【絶対音感】音楽よもやま話
タイトルのとおりです。
世間には絶対音感に対する神話的価値感や多くの誤解があるんですけどそれは多分他の誰かが論じてくださってるので置いといて、実際に出会った絶対音感保有者に対して「これは大変そうだな」と感じたエピソードを並べるだけのヤツします。
1. B♭調絶対音感
絶対音感がどのように形成されるのかの厳密なところは音楽家の領分じゃないと思うので詳しい人に任せるとして、とはいえそれなりにたくさんの音楽家と出会ってきたので「おおかたこんな感じでそうなっていくのだろう」というのは経験則としてなんとなく持ってます。
やっぱり幼少期の音楽経験、特に楽器経験って大きく影響するんだろうと考えてるわけですが、幼少期に手に取る楽器ってなにもピアノだけじゃないでしょう。
ヴァイオリンとかフルートとか演奏するお子さんもいるわけですから。
そんな中でトランペットを選択するお子さんあるいはご家庭があっても不思議ではないですよね。
この話の主人公はそんな人。
なんとB♭調で絶対音感が形成されてたんですね。
ドレミファソラシドがB♭・C・D・E♭・F・G・A・B♭です。
多くの人がそうというだけで絶対音感がC調に固定される原理原則など無いわけですから、極めて自然なことです。
ところでトランペットって楽器、普通に吹くときれいな十二平均律とは異なる音高が得られるんですよ。
この人の絶対音感は”トランペットの”ドレミを基準に形成されていたので十二平均律とは大きく異るものでした。
多くの人がそうというだけで絶対音感が十二平均律に固定される原理原則などもまた無いわけですから、極めて自然なことです。
あっけらかんとした穏やかな人だったんですけど、その実随分苦労をしているようなことも漏らしていたので相当だったんでしょう。
2. 調がわからない!
絶対音感って音を聴いたその瞬間に音高がわかってしまうので、例えば前後の音や上下の音と比較して聴くという考え方が必要ないんです。
これを踏まえてのお話。
まず下図をご覧ください。
ちょっと音楽理論の入り口を覗きます。
上がハ長調、下がト長調です。
それぞれの調が持ってる和音を書き出したものなんですけど、ハ長調とト長調はこれを結構共有してるんですよ。
和音の役割というのはその調の中で何番目の和音であるかが決めるので(下に振ってあるローマ数字)、たとえ同じ和音であったとしても置く場所によって様々な表情をみせてくれるんですね。和音遊びの楽しみです。
ところでこの”何番目であるか”というのは、前後の和音と比較して相対的に判断します。
Cの和音だけではわからないけど、次の和音がBm、更にその次がEm。ハ長調には無い和音を通ったのでこれはト長調の文脈だな。と理解できるわけです。
ところがこの話の主人公は筋金入りの絶対音感、物心ついたときから”音高の判断に前後比較など必要ない”という猛者だったんです。
これ自体は素晴らしい能力だったんですけど、この主人公がこのあと直面する大問題が想像できておっかないですね。
どんな音高でも一発で聴き当てるという聴き手として最上級の能力が、調性が聴き取れない理解できないという造り手として致命的な問題を生んでしまいました。
そもそも”前後の音を覚えておいて比較する”なんて面倒くさいことこの上ないわけですから、やったことなくて当然知らなくて当然できなくて当然です。
この主人公はこの後音楽理論を学び音感を補填、前後比較の概念を理解して今では立派に造り手を務めています。
たまにこの話をボヤいてくれますが、10年以上前のことを未だに言うので相当苦労したんだろうと思います。
下手すると絶対音感をあと付けするよりキツいトレーニングだったのでは・・・(個人の感想です
3. まとめ
とまぁ、ご紹介したお二人は最も極端な例というかんじで、絶対音感保有者のほとんどは全然穏やかに音楽ライフ楽しんでると思います。脅かすような内容でごめんなさいね・・・
絶対音感と相対音感(前後など複数の音高を比較する聴き方)とどっちがいいかと聞かれれば「それぞれ単独であれば一長一短甲乙つけがたく、もし両方持てるならそれが最強」と答えますが、どっちかを習得してしまうとそれがもう一方の習得を阻害することもままあるように考えています。(両方持ってるスーパーマンいますけどね!うらやましい!
であるならば、ヴァイオリンや歌のような音高は無段階で自由自在みたいな楽器を演奏するでない限り相対音感のほうが学習には有利なのかなと個人的に思います。
現代で実用的な音楽理論は音高に関するほぼすべてのものが相対的に記述されているので相対音感は感覚的な理解を助けてくれるはずですから。
でも絶対音感教育を否定するつもりは毛頭ないですよ!できりゃなんでもいいんです。
そういう教育を受けてるさなかという方、先生のやり方に従ってくださいね。
ここまでだいたい14ツイートぶんくらい。
長くなったんでこのへんで。
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