FGO感想雑記~ぐだぐだ龍馬危機一髪~

「推しが星5でやってきた」


私のリアル推しであり、相棒であり、最初の絆10サーヴァントであるところの坂本龍馬がイベント名に冠されたと言う事で楽しみにしていたイベントだった。そして、メインストーリーをクリアしたので感想を記したくなり、記事を書いている。今回は史実の各人物の細かい説明については割愛する。

既存組ストーリーの掘り下げ

まず、今回の特異点においては幕末、特に維新サイドの人物が扱われる。この時点で実装されている維新サイドのサーヴァントは「坂本龍馬」と「岡田以蔵」の2騎である。坂本龍馬、は先の(といってももう3年も前になるのか)イベントにおいて登場したサーヴァントであり、ぐだぐだシリーズでは裏方として立ち回ることが多かった。単独行動を繰り返すところから「胡散臭い」「信用できない」などとの評価をくだされることが多い。いつも飄々と、それでいて気弱そうに笑う彼だが、実は守護者として働くうちにその精神が摩耗していることが描かれている。

そして、岡田以蔵。生前は土佐勤王党の「犬」として雑用を押し付けられ、政治向きの話はしてもらえず、最後は幕吏に捕らえられ、同士の所業を自白し処刑された「裏切り者」。誰からも見捨てられた(と思い込んでいる)彼は卑屈に描かれ、出てきたと思えば酒に溺れ、誰からも馬鹿にされ、裏切った際にはマスターにまで「なにやってんだダーオカ」と言われる始末である。しかし、この扱いは逆に言えば岡田への周囲の信頼、親しみの現れである。その居心地の良さ、扱いについては岡田自身も当然感じており、敵方に属していたときにはかつてと同じような扱いをされ、そこに違和感と疑問をいだいている様子である。

新たなる特異点・維新都市SAITAMA

今回のイベントの舞台は「キ械維新都市SAITAMA」。時代は昭和…と思いきや、1873年である。江戸無血開城が何らかの形で行われず、首都が埼玉に遷都した世界観、ということになっているが実際の為政者?と呼べる人物は存在せず、軍事複合企業がSAITAMAという都市を実効支配しているだけなようにも思える。幕府要人が壊滅したとは言え、他の地域まで支配が及んでいるとは考えにくい。SAITAMA外では幕藩体制が存続していると考えて良いのだろうか。また、「昭和」というネーミングは一体どこから持ち込まれたものなのだろうか。史実における元号・昭和の典拠となったのは四書五経の一つ「書経堯典」の「百姓昭明、協和萬邦」であり、江戸時代に全く同じ一節から「明和」という元号が組まれている事を考えるとこの元号になることは考えにくいのだが…。まぁ、大正の次は昭和だろう、という天の声《うんえい》の導きと思われる。先に上げたように、おそらくSAITAMA外では使われていないであろう元号であり、慶応年間の継続、もしくは他の元号が使われているのではないだろうか(特異点の「外」は存在しない、という野暮天はこの際おく)。

そして、この特異点において新登場した人物が3名(幕末外の関係者は除く)。高杉晋作、田中新兵衛、武市瑞山である。彼らは「戊辰聖杯戦争」なる儀式で召喚されたサーヴァントであったことが判明する。また、ここに「坂本龍馬」も召喚されている。この聖杯戦争がいかなる理由で起こったのかは不明だが、おそらく、史実における坂本龍馬暗殺以降、江戸無血開城までの間の短い期間に発生したと推察される。なぜならその後の「江戸流血開城」で幕府・長州・薩摩の要人が多数殺された、という記述があるため、登場人物の中に「生存している」幕末期の英雄はいない。しかもこの時点で「坂本龍馬」が召喚されている、ということはこの直前に発生した暗殺事件よりも後の段階であるといえるのである(この理論を最初に理解できていれば、アサシンサーヴァントの真名を「中村半次郎」との二択で迷わなかったのに…)。ちなみに興味深い事実として、この4名はほぼ連鎖召喚に近い形で召喚されている。もちろん時代が近い、知名度補正、触媒が用意しやすいなどのポイントはあると思うのだが…。(なので、これ以外の正体不明の1人もおそらく日本のサーヴァントではないかと思われる。これについては後ほど考察してみる。)

