コンテンツ地獄用メモ

前置き

こんにちは、左藤(森脇)です。以下のイベントに出演しました。今年の(私的)コンテンツベスト3について話したのですが、それにあたって作ったメモに多少即興で喋ったことを足して公開します。けっこう緊張したのでやや早口で喋ってしまいましたが、瀬下さん・ジョージさんのおかげで楽しく年末を過ごせそうです。ありがとうございました。

若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(2020.10.10)

・これを読んでいない左翼は左翼ではない

・ネオリベ資本主義に疲れたオードリー若林がアメリカとの国交が回復する直前のキューバに行く(2016年)エッセイ。

・2017年にでた本に書き下ろしを加えたもの。

・旅行先で常に「キューバと日本」を対比する。意外に人見知りなキューバ人との出会いなど。革命広場に行き、カストロを夢想し、ライブと重ね合わせる若林。チェゲバラの邸宅に行き、そこにはチェゲバラの生活感がないという。チェゲバラは常に戦闘服を着ている。

・家庭教師から「世界史の現代史の項目を読め」と言われ、素直に読み、新自由主義について考える若林 (自分の生きづらさを理解するために歴史的な教養にアクセスし、その原因を資本主義システムに見出していく。「先生、知ることは動揺を鎮めるね!」「若林さん、学ぶことの意味はほとんどそれです」35頁)。思想を学んでいくことのすごく初歩的な経験があると思う。

・しかし、新自由主義を批判する自分に対しても疑義を持つ(資本主義に疑問を持つ自分を批判する「メタな」自分が登場し、地の文でそのメタな自分と対話する)。これは資本主義が超自我として潜在しているということでもある。漫才における「ツッコミ」の思想的役割をもう一度考えるべき。

・キューバ最終日、急に謎の会話文が登場する。「メタな自分」との会話かと思ったらそうではなく、同年に死んだ父親との心の中の会話だった。

・「血が通った関係と没頭」の必要。若林の限界もある。共同体を考察するために、家族というものを再考しなければならない。334頁。

シーシャ屋

・この二ヶ月くらい通っている。

・改めて人と出会い繋がれる場所。共同体を作る、居心地のいい場所を作ることの必要性。ベタだけど。人の話を聞くこと・話すことの純粋な面白さ。

・2時間〜3時間くらいは普通にいる。何もせずにいてもいいし、勉強してもいいし、ボードゲームをしてもいい。こういうフリーさ自体が貴重だな。

・おれ、哲学や思想以外の何を喋るんだ? という挫折の経験。思想マシーンから人間へ。

・コロナということもあるし、博士課程1年目ということもあるし、25ということもある。

ジャック・デリダ講義録『ハイデガー 存在の問いと歴史』亀井大輔・加藤恵介・長坂真澄訳(2020.4.20)

・めちゃくちゃ「ポップ」な「コンテンツ」

・2013年に刊行された講義録の翻訳。デリダが「脱構築」という言葉を初めて使った。ハイデガーの「存在論的解体」の言い換え

・デリダの字が汚すぎて読めない。「エクリチュールは無限の読解可能性に開かれているとデリダは言うが、私には開かれていなかった」(亀井大輔・合評会にて)

・フランス語の改訂版としての英語版をさらに踏まえた上での日本語版。もう日本語でいいのでは。という。

・「隠喩」や「解読」など、60年代のデリダの元ネタまるわかり。前半ヘーゲルへの言及が多い。歴史を考えるための歴史性。「歴史」を思考するということの準備。ポストトゥルースとか言っていていいんか? ポストモダン批判?

(追加で喋った:月ノ美兎・黒沢清『スパイの妻』)

・「推し」の感覚を完全に理解した。ゼロ年代以来キャラの記号性に議論の重点があったと思うけど、「結局本人のスキル」ということになっているのではないか?(それでいいのか?)ニコ生文化の勝利?(月ノ美兎)

・黒沢清 × NHK、「見る」ことの重要性(黒沢清『スパイの妻』)

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