クイズにしづらい小噺#2 「カウボーイハット」

注意事項
このシリーズは「筆者の作問力不足による理由で」クイズの問題にしづらい、成文化しづらいと感じたテーマを扱っています。すでに同様の題材を用いたクイズ問題が出現される/された可能性があります。ご了承ください。
また、参考文献として日本語・英語のサイトを使用していますが、内容や事実関係に誤り・不正確な部分が含まれる可能性があります。

スポーツの世界ではたびたび面白いパフォーマンスが見られることがある。個人のパフォーマンスのこともあれば、チーム全体のパフォーマンスのこともある。ニュージーランドのラグビーチーム・オールブラックスの「ハカ」などが特に有名であろう。
そうしたパフォーマンスの一つで2022年からテレビで目にする機会が増えたのが、MLB、ロサンゼルス・エンゼルスの「カウボーイハット」パフォーマンスだ。ホームランを打った選手に対してチームメイトがカウボーイハットを被せるのが恒例となっている。これが定着すればとても良いクイズの問題になりそうだが、現状ではうまく成分化できそうにない。

このカウボーイハットはジーン・オートリーという人物に由来する。歌手、俳優として活躍した彼はロサンゼルスの新規球団の筆頭オーナーとなり、その死去まで30年以上球団を支え続けた。彼のテレビスター時代のニックネームは、「歌うカウボーイ」。2002年、エンゼルス悲願のワールドシリーズ初制覇の年。プレーオフから、主砲のティム・サーモンはオートリーのトレードマークだったカウボーイハットを被っていた。

その様子をベンチで見ていたのが、当時ベンチコーチをつとめていたジョー・マドンである。当時、カブスのコンディショニングコーチだったティム・バスもおそらくそれを見ていただろう。マドンとバスの運命は13年後、カブスの監督にマドンが就任したことで交錯する。カブスの監督を4年つとめたマドンがエンゼルスに移ると、バスもこれに続いてエンゼルスに。日本の監督で言えば新庄剛志氏がこれに当たるのだろうか、エンターティナーとして知られた彼らは面白いパフォーマンスを打ち出す。その一つが、カウボーイハットを用いたパフォーマンスだった。ただし、マドンとバスはその由来をいちいち選手に説明するほど野暮ではない。がゆえに残念ながら選手の中には由来を知らなかったものもいる。しかし、カウボーイハットに刻まれていくシールはそのハットがチームにとって「特別なもの」になっていく過程を示している。

翌年2023年、6年ぶりに開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。決勝戦は奇しくも日本とアメリカ。エンゼルスからは日本チームにエース・大谷。アメリカチームに主砲・トラウト。シーズン開幕直前の連戦で故障や調子を崩す選手が多かったことからWBCに否定的な意見も多く、参加を辞退することも多いアメリカだったが今回はトラウトを始め、メジャーリーグの超一流選手によるドリームチームとなった。その説得に当たったのがトラウトであった。
決勝の最後は大谷対トラウト。本来であれば実現しない奇跡の対決。アメリカでプレーしているため登板の可否を検討していた大谷そして日本チームにエンゼルスが許可を出したのだ。過去最高の盛り上がりと言っても過言ではない激戦の末に幕を閉じたWBCにもやはり、マドンとバスの精神が受け継がれていたのである。

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