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⑱ 殺すなら子供のうち 安斎金蔵(18)

「未成年は罪が軽い」

事件は昭和25年4月26日。宮城県仙台市の駅前の魚屋を二人組が襲撃し主人と雇われ人に大ケガを負わせ、妻を殺害し1万円を奪った強盗殺人事件。
主犯の安斎金蔵(18)と少年A(15)は少年院で出会い安斎が「未成年は大した罪にならない。金儲けに人を殺すなら子供のうちだ」とAを誘い凶行に及んだもの。現在も少年法が議論される中で70年前にすでにこのような思考を持って犯罪を繰り返す者がいた事は見逃せない。
【昭和25年4月30日読売宮城版】

酒と女で浪費しながら逃走

事件発生からすぐにAは仙台駅前で検挙され取り調べを受けた際に架空の人物『佐藤某』と共謀したと供述していたが、強面の刑事の厳しい取り調べに耐えられる15歳は中々いないだろう、28日には佐藤某は嘘で安斎と共謀したと自白した。安斎はAの供述での「北海道か東京に逃げる」と言っていた通りに同月29日に浅草で仙台署の刑事に逮捕された。
安斎は逃走4日間で浅草で女をつれて映画館や酒場をはしごし、計5万円も浪費しながらの無計画な行動であった。(国家公務員の初任給が4000~5000円の時代)
【昭和25年4月29日と30日読売宮城版】

少年犯罪と検察官の論告

「両名は少年なら処分が寛大だとの考えからあえてこのような凶行を行い。また世間もそのように誤解している。-中略-その誤解を一掃するために極刑が妥当と考える」
安斎には死刑を求刑しAは死刑相当と考えるも少年法により無期懲役を求刑した。
【昭和25年11月22日読売宮城版】

※この年代は逆送可能なのは16歳以上だが処分決定時に16歳以上も含まれる。

一審判決と法廷内写真

昭和25年12月7日に仙台地裁で判決の言い渡しがあり、安斎に無期懲役、Aには懲役15年の判決が下った。
その際に安斎とAが判決を言い渡される瞬間の写真が掲載されているが、犯行時15歳、判決時16歳の少年の写真を掲載することに時代を感じるし、それも含めてこの事件は少年法の問題が色々凝縮された事件と感じる。
論告した検事は少年だからという理由での判決を不満とし、仙台高検と打ち合わせし控訴するか決めると述べている。
【昭和25年12月8日読売宮城版】

河北新報50.4.30

逆転死刑から上告棄却まで

昭和26年5月18 仙台高裁 破棄自判死刑
裁判長「将来においても光を見いだせない性格者」
安斎の顔はさっと青ざめた(Aは一審と同じ懲役15年)

昭和26年10月18日 最高裁 上告棄却
【刑集37巻6号】【昭和26年5月19日読売宮城版】
【昭和26年10月19日河北新報】【集刑54】

安斎の死刑執行

昭和30年1月29日。宮城刑務所で三人の死刑が執行された。その中の一人が安斎金蔵だった。「未成年は罪が軽い」と言った安斎は執行時に何を思ったのか…
【昭和30年1月30日河北新報】

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