アタック25Next感想 2023年5月21日「高校生大会」

今回は高校生4名による勝負であった。結果は圧倒的であったが、正解数から見ても谷原氏の言う通り、クイズに関しては高いレベルで伯仲した勝負であったと言えよう。流れやパネル運にも左右される面があり、多く答えたものが必ず勝利するわけではない絶妙なゲームバランスが前回に引き続き今回も炸裂した。
今回の問題構成も時事問題とベタ問題が基本の構成だが、4. ヨルシカ、12. NMB48、21. 新しい学校のリーダーズ、28. 五条悟などの若い世代にも馴染みの深い出題が多い一方で、7. バナナ輸入上位4ヶ国や14. フィガロ(『セビリアの理髪師』の理髪師の名前)など高校生に問うには難易度が高い問題も見られた。ビジュアルクイズの棟方志功もやや難易度が高く、クイズ研究会所属の高校生に対する番組側の想定レベルの高さがうかがえる。

問題について注目すべきは3つ。まずは6. 小満である。
実はアタック25において二十四節気は高い確率で出題される。一般常識として聞くにはやや難易度が高いが、日付問題に準じたクイズとして出題すると対策がしやすく、正解が出る確率が高いのである。二十四節気はこちらの記事でぜひ対策していただきたい。

また、1. 板垣退助における赤の爆押しも評価したい。実はビジュアルクイズはその週の記念日に関連した出題をされることも多いため、ヤマを張っておくことも可能であり、さらに誤答ペナルティが無いのも大きい。ボタンを押す緊張をほぐす目的でも攻めるべきであるし、今回のように決まるとテレビ映えもよく、他対戦者にプレッシャーを与えることができる。もちろん、テレビ映えが悪くなるような過度な連打、連答は慎むべきである(ここは単純なクイズというよりもエンターテイメントである、というテレビに忖度した発言にはなる)。

3つめは8. 長篠の戦いである。以下に全文を記載する。
「天正3年5月21日、織田信長・徳川家康連合軍と武田/勝頼軍との間で行われた戦いを何の戦いと言うでしょう。」
もし2023年5月14日回の収録を見ていたならばこのスラッシュはできない。先週の問題文はこうである。
「戦国時代の永禄3年5月 、織田信長と今川義元との/桶狭間の戦いが起こりましたが現在その古戦場公園があるのは何県でしょう。」
スラッシュ前までを見比べてもらえば一目瞭然だがこの2つは前半の構成が全く同じにも関わらず、答えが全く異なる。いわゆる「アタック構文」として特徴的な最後にいかようにも変化できる問題文である。「正解への一意性」という観点において問題文の構成に疑義を呈する意見もネットにおいて散見されるが、それについては触れない。一つ言えるのは、今回のこのスラッシュは通常のクイズ大会では確定ポイント(あるいは日付で押せるので遅すぎる)かもしれないが、アタック25においては危険なダイブ押しと評価せざるをえないと言う事である(メタ読みをしてしまえば明確にクイズ研究会所属を押している今収録回では比較的ストレートな出題がなされると考えても良いかもしれない)。
もちろん、出場者もそこは十分理解しており、後半には完璧なタイミングでのスラッシュも続出する。例えば、
22.「日本国内のスターバックスコーヒーでコーヒーを注文した場合、サイズは全部で4/種類あります。最も小さいサイズはショートですが、最も大きいサイズは数字の20を意味するイタリア語で何というでしょう。」
は4の発声を見越したほぼ完璧なスラッシュが見られた。この問題で分岐する可能性は「4種類」か「Venti®」(か、「Short」「Tall」「Grande」)であり、見事なタイミングである。
また、
25. 「今年生誕300年、グラスゴー大学の総長を務めた人物で、経済学の古典/『国富論』の著者として知られるイギリスの経済学者は誰でしょう。」
も完璧なスラッシュであった。本編を見逃し配信などで確認していただくと良いのだが、沢木氏は「経済学の古典」まで読んだところで一旦止まり軽く息を吸っている。この吸いきった瞬間を狙ってボタンを押したことで次の『国富論』が一気に読み切られる。ここまで聞けば正解は簡単である。アタックチャンス以降流れに乗った緑によるブレスを支配した完璧な読ませ押しが炸裂している。