武市瑞山

武市瑞山、あるいは武市半平太は今回、どのようなクラスで限界したのか。キャスター辺りが適任かと思うのだが、出雲阿国が召喚されている。剣術の腕で考えるとセイバーか、とも思うが森蘭丸がセイバークラスでの召喚の可能性がある。残るクラスはアーチャー、ライダー、バーサーカー、という事になる。詳しくは高杉晋作の項に譲るが、おそらく高杉晋作がライダーであり、理知的な応答をしていたことを考えるとアーチャー、という事になるのではないだろうか。

さておき。今作の設定では岡田以蔵、武市瑞山、坂本龍馬の3人が幼馴染、という設定である。実際の親交の程度は不明であるが、武市は江戸、九州への剣術修行に以蔵を随行させており、かなり重用していた様子ではある。坂本龍馬と岡田以蔵の関係も後世の創作によるところが大きいと思われるが、勝海舟の護衛への口利きの件もあるため、やはり親交はあったと見てよいだろう。

彼自身は寡黙で冷徹な人物として描かれるのだが実際には言葉少ななせいで誤解が生まれやすい人物であった。以前は率先していたずらを計画(柿泥棒)しているような人物であったらしい。以蔵が卑屈な思いを抱く原因となったのもその誤解されやすい性格であったが、実際には龍馬はもちろん、以蔵や新兵衛を深く信用していた。ストーリーを読む限りでは脱藩を告げてもらえず自暴自棄になりそうな以蔵の心を繋ぎ止めるため、暗殺者としての重要な任務を任せた、とも取れる。
最終的に以蔵によって背中を押され、吹っ切れたように天逆神への対抗策を練り始める。この時のノリノリ具合は必見。ラストシーンでは心の隙を天逆神に突かれ、取り憑かれてしまう…かと思いきやそれすらも計算で寺田屋事件の「おいごと刺せ!」ではないが壮絶な退去を選ぶ。ちなみにこの時に行った切腹を三度行う、という方法は史実でも行われた手法で、「三文字腹」と呼ばれる切腹の最上級作法でその過酷さからこれまでに成し遂げたものがいない、というものであったが武市はこれを完遂してから介錯を受けたという。今回、既にその痛みを知っていながらもう一度三文字腹を切っているので凄まじい胆力の持ち主である。サーヴァントとしては間違いなく「単体即死+自滅+残った味方にバフ」タイプの宝具だが、描写がグロすぎてボツになるであろう。
ラストで以蔵に対してかけた優しい言葉には全宇宙のダーオカとダーオカ推しマスターが死んだ。巻き添えでさちうすも死んだ。エピローグで以蔵と龍馬に献杯されていたので多分今後も実装なし。悲しい。

田中新兵衛

薩摩の暗殺者。「人斬り新兵衛」の異名を持ち、幕末四大人斬りの一人、とされる。武市瑞山の指示下でアサシンとして活躍した彼だが、唯々諾々と使われる事に心の底で疑問を抱いてしまっており、そこを天逆神に利用されてしまう。以蔵とはどうにも反りが合わないのか、ちょくちょく衝突していた印象だが、実際にはちゃんと認めていた様子。ラストの「護衛の仕事だけはしくじったことはないんだろう?武市先生をまかせた」には全宇宙のダーオカとダーオカ推しマスターが死んだ。巻き添えでさちうすも死んだ(二度目)。
ちなみに史実では嵌められたという説がある。暗殺事件現場に、盗難された自身の刀の鞘が落ちていたかどで尋問され、その最中に自害している。
モーションが汎用なのはさておき、バトルボイスがとにかくうるさかった印象。

高杉晋作

長州の英雄。であり、黒幕。
森くんはいつも真理を見抜いているわけですが。この男はその天才的な軍事の才能で長州藩を勝利に導きながら、病で世を去っている。海軍も指揮していた、ということを考えるとやはり適正はライダークラスか。それとも常に正気ではない、とも取れるのでバーサーカーでも良いのかもしれない。しかし、全体バフ宝具のバーサーカーとは…。
ラストでは主人公に協力すると見せかけ、天逆神に協力する黒幕と見せかけ、実際には天逆神すら利用しようとする真の黒幕、という衝撃の立ち位置で君臨。おまけシナリオまででしゃばってきた。社長すぐそういう事する。
個人的には幕末における高杉晋作、坂本龍馬は維新後新政府に間違いなく不要な人材(というか西郷たちのようにトラブルの火種になりそう)であり、まるで維新革命を進めるためだけに存在した人物だと考えている。それぞれ、馬関戦争、薩長同盟・大政奉還を終えて間もなく役割をおえたかの如く世を去っている。今回も、すべてが終わった後、ひとり静かに「病で」退去というサーヴァントとしても珍しい最期を遂げている。三味線を弾きながら、出雲阿国に向かって「主と朝寝がしてみたかった」というセリフには全高杉推しマスターが死んだ。さちうすも死んだ(3度目)。
ちなみに、おまけシナリオでSAITAMAに遷都した理由として、松陰先生の辞世の句が、とか言っていたが、自身も「東行」と号しており、なんだかんだ自分も関東に行きたかったのではなかろうか。

