ヴィッちゃんバースデー企画小説 「meteor oblige」




深脊界市の片隅のある小さな料理店から魅力的な料理と心地良い歌声が聴こえてくる
ここは瓦利斯飯店である。

「みんな聴いてくれてありがとうなの~」

ヴィッテは観客に対して自分自身のショーを観覧してくれた事にお礼を言い
ステージを後にする。

「ヴィッテお疲れ様~」

ヴィッテがステージ裏に行くとミューが待機して労いの言葉を言う。

「ミューありがとうなの~」

お礼を言いながら近くに畳まれたタオルを手に取り汗を拭うと同時に
時計を見るとラストオーダーも終わり閉店時間も近い。

「ヴィッテも戻って片付けをお手伝いしないと…」

ヴィッテがそう呟くとミューが反応する。

「ショーが終わったばかりでまだお疲れでしょ?さっきホールの様子を見たけど
かなり片付いているみたいだからこのまま休んでいていいわよ」

ミューがそういうとヴィッテが少し申し訳なさそうに少し考えるがすぐに返答をする。

「うん…そういう事ならお言葉に甘えて休んでる…けど少し休憩したらすぐに
お手伝いするから待っててなの!!」

「ふふ…わかったわ、でも無理はしないことよ」

ミューはヴィッテの反応を見て少し笑いながらその場を後にする。
ヴィッテはホールから差し込む光を見ながら耳を澄ませる。

光の先では忙しそうに端から端へ動くララが見える。
動きだけ見れば大変そうなのが良く分かるが顔はとても生き生きしており
聞こえてくる声もとても楽しそうである。
ララは普段はレッスンやお店の仕事に関しては厳しいが誰よりもみんなの事を考えて
動いてくれることを知っている。

「ララってば本当に楽しそうにお仕事してるな…」

次に目に入ったのはニナである
出前帰りなのかスケボーと大きなリュックサックを持っていた。
ニナはみんなのムードメーカーで同時に誰よりも周りの事に敏感であることを
知っている。
その証拠にニナは持っていた荷物を邪魔にならないように使ってないテーブルに置き
ララが持ちきれないお皿やグラスを持ってお客へお礼を言っていた。
ニナはお客からの返答に対して満面な笑みを見せる。

「ニナはみんなの中心にいていつも輝いているな…」

ヴィッテがそう言うようにニナはお店の中心に浸透していた。

ヴィッテは厨房のほうに移動をして中の様子を見て見ると
そこにはミューがお皿や鍋などを洗っている
また片付いてあるテーブルには作り置きの料理が置いてある
恐らくメンバーのための夜食だろう。
ミューはいつもニコニコしてみんなの事を見守ってくれている。
ご飯や身の回りの家事などにも抜け目が無くメンバーに合わせてくれる。

「ミューは誰よりもみんなの事を第一に考えて動いてくれてるのを知ってるよ」

ヴィッテがミューに対しての思いを呟くとカウンター近くにネフィが見える
ネフィは食後のデザートの盛り付けをしている、ただ少し分量が多いような気がする。
ネフィはいつも元気があって少しいたずらが好きだけどその根本にあるのは
楽しむこととおもてなしの心が行動から読み取ることが出来る

「ネフィのいたずらはいつもびっくりするけど、最後は笑顔になれるよね…」

疲れているのと時間も相まって少し感傷的になってしまい
ヴィッテの顔が沈むがすぐにいつもの柔らかな笑顔に戻る。

「うん…みんながいるからヴィッテは楽しく元気で居られるんだから
落ち込んじゃダメだよね!!」

ヴィッテがそう自分に言い聞かせるとあることに気が付く。
それはチノの姿が見えないのだ。
いつもならカウンター近くで売上を確認している姿が見えるが見当たらない。
しかし代わりに近くに先ほど見た夜食用の料理では無い砂糖菓子見える
幸い個数がたくさんあるため一個食べたところでバレないと思いヴィッテは手を伸ばす
しかし、不意に後ろから声を掛けられる。

「ヴィッテってば…つまみ食いかい?」

ヴィッテは突然の出来事に驚くのと同時によろめく
チノはそんなヴィッテを受け止める。

「チノ…見られちゃったなの…あはは…」

「まあ、今日のショーが最高だったから代わりにこれをあげるよ」

受け止めた状態でチノはヴィッテの口に飴玉を入れる。
その仕草にヴィッテは少し恥ずかしくなるが飴玉の甘さが口に中に広がると
すぐにそのことを忘れると同時にヴィッテは姿勢を正す。

