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歌仙 桜餅の巻 膝送 ナオ七 恋 R4.4.30

先輩方の四吟のペースだと2~3日にいっぺんは、私が句を詠む順番が回ってきます。捌きの方がどんな句を選んで、どういうところを一直して治定したのかという背景や、次に詠む句の季節や自他場の別、留め方の注意などもあわせてメールをいただくので、初学の私は、そのメールを読みながら、通勤路であれやこれやと歩きながら考えて必死で詠みます。

どうしても苦手な「恋」の句を詠む、名残の表の七句目の番が回ってきてしまいました。

この前に私が詠んだ句からの展開はこうです。

ナオ
三  刺し子針動かすごとに時忘れ     雑  自
四   とんこつが売り知覧食堂      雑  場
五  風受けて背をかがやかす瑠璃鶲    三夏 場
六   真っ赤な薔薇をベルボーイ抱き   初夏 自他

ルリビタキ 飛んでいる風景なんて考えたことなかったし、真っ赤な薔薇をホテルの部屋に届けてもらったような経験も私にはなく、かなり腰が引けます。。。それでも、「真剣に恋をしましょう」と捌きのTさんに発破をかけていただきました。私は経験ばかりか「恋」の勉強が足りず、ほんとうに自信がない中、名残の表の六句目を口ずさんでみたり頭の中で映像化してみたりしながら、どうにかこうにか恋らしき句を絞り出し、下記の候補句をお送りしてみました。

候補句
封蝋であふるる愛を閉ぢ込める  自
上気してコロン貴方と混じりあふ  自他
寝台に残す匂ひと肌の熱   自他
白無垢と黒紋付の笑み並び  自他
招かれし部屋での君は大胆で   自他

本人としてはものすごくこっぱずかしいのですが、先輩方の恋句も大胆な濃ゆい内容のものも多いことを思い出し、半ば無理やりに出してみた次第です。

Tさんからのお返事は下記のとおりでした。

連句の転じの心からいえば、「白無垢と黒紋付の笑み並び」だとおもいます。わたしの好きな句は「蜜蝋であふれる愛を閉じ込める」です。もっと好きな句は「上気してコロン貴男と混じりあふ」、前句が王子様なら絶対この句です。もうばれて居ると思いますが、若干弾け過ぎなところが私の欠点です。捌の立場を再自覚して、ここは冷静に、色立ての会釈の句として、「白無垢と黒紋付の笑み並び」を取らせていただきます。

2022.04.28「桜餅」文韻

さて、芭蕉の門人であった、各務支考が考えた「七名八体」、すなわち付心=付の手法とともに、付所=具体的な句作り・付の狙い所を分類・整理したものによると、色彩の取り合わせによって付ける「色立」という付心があり、前の句に詠まれた人物の容姿・持ち物・衣類などをあしらって付けた句を「会釈の句」というのだそうです。

ナオ
五  風受けて背をかがやかす瑠璃鶲    三夏 場五
六   真っ赤な薔薇をベルボーイ抱き   初夏 自他
七  白無垢と黒紋付の笑み並び      雑  自他

ここで連衆のRさんから、一言。

「白無垢と黒紋付」を選ばれたのですが、「瑠璃」「真赤」「白、黒」と色が3句続いてしまいました。少し離れていても他の句も面白いと思いますがいかがでしょうか。

2022.04.29「桜餅」文韻

確かに色とりどりに過ぎる感じになってしまっていたことに私も気づきました。三句の渡りへのこのご指摘について捌きのTさんからのお返事。

そうですね、瑠璃も色でした。三句続きは許されませんね。有難うございます。もうしわけありません。
  蜜蝋であふるる愛を閉ぢ込める  自
に替えさせてください。

2022.04.29「桜餅」文韻

かくして、名残の表七句目が治定されました。「封蝋」を「蜜蝋」とさりげなく一直いただいたことで「恋」のムードが増したのだと感じました。ありがとうございました。

ナオ
五  風受けて背をかがやかす瑠璃鶲    三夏 場五
六   真っ赤な薔薇をベルボーイ抱き   初夏 自他
七  蜜蝋であふるる愛を閉ぢ込める    雑  自


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