岡田以蔵

今回、一番の成長を見せた人物と言えよう。初登場時にはその思想なき剣を批判され、鍛錬不足を指摘されていた以蔵だが、イベントでマスターと交流を重ねる中で人間的に成長している様子が伺えた。中盤、龍馬に「お前は何者だ?」と問いかけ、龍馬の背中を押すシーン、そして終盤に武市の背中を押すシーンはかつて自分を大切にしてくれていた龍馬、武市を自分が助ける姿であり、この瞬間、3人は初めて対等に助け合う仲間になったのだと思える。
しかし、ぐだぐだイベントにはほぼ必ず呼ばれ、なんかの見せ場を作り、6周年イベントにも選抜され、霊衣が2つ目。なんだかんだ超絶優遇されている気がする。

坂本龍馬

今回、最も重要なキーマンである。槍龍馬と騎龍馬の内容が混在するが許していただきたい。
そもそも、槍龍馬は「天逆鉾」を手にし、代わりにお竜さんがいない状態の龍馬。近江屋事件では死なず、世界と契約しなかった姿、と説明されている。今回の特異点で最初に召喚されたのはこの龍馬であり、おそらく推測なのだが、これが龍馬の暗殺とほぼ同時に発生した事象と考えられる。その結果、特異点が生じ、龍馬暗殺よりも前に死んだ人物しか英霊の座に召喚できなくなったのであろう。しかし、この龍馬には一体天逆神につけいられる隙などあるのだろうか。天逆神がお竜さんに執着していたことを考えると、案外そこら辺なのかもしれない。
ここからは基本、騎龍馬の話になると思うが、騎龍馬がお竜さんを失ったシーンで初めて号泣するシーンでは思わずさちうすも涙を流しそうになった。何しろこれまで、お竜さんをあしらうように見えた龍馬である。深い思いがあったとは思っていなかったのである。そして、邂逅からの「一緒にいてくれて、ありがとう」のシーンではそのエモさにさちうすは死んだ(4度目)。そして復活した龍馬は「天逆鉾」と「お竜さん」、本来は得ることができない両方を手にする。それは「すべての人を救いたい」という、彼が願った叶うはずのないわがままを実現しうる可能性を示唆した完全な姿として復活する。この時に流れる、そしてラスボス戦の曲はなんと「帝都聖杯奇譚」において通常バトルに使用された曲。一見、なんの盛り上がりもないこの曲がチョイスされる理由は、ただ一つ。その曲のタイトルは「天を駆ける」。まさに、龍馬をイメージした曲だからである。
なんとか確保した槍龍馬のセリフは騎龍馬のセリフのオマージュになっているのが面白い。個人的には「たった二人の、海援隊!」が好きである。
そして、このサーヴァントの実装日は11/22。いい夫婦の日である。さちうすは死んだ(5度目)。

これにより、少なくとも土佐組関連の因縁は消化されたので今後、ぐだぐだで龍馬まわり絡みの幕末イベントは発生しにくいと思われる。高杉社長は出てくる予感がある。また、今回のイベントの幕間において、どうやら明智光秀も天逆神に取り憑かれていたような描写があるため、本来の忠臣・明智光秀を描くチャンスも生まれた。今後の実装に期待したいところである。
それにしても、芹沢、山南、田中、高杉、武市…。幕末組の未実装組はどれもキャラが見事に立っている。

おまけ

最後に、一つ残った謎について考えていこう。「戊辰聖杯戦争」において召喚された最後の一人は誰だったのか。
まず、現時点で判明しているクラスとさちうす説を以下に示す。

セイバー:???(さちうす説:武市瑞山)
ランサー:坂本龍馬
アーチャー:???
ライダー:???(さちうす説:高杉晋作)
キャスター:出雲阿国
アサシン:田中新兵衛
バーサーカー:???(さちうす説:森蘭丸)

