見出し画像

歌仙「雁帰る」 脇句 R4.4.3

連句における脇句(第二句目)のルール。
・発句と同季、同場、発句の表現している範疇を出ず、発句にうち添い、敷衍(やさしく言いかえしたり詳しく述べたり)し、引き立てるように。
発句の挨拶に返す意味で、発句によりそい、その言い残した余意・余情を付けるのが本意。

この日治定されたMさんの発句

雁帰る学生寮の世界地図    仲春 場

を読み返す。秋、北方より渡来し、春、北方へ帰る雁。「帰雁」と同季である仲春の季語を十七季・季語辞典を捲りながら物色していると、「万愚節」=エイプリルフールという文字が飛び込んできました。誰もがみんな馬鹿になる春の行事。罪のない嘘をけろりと言って笑いあう、そんな情景にはすっかり遠のいていた最近の生活、、、と考えながらふと浮かんだ脇の短句と、出句した後にT先生から頂戴したコメントはこちら。

万愚節の日締めるネクタイ   仲春 自

学生寮ににぴったり。寮から巣立った彼らが就職。気恥ずかしくも紺の背広にネクタイ締めて入社式に、という感じでしょうか。社会人としてのスタート。自嘲的ですが、緊張感は有ります。

ACC「連句入門」令和4年4月3日

あれ、自分がイメージした、表現してみたかったようなことがT先生に伝わったような気がします。私が知ってる学生寮は友朋寮とか明善寮とか恵迪寮とか吉田寮。縁あって足踏み入れたことがある部屋では世界地図が貼ってあったかどうか忘れたけれど、自治寮の主も個性豊かな寮生も、社会に巣立ったり、世間常識に取り込まれたり、反対に取り込まれないよう戦うために鏡を見ながらネクタイを締める日が来る春。その時、学生寮での生活や自分をどう感じるだろうか、と考えながらつくってみた句でした。皆が馬鹿言う4月に自分も馬鹿だと嘆くのか、万愚に立ち向かわんと喝を入れるのか…。
これは15句の付句の中での衆議判では治定された句の次に良い点で3点入りました。

一方で、もう一つ自分が出句した「学生寮」のある場のイメージから詠んでみた句。

玄関脇の喇叭水仙   仲春 場

たまたまここに喇叭水仙が咲いていただけで、雁帰るや世界地図の余情には関係ないようですね。なぜ喇叭水仙なのですか。喇叭が旅のファンファーレを吹いていたら楽しいかも。

ACC「連句入門」令和4年4月3日

学生寮に響く大きな音(トランペットみたいな楽器の音もしそう)・わいわいとマージャンでもしてそうな賑やかさ・いっぱいある靴・寮生というプライドと自己顕示・自己陶酔…みたいなことを表現してみた句のつもりでしたが0点でした。残念ですがしかたなし。

さて、脇句として治定されたのはHさんが詠まれた句。そしてT先生の鑑賞コメント。

インクの壺にたんぽぽの絮   三春 場

学生寮のその場の付けです。今時インク壺は珍しいが、ペン画などには必需。雁は遠くへ、手元にはたんぽぽの絮がとんできた。意外とデリケートで、創作の心も何となく…。

ACC「連句入門」令和4年4月3日

そして、第3句の勉強は次回の講義で、とお開きに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?