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歌仙「雁帰る」 第三句 R4.4.17

発句  雁帰る学生寮の世界地図     M  仲春 場
 脇   インクの壺に蒲公英の絮    H  三春 場

第三句目をどんな風に詠めばよいのかを復習。
・初折の表の六句までは序の段として「穏やか」に詠みます。
・発句が春・秋の句は、第三まで春を詠む決まりなので、季節は「三春か晩春」の句にします。
・前句を受けながらも発句・脇の境地から大きく転じ、長高く(格調高く、風格があって、調子が整っている)姿の良い句を詠む、ちょっと気合がいります。留め方を「に・て・にて・らん・もなし」などで留めるのが普通だそうです。
・場(人情のない景色や客体化された世相など)を詠んだ句は二句までなので、人情あり(自・他・自他半)の句に。
・発句が大山体(中七・下五を作り、上に別の語を入れる)なので、小山体(上五・中七を作って下に別の語を入れる)か、杉形(上五・下五の中に別の語を入れる)の形にする。

勉強することはいっぱいありますが、実作の場では、新人は考えすぎずにつくった句を出してみてね、と励まされて出句します。

さて、私がこの日出した第三句。

物干場春の匂ひを嗅ぎわけて   三春 自

前の句で詠まれた「蒲公英の絮」が飛んできたのは、春風が吹いたからだろうなあと見立てし、その春風にまぎれる新緑の匂いみたいなものを感じたよ、というような趣向の句がつくれるかな、と思って、ふとドラマの場面で見る病院の屋上(白いシーツが干されている場所)は風が吹いて新緑の匂いとかが届きそうな気がするかもなあ、、、とつくった句でした。

教室では、短冊に句だけを書いて、名前は書かずにT先生に提出します。
T先生は、短冊が出された順にホワイトボードに句を書き出して全体に共有してくださり、ひととおり句が出終わると、「それじゃあ」と一句一句を鑑賞しながら、そして座の皆さんに問いかけながら一直していきます。

私の句を一直していただく番になりました。どきどきします。

物干場春の匂ひを嗅ぎわけて

T先生「ん~、物干場ってねえ、どこかしらねえ。魚の干物かしらね、いや若布がいいね、春だもの。あと<嗅ぐ>だと品がないわね、どうしましょ…」と連衆のみなさんに問いかけしつつ、ホワイトボードの句に下記のように一直くださいました。

物干場春の匂ひを嗅ぎわけて  三春 自
若布干す潮の匂ひを纏ひゐて  三春 自

T先生がなおす間、作者のわたしはなんの発言もしていませんが、私の内心を言葉にすれば「ありがとうございます!わたしの頭ではドラマに出てくる病院の屋上のイメージだったのに春の陽光さする浜辺の穏やかさが感じられるとても素敵な句になりました!そういえば、表六句は穏やかに詠まなければならないから、殺伐なことや病態は嫌われるんだった、すみません。」

そんなセルフトーキングは誰にも届いていないまま、
今日は15句出たので、一人3回自分が良いなと思う句に挙手してくださいね、とT先生が促し投票が始まってみると、この句が第三に選ばれました。

発句  雁帰る学生寮の世界地図     仲春 場
 脇   インクの壺に蒲公英の絮    三春 場
第三  若布干す潮の匂ひを纏ひゐて   三春 自

「はい、では、第三の句を出してくれた人は誰ですか?」とT先生。
おずおずと私は挙手して「元の句は跡形もありませんが、私です…」ともじもじと答えると、R先生が「一文字でも残っていればあなたの句」と言ってくださり、第三に私の句が治定されたこと、連衆のみなさんは拍手で受け入れてくださいました。

四句目は、雑(無季)の短句で来週までの宿題です。メールでT先生に提出してくださいね、と今日の教室は終了しました。

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