今回のターニングポイントについていくつか考察を加えたい。

今回ターニングポイントとなるのは13. 白19の局面

まずは13.における白19である。
アタックチャンスの前のヒソヒソトークでも話していた白の失着とはおそらくこれの事と思われる。

13問目を白が正解。選択肢はこの4つ。19を選択した白。

19を選択することで13、14が白に変わるがこれは極めて危険な選択である。というのも白は以降2手は連答しても角に入れないが、緑は1答目から1、25の角に入ることができる上、青(1休だが1→25)、赤(12→25)も2連答で角に入ることができてしまう。特に青、緑は角の連鎖という白にはデメリットしかない選択肢である。白17(青)、白20(赤、緑)も共にハイリスクな選択肢だ。角への被害を食い止めるべく取るべき最適解は18一択である。
以降の手番はこのように進む。
1問のスルーをはさみ、青○1、青○。25には入れないものの、青19としても25に他の色も入ることができない。青23も中心部にラインを作りつつ、白:17or19で自分しか入れない角が誕生、赤:12以外反撃不能、緑:角には入れないとなりこちらもおいしい。2パターン検証してみる。
①青19
青12、青18。なんと21、25は誰も入れない状況が続く。次の赤は11。青は左右同型なので10で安牌継続。白はどう頑張っても角に繋げられないため、6でお茶を濁す。赤24が唯一青に角を取らせない戦略。またしても緑が労なく25に飛び込む。アタックチャンスで緑23、アタックチャンス1、緑1、青の誤答を挟んで緑16で逆転。赤22、赤20で最後の1枚を緑12。下図の通り、緑が逆転優勝。

白の全滅は変わらず。緑が激戦を制し、辛勝。

②青23
青10、青20が手堅い。青6と行きたくもなるが、上に固めるとアタックチャンスでの反撃が怖い。上辺は安定なので右下へ地を伸ばす方が良い。赤は12しか安牌がない。次の青6で青一色に。白○だが、選択肢が厳しい。どこを選んでも青には角への道筋に見えてしまう。白19が最も安定した手筋。赤24がより良い手。するとアタックチャンスの前の緑25で流れが変わる。緑22でアタックチャンス5、緑5、青の誤答を挟んで緑17で逆転。赤はトップ賞の目がないため、生存戦略を選択、赤21、赤16、緑11で下図の通り、緑が優勝となる。

こちらもまさかの緑の逆転勝利。なお白。

驚くべきことに結果が変化する。ただし、どちらの場合も白は優勝争いに絡むことができない。結果的に白の彼の選択は彼自身の運命は変えない、という結果になった。

19.における赤24も判断が難しい。左右同型の局面でどう動くか、という話になるが実はこの時点で17に入ると緑が逆転優勝する手順が存在する(ただし、青が21の角に入ることができるパーフェクト進行の手順をわざわざ赤が取るとも思えずこれは机上の空論であろう)。21.における白6、22. における赤22も乱戦時ならば疑問が残る采配だが、最終結果には影響しないため考察は割愛する。
緑はアタックチャンスの狙い目を事前のトークで話していた8から22に変えたわけだがこれは2位狙いのための確実な橋頭堡づくりであろう。元々の8を開けても逆転勝利はできない。ならば消されるおそれのない21-25ラインの確保に動くのは理性的な判断である。

結果的には後半の判断に悩む局面の19、21、22はいずれも勝敗に実質的に影響しない結果となった。そもそも角3つを押さえられる展開になる前に食い止める必要がある、ということだ。角2つのみならば後半の緑の猛チャージで逆転の目があった。

今回は最多正解の赤には全く優勝の目がなく、青と緑は結果次第で逆転していたという回であった。やはり、2つ以上の角を押さえる(少なくともアタックチャンス以前に角を1つ以上押さえる)ことの重要性が示された。

最後に、私が影響を受け、この記事シリーズを書くきっかけとなった徳江風波氏による今回の考察記事リンクを添付する。私よりも深い考察や異なる視点でのコメントも多く、私も大いに参考にしているところである。

補遺:19問目の状態から緑が逆転する方法。赤17、青21、白23、赤18、赤×、緑24、緑22(AC4)、緑4、あとはどのように取っても緑が逆転勝利する。

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