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⓱乱暴目的で女性をはねた少年K(19)

被害者女性が消えた

神奈川県川崎市登戸の人通りもまばらな市道。小雨ふる昭和43年3月26日夜の11時45分ころ。
仕事を終えて車で帰宅途中の不動産業の男性が、路上に女性が倒れているのを発見し、すぐそばに停まっていたライトバンの若い男が「女性がひき逃げされた」と言うのでびっくりして目と鼻の先の自宅に急いで戻り、110番してすぐに現場に戻った。
戻ったのだが、倒れていた女性とライトバンの若い男の姿はなく、周囲にいた数人に声をかけたら、「ライトバンの男が病院に連れていくというので乗せるのを手伝った」とのこだったが、現場に駆けつけた警察官が辺りを調べると片方だけの黒のブーツとハンドバッグが見つかったが、血痕らしきものは見つからなかった。

被害者

ハンドバックの中から身分証が見つかり身元はすぐに判明した。
消えた女性は近くに住むS子さん(21)だった。東京の丸の内で働く英文のタイピニストで父親が遠方へ仕事に行く事が多くほぼ一人暮らしの状態だった。
無断欠勤もなく真面目で会社での評価もよく、トラブルに巻き込まれるような心当たりもなかったため、警察はライトバンの男がS子さんをはねて、連れ去ったとみて捜査を開始し、病院に怪我人が運ばれてないかも確認したが、該当者はなく事件性が高いと見て、近隣住民や自動車修理会社などに聞き込み捜査を開始した。

発見された被害者

「命だけは…」との願いも虚しく、同月28日の朝に多摩川を渡った東京都狛江市の水道局の資材置場の鉄管の中で、全裸に近い姿で自身の下着で絞殺された無惨な姿でS子さんは発見された。
(性犯罪なので具体的な犯行内容は控えます)
殺人事件として合同捜査本部を設置し、110番通報した不動産業者が目撃したというベージュ色のライトバンの割り出しも急いだ。

不審車両の車種とナンバーが判明

捜査の中でなんと、同月の17日の午後10時過ぎに若い女性が若い男が運転する小型のトラックに追いかけ回され、左腕をぶつけられたが何とか逃げきるという事件が、すぐ近くで発生していた。
この女性が四桁のナンバーを覚えていたために、乱暴目的の変質者で同一犯の可能性が高いと見て、警視庁管轄と神奈川県下の該当車種を徹底的に調べることとなった。
(冒頭の不動産業の目撃証言『ライトバン』は人の記憶は不意な出来事の時には曖昧という例だと思います)

犯人はなんと19歳の少年

同月30日に「手配と同じナンバーが自分の所にあり、凹みがある。息子の様子がおかしい」と届け出があり、調べたら血痕が発見されて被害者のものと一致。
運転していたと思われる少年は姿をくらましたが、大田区にある蕎麦屋に勤務するS苗に「話がしたい」と電話があり、通報で客のふりをしていた捜査官の前に少年Kが現れ31日の午後に逮捕された。

少年K

逮捕された少年Kは学生時代は何度も非行を繰り返し、保護観察処分になったりしていた。
中学時代はナイフで女性を脅す強盗をし、逮捕歴も三回あった。また大人しい反面、急に大胆な行動に出たりと二重人格で近寄りがたいという印象を持たれていた。
蕎麦屋のS苗とは恋仲で深い関係になっていたが、熱が冷めはじめてからは行き違い、喧嘩するようにもなっていた。
犯行の動機がS苗との関係が悪化した事で鬱憤ばらしをしたかったというなんとも身勝手な動機だった。
犯行で使用した小型トラックはKやKの父親が仕事で使っているものであった。

一審は死刑判決

強姦致傷、殺人1
昭和44年2月12日に八王子支部で求刑公判が開かれ、検察の求刑は死刑だった。
同月の28日に「残虐極まる犯行」とし、求刑通りに犯行時少年のKに対し死刑判決を言い渡した。弁護側は「重すぎる」と控訴した。判決言い渡しはKが20歳になる一日前だった。

高裁で破棄自判無期懲役

控訴審は昭和45年12月26日に東京高裁で開かれた。
原判決趣旨も充分に理解できるとしながら、

失恋が大きな心理的負因
てんかん性要因の性格異常
計画性が低い
19歳という若年
極刑で被告人の将来の可能性を完全に否定することにはためらいがある

これらの理由により一審判決を破棄し無期懲役が言い渡された。
双方、上告せずに無期懲役が確定した。

【昭和43年3月28日~4月1日読売新聞】
【昭和44年2月12日と28日読売新聞夕】
【刑月1.2.161】【高裁時報21.12.448】

判決文提供
折原臨也リサーチエージェンシー様

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