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歌仙 桜餅の巻 膝送 ナオ三 R4.4.22

お誘いいただき、文韻でも歌仙を巻く機会を頂戴しています。
大先輩方にまぎれて足引っ張りにならないかどうかと心配しつつ、
皆様懐深く優しくご指導いただけるので、身を任せての「四吟」。
「膝送り」という形式です。

捌きのTさんより

桜餅四条高倉東入る      晩春 場

という句が発句として出されました。
脇句は私の番。
四季折々、京都は美しいと感じますが、春の桜の季節もほんとうに素敵です。コロナで関西方面に行く機会がすっかり減ってしまいとても残念。私と連句の出会いの街でもある京都。また行きたいな…。私は京都の何を知っているかな、と思い出をたどりながら、ふと本棚にあった鷲田清一氏の「京都の平熱」の文庫本をパラリと捲ってみたりしてふと閃いた句も付け加えて、下記の四句を候補句としてメールでお送りしました。

春闌の二百六番  晩春 場
都をどりの衣装絢爛  晩春 場
犬矢来前そろり猫の子 晩春 場
春の袷でゆく百貨店  三春 自他

捌きのTさんから翌日お返事をいただきました。

「206番をいただきます。脇は寄り添うように、と教えられたのを真に受けて、春めく気分と場所柄のピッタリ付いたこの句をいただきます。206番、確かに京都市内を縦横に走り、よく見かけた気がします。」

2022.03.30   「桜餅」文韻

Tさんは、京都の大学に通学されてた時使っていた205番が渋滞して閉口した思い出をお話しくださいました。発句はちょっと個性的な句を詠みましたよ、とおっしゃってたのに乗っかって、個性的な句をチャレンジで出してみたのを受け入れていただいた、自分としては心に残る句となりました。
闌をわかりやすく「たけなは」に一直いただき、歌仙「桜餅」の巻がはじまりました。

発句  桜餅四条高倉東入る      晩春 場
脇    春たけなはの二百六番    三春 場

先輩方のパス回しは早く、メールで毎日新しい句がやりとりされてゆき、
表六句から裏の十二句、そしてあっという間に名残の表三句目の私の番になりました。

ナオ
折立  遅い日の外科病棟の見舞客   三春 他
     のぞく首すじ少し細目に   自他

その前の二句について、捌きのTさんからいただいたメッセージ。

見舞客は画家で「デッサン中の画家とモデル」と見て、外科病棟から離れていると解釈しました。「細い首すじ」が恋の呼び出しっぽくも思えますが、裏の恋句は前半に出ましたので名残の恋は後半の夏の句付近にしたいですね

2022.04.23   「桜餅」文韻

前の句の見立てと、裏三句目で詠む内容のヒントをいただいて、句づくり。芭蕉先生の「俳諧は三十六歩の歩みなり、一歩もしりぞくこと無し」という言葉は、歌仙三十六句を足 取りにたとえ、後へ戻ることなく前と同じ情景を避けて、新しい局面を展くように前進しなさいと教えているそう。細い首筋、うなじもちらり……と考えながら浮かんだ句を書き留めて、捌きのTさんに四句お送りしてみました。

群鶏図重なる羽を錯覚し  自
隣席のせせりの串に俺もそれ  自
張り切りて着付教室通ふ訳   自他
刺し子針動かすごとに時忘れ  自

Tさんからのお返事。

刺し子をいただきます。「時忘れ」が前句のデッサンに夢中の景に付いていると思います。それにしても、「せせり」よくご存知ですね。昔、与野に住んでいた時に大宮によく焼鳥を食べに行きました。若松屋?だったかな。カウンターで食べると店員が客の進み具合で勝手に焼鳥を皿に出してきました。注文も聞かずにです。味に自信があるからでしょう。知らないうちに「せせり」も食べていたかもしれません。

2022.04.23   「桜餅」文韻

Tさんからのお返事を見た私。
そうだなあ、そうだよなあ。群鶏図も、せせりも、着付け教室も、首とうなじから進んでないものなあ。。。。治定された刺し子刺繍の句は、巻き肩で首を曲げてどんどん針仕事に「没頭」していく女性の姿を自分は詠んだつもりでしたが、<「時忘れ」が前句の「デッサンに夢中」についている>というように鑑賞いただいたということは、そこは伝わったんだ!と新鮮な気持ちになりました。

そしてTさんがこの句に付けてくださったのは、

とんこつが売り知覧食堂    場又は他

という句です。

『刺し子から特攻の母、としたいところですがウ10句目に「戰」があるので、現地でそれを受け継いでいる「知覧食堂」にとどめました。』というメール文章を添えていたたことで、私が詠んだ刺し子は、青森の「こぎん刺し」をイメージしていたけれども、Tさんがイメージされたのは、武運長久を祈る「千人針」。出撃する特攻の兵が飛び立った知覧の地でとんこつスープの味を受け継ぐ食堂が詠われました。

ナオ
折立  遅い日の外科病棟の見舞客    三春 他
二     のぞく首すじ少し細目に   自他
三   刺し子針動かすごとに時忘れ   自
四     とんこつが売り知覧食堂   場又は他


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