなっているでしょうか。

令和5年12月盛岡市議会提案議案第214号

はい、自治省の通知の「報酬」「給料」ではなく、「期末手当の支給割合」となっています。報酬や給料ではなく、ボーナスの支給割合だから、当局(首長)は、特別職報酬等審議会で住民の意見を聞かなくても、議案を提案できると考えておられるようです。議員や首長の期末手当の支給割合は、国や県の動向に合わせて改定することとしている(慣習)とのことで、法的な根拠はありません。

しかし考えてみてください。議員報酬や給料でないからといって、ボーナスは住民の意見を聞かずに増やしてしまっていいのでしょうか?一般職と特別職は性質が異なるのだから、特別職の報酬を一般職の給与と連動させることがないように自治省から通達があったのではないでしょうか?報酬や給料だけでなく、ボーナスだってお手盛りの可能性はあるのではないでしょうか?
自治省通知を脱法的に解釈し、根拠のないボーナスアップを、周りの自治体にあわせて、ただただ慣習に沿って提案している・・・ここにボーナスアップ議案の問題があります。議員や首長も、このくらいならいいや、と考えているのかもしれません。このゆるさは、「お手盛り」そのものです。

ちなみに・・・報酬や給料を増やすのではなく、下げる提案は、審議会で意見を聞かなくても提案できるのが慣例となっています。お手盛りの危険がないからです。内舘盛岡市長の退職金不支給や、日本維新の会の身を切る改革は、審議会を開催していません。しかし、個人的には、身を切る改革の本質は、既得権を打破し、住民視点の政治を取り戻すことにあるので、審議会を開催し、住民にしっかり審議をしてもらうのが適切と考えます。議員や首長自身が、報酬や給料を高すぎるとか低すぎるとか考えても、結局は独りよがりのおそれがあるからです。住民の納得する報酬・給料で働くために審議会を開催して住民の意見をしっかり聞く、これが古くて新しい形の改革のあり方であると考えます。一般職の給与勧告のために、毎年民間給与調査が行われ、人事院勧告が行われるように、特別職の報酬等についても、毎年、特別職報酬等審議会を開催し、適切な額を継続的に検討すべきです。なお、盛岡市で最近開催された特別職報酬等審議会は、平成20年・・・・・・このような現状をリメイクすべく、力を尽くします💪

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