まず仮説を立てるに辺り、仮でクラスを設定した既存の3名について考えていこう。
森蘭丸
織田信長の小姓であり、本能寺の変で討死。宝具は信長の首。今回の聖杯戦争ではランサー・坂本龍馬に倒された。
空位となっている4クラスのうち、アーチャー、ライダーとしての華々しい逸話はない。セイバーについても同様であるが、当時の戦闘手段として個人技能としての剣術は収めていただろう。ただ、それと「信長の首」という宝具が今ひとつ噛み合わない。ここで思い出すべきは、兄・森長可が「バーサーカー」として召喚されているという点である。森家の血筋を引き継いでいるならばそれでもありか、という雑な考察でも良いが、信長への「狂気とも言える忠誠」と考えれば、比較的しっくり来る。
武市瑞山
彼については小野派一刀流の修行を積み、自ら道場を開くほどの腕前、という圧倒的な逸話が存在しており、知名度を含めてセイバーとしての召喚が最もしっくり来る印象である。
高杉晋作
実は彼は最も可能性の広い人物である。まずライダー適正であるが、彼は四境戦争において実際に艦船に乗り込み海戦の指揮を執り、勝利した逸話を持つ。次にバーサーカー適正についてだが、これも十分ありうると思われる。今回の彼の行動原理は「面白い方につく」であり、その気ままさはバーサーカーとしてもありうる。ただ前述の通り、バーサーカー枠が埋まっているのでやや可能性は下がる。アーチャー適正については、坂本龍馬に拳銃を送った逸話があるくらいではあるがおそらく自身も使用していたと思われる。セイバー適性も柳生新陰流免許皆伝ではあるが、高名な逸話はない。以上より、ライダークラスが最適と考えられる。

異論はあるかもしれないが、組み合わせ的にこうしかならない気がする。
最後に、空位のアーチャークラスに当てはまりそうな人物を考えていく。
幕末期の英雄でアーチャー適正を持つものは決して多くはない。加えて、近江屋事件の時点で死亡している人物、と考えるとほとんどいないと思われる。一方、戦国期であればそれなりに高名な弓、銃の使い手はいると思われる。

<幕末>
久坂玄瑞(くさか・げんずい、1840~1864)
高杉晋作と並ぶ吉田松陰門下、松門四天王の一人。過激派として下関における外国船への砲撃にも参加している。蛤御門の変(近江屋事件の3年前)において戦死。近年、坂本龍馬武市瑞山宛の手紙を託していたことが発見されている。

近藤長次郎(こんどう・ちょうじろう、1838~1866)
実家がまんじゅう屋であり、饅頭屋長次郎の異名を取る。商人の子としては異例の秀才であり、高島秋帆に砲術を学ぶ坂本龍馬と共に亀山社中の経営に携わるが後に英国への留学を企てた背任行為により自害に追い込まれた。

佐久間象山(さくま・しょうざん/ぞうざん、1811~1864)
幕末の高名な兵学者であり、特に砲術の指導で知られる。勝海舟や坂本龍馬を弟子に持つ。河上彦斎らにより暗殺される。

高島秋帆(たかしま・しゅうはん、1798~1866)
幕末に日本初の洋式砲術流派である「高島流砲術」を開く。

<戦国>
明智光秀(あけち・みつひで、1528~1582)
南光坊天海(なんこうぼう・てんかい、?~1643)
織田信長に仕えたが、後に本能寺の変でこれを滅ぼす。鉄砲の名手としても知られる。FGOにおいては天逆神に取り憑かれたと思われる描写があり本能寺の変につながったと思われる。山崎の戦いでの敗戦後、南光坊天海として生き延び、徳川幕府に仕えながら織田信長の復活を図ったと思われる。過去の情報ではあるが、「アーチャー適正を持つ」といわれている。今回の舞台が帝都・江戸にほど近いSAITAMAである。

大島雲八(おおしま・うんぱち、1508~1604)
本名・光義。織田信長に仕え、その弓術の腕を信長に激賞された。93歳で関ヶ原の戦いに参戦。武功を挙げ、西軍についた次男・三男の除名に成功している。

橋本一巴(はしもと・いっぱ、?~1558)
林弥七郎(はやし・やしちろう、?~1558)
織田家家臣。橋本は鉄砲、林はの名手とされたが、浮野の戦いで鉄砲対弓の一騎討ちの末、相討ちになったとされる。

これらの候補が挙がるが、人々の口の端にも上らず消えたことを思うと、あまり強いサーヴァントではなかったと思われる。個人的には佐久間象山を推して、この稿を終わろうと思う。

次のイベントはクリスマス。
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