「チノ…ありがとうなの!!」

チノはいつもみんなの前に立ってくれる頼りになるリーダーだ
ショーでもお店の運営でも誰よりも一歩先に前進してくれる存在である。

チノはヴィッテからお礼を言われるとその場を後にしてホールへ向かう
ヴィッテはそんなチノの後ろ姿を見て小さく呟く。

「チノ…いつも私達をリードしてくれてありがとう…」

「ヴィッテ?…何か言った?」

チノはヴィッテの呟きが聞こえているのかそんな反応をする。

「いや…なんでも無いよ!!」

ヴィッテはチノに先ほどの呟きを聞かれたことに慌ててしまう。
そんな様子を見てヴィッテの気持ちを察したのか

「そう…それなら私の空耳かな?…それじゃ先に言ってるよ」

ヴィッテにそう言い残しチノはホールへ行った。
再びヴィッテは一人になってしまったが最初に比べて疲れが取れたのか
チノに続いてホールへ向かって行った。

「ヴィッテ、もう休憩は終わったの?」

「ヴィッテ、こっち手伝って~」

ホールに戻って来るなりニナとララから声を掛けられる。
ヴィッテはそんな声掛けに対してすぐに答える。

「わかったなの〜、すぐに行くから待ってて」

ヴィッテは答えながら近くのテーブルのお皿を持ち始めた。

時間はもう閉店時間
お客さんが1人も居なくなったホールで
ヴィッテとニナとララの3人が椅子に座って
ひと休みをしている。

カウンターではチノが今日の売上金を記入している。

カウンターの奥ではネフィがお皿を棚に戻しており
ミューは明日の仕込みのためにお鍋を準備してる
最中のようだ。

「よし、これで今日の業務は終了かな」

チノがそう言いながら先程まで記入していた帳簿を閉じる。

チノの声掛けにニナが反応する。

「お疲れ様〜、今日は後半の方忙しかったね〜」

ニナは言葉の体現をするように普段よりも少し緩い声で今日の感想を言う。
それに対してララも補足として言葉を発する。

「後半ってヴィッテがショーをしてくれた後からじゃないかしら?」

ヴィッテはララから言われた言葉に驚く。

「そうなのかな〜?」

ヴィッテが自信無さげにしてるとそれを上乗せにするように声が掛かる。

「こっちからでも可愛い歌声とお客さんの声援が聞こえてたから多分そうだよ!!」

厨房からネフィとミューが出てきた。

「そうよ、ヴィッテ今日はあなたが1番輝いていたわよ」

ミューはネフィの言葉に補足する形として言葉を掛けると同時にメンバー一同頷く。
ヴィッテはそんな反応に少し照れてしまう。

「ヴィッテ...少し外の空気に当たってくるなの〜」

ヴィッテがそんな空気に耐えれなくなりお店の外に出る。

ヴィッテが外に出ると周りの電灯が消えてる為か
星空が鮮明に見える。

「星空が綺麗なの〜」

ヴィッテは星空を見てつい口に出してしまう。
さらに空に光の筋が流れる。

「あれって流れ星じゃない?」

「流れ星なんて久しぶりに見るわね」

お店からヴィッテを追って全員が外に出て来て
ネフィとミューも先程の流れ星について言及する。
すると、またいくつかの流れ星が流れる。
その様子に全員が再度星空に釘付けになる

ヴィッテは後ろを振り向きメンバー全員を見るとみんなの顔が満足した様子であり。
不意に先程店内で見た様子がフラッシュバックする。

ヴィッテは再び星空の方に目線を移し無意識の内に言葉を紡ぐ。

「みんないつもありがとうなの...
ヴィッテがいつも頑張って行けるのはみんなのおかげだよ...」

その言葉にミューが反応する。

「ヴィッテ...急にどうしたの?」

「そうだよ、いきなりどうしたの」

同じくニナも反応する。

「みんなが星空を見てる顔がとても幸せそうでつい...」

その言葉を聞いてララが返事をする。

「そうね、こんなに綺麗な光景を見たらそういう気持ちになるのは、ちょっとわかる気がする...」

ララは少し切なそうに呟く。

「でも、ヴィッテもいつも頑張ってくれてるし
ヴィッテの存在に私達も救われてのも事実だよ」

チノがヴィッテに対して自分の気持ちを伝える。

その言葉を聞いてヴィッテは少しの間だけ
メンバーに見えないように顔をあげる。
そして、ヴィッテは改めてメンバーにお礼を言う。

「改めてみんなありがとうなの...」

ヴィッテはそう言った後に気持ちを切り替える為にこう切り出す。

「気持ちを伝えた記念に流れ星にみんなでお願い事をしない?」

ヴィッテの言葉に全員が一瞬だけ戸惑うがすぐに
チノが返答する。

「ふむ、それは良い考えだね」

チノの言葉に続いて一同が賛同する。
ミューがヴィッテに向かって問いかける。

「ヴィッテ、どんなお願いするの?」

ヴィッテが間を空けずにすぐに答える。

「実は最初の流れ星を見て、みんなの様子を思い出して思いついたお願いなんだけどね。
それは...」


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