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追伸:未来の笹岡秀旭くん

PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2が終わり、デビューメンバーの11人は「INI」として華々しくデビューを飾ることとなった。2020年冬、101人の練習生たちが目指した頂点の11人が、長い戦いの末にようやく決定したのだ。

前回のnoteが自分にとっては、練習生である笹岡秀旭を語る最後のnoteだと思っていた。しかしそれにしては、感情的に過ぎてしまったようにも感じていた。あの瞬間はもうそれ以上の言葉がどうしたって出てこなかったのだが、時を過ぎるとあれが最後でいいのかという気持ちになった。前回の記事では、笹岡秀旭を敗者としていたわる気持ちが前面に出過ぎていたように思うからだ。

もう一度noteに向かおうと思ったのは、先日発売された「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2 FAN BOOK」を読んだからだ。この本には101人の練習生のプロフィールやオフショット写真、直筆アンケートなどが収録されている。ここで綴られた笹岡の直筆アンケートを読んで、第二回順位発表式の笹岡秀旭を、彼を語る最後の言葉にしてはいけないと思った。彼が伝えてくれたことに対して、一ファンとしてどう感じたか、どう受け止めたかを記しておくべきだと思ったのだ。それが本人に届くか届かないかは、また別の問題として。

サバイバルオーディションの光と影

笹岡が脱落した余波から、デビュー評価の曲やポジション決めなどはほぼ見ていなかった。ビハインドやカウントダウンフォトも当然目に入るのだが、笹岡がいない21人の、前週まで微笑ましい気持ちで見ていた彼らが、どうしても遠く離れてしまったように見えて、そっと画面を閉じていた。

しかしそんな思いをよそに、ファイナルのデビュー評価で見た21人は、練習生という立場を乗り越えた真のスターだった。この1週間余りの、一曲にかける莫大な練習量が、コンセプト評価からさらに成長した姿となって私たちの目の前に鮮やかに現れた。できれば笹岡にも、こんな環境を経験して欲しかった、羨ましいなとも思ったが、そんなささやかな抵抗感は全力で挑む彼らの前ではすぐにたち消えていく。壇上でパフォーマンスをする21人があまりにも美しすぎて、ただただ圧倒されて画面を見つめていた。

オーディション番組から生まれるグループは、デビュー当初は祝福の声よりも彼らに背を向ける者の声の方が大きく聞こえてしまうかもしれないと思うと、勝ち残った彼らの頑張りに水を差してしまうようなやりきれなさを感じる。それほどまでに一人一人の練習生に対するファンの思いは深く激しい。それでも事務所の大きな支えを得ているINIの11人は、いつの日か大衆人気も更なる実力も獲得して、ネガティブな声を跳ね飛ばすくらいの活躍をするであろうし、そうであって欲しい。

12位から21位のメンバーも誰が選ばれてもおかしくないくらいに実力が拮抗しており、すぐにでもセカンドグループが組めそうな子ばかりだ。ただ、それを言ったら22位以下の練習生たちだっていつでもデビューできそうなポテンシャルのある子が多いのである。INIに選ばれなかった者たちの中からいくつかの派生グループが生まれたとして、そこにも当然選ばれない子が出てくる。サバイバルオーディション番組とはどこまでいっても光と影をその周辺に纏い、勝ち負けの葛藤を内包している。

放送分量にしてもそれは同じだった。放送されなければ、映し出されなかった彼らの努力は一体誰が目にすることになるのだろう。長い練習の末にたどり着く、一人一人の練習生なりの輝く瞬間が必ずあるのに。出口のない問いを考え続けて、溶けるように時間が過ぎ去っていく。自分はつくづくサバイバルオーディション番組にも、リアタイにも向いていないのだと悟った。

記憶に残るパフォーマンス

手元に届いたファンブックをめくってみる。冒頭は宣材写真のオフショットと自己紹介欄で構成された101人の練習生のプロフィールだ。そこから時系列に沿って練習生たちのありのままの様子が映し出されている。たった数ヶ月前のことなのに今とは面差しの違う練習生も多い。

オンタクト評価で残念ながら60人に残れなかった練習生たちのプロフィールやアンケートも記載されている。私は本放送が始まる1週間前くらいにシーズン2を追い始めたのだが、アンケートからほとばしる101人一人一人の喜びや興奮の勢いに、ページをめくる手を止められなかった。どの子もサバイバルオーディション番組の過酷さや残酷さ、強烈な光と影の存在を知って覚悟を決めて応募してきている。

ファンブック第一弾はグループバトルまでの記録が主となっており、笹岡属する弁当少年団についても本人たちの思いが語られていた。ファンの気持ちが本人たちにもきちんと届いており、放送時の反響を喜ばしく思う様子が見受けられる記載があったのだ。

弁当少年団の中に、デビューはおろかファイナルまで残った練習生はひとりもいない。それでも弁当少年団のハイライトは、本放送が終了してもなおYouTubeの再生回数を伸ばし続けている。そして私のnoteの不動の第一位は弁当少年団の記事である。彼らが10グループ中9巡目に選ばれた言わば余り物のチームだったこと、にも関わらず相手チームに6票差で負けたこと、40人の中に残った笹岡井筒くん内田くんの最終順位が25、26、27位となったことも全てが彼らの持つドラマ性に拍車をかけている。

彼らは一方から見ると勝負に負けたのかもしれないが、人々の記憶には長く残り続けている。綺麗事かもしれないが、やはり勝ち負けだけじゃないよなと思った。ある一時期のある一定の目的においての順位付けが、彼らの人生においての最大の評価であっていいはずがない。

笹岡秀旭からのメッセージ

巻末のアンケートで語られた笹岡からのメッセージは今までの自分の中のアイドル像を大きく覆すものであった。詳しくは本著を参照されたいが、アンケートの冒頭にはアイドルへの質問としては定型的な項目がピックアップされていた。そこに対する笹岡の回答が、自分の予想を遥かに超えてきたのである。

笹岡はこの質問の背景に潜むジェンダーの観点を大きく俯瞰して回答していた。彼の回答はまさしくアイドルの未来像を鮮やかに描くものだったと感じる。少なくとも笹岡は、自分を含めた誰しもの未来の可能性を否定も限定もせずに生きていこうと考えている人なのだろうと思った。これからの時代を生きるアイドルとは、誰の人生をも輝かしく照らし、そのあり方を祝福する存在なのだろう。

この本を手にした時点では笹岡は番組を去ったばかりで、私たちファンにとっては笹岡がアンケートに残してくれた「いつか直接お礼を伝えたい」というニュアンスの言葉が何よりの支えとなった。だが、上記のような新たな未来の可能性を示してくれる笹岡が、いつか自分の伝えたい思いを歌に載せて表舞台に現れるかもしれないと思うと、「笹岡の登場を待つ期間」の質がぐっと変わってくる。

きっと彼は何か予想もしないものを、予想を上回る形で私たちの前にポンと出してくる。これまでの番組の企画でも、いつでもそうだったように、とことん考え抜き十分な準備をしながらも、何気ないような顔をして。

ファンブックの発行からさらに数日後、笹岡は個人のSNSアカウントを開設した。その開設の経緯も、更新の仕方も内容も、いかにも笹岡秀旭という感じである。私たちファンは、まるで小学生の時の夏休みの観察日記のように、彼が少しずつ変化を加えているアイコンやbioのかけらを拾い集める毎日だ。

番組は終了したが、笹岡を応援する楽しさは本質的には番組が放送されている時と何ら変わりはない。そしてこの楽しさは、笹岡秀旭を追いかけている限り日々更新されるのであろう。たとえ笹岡から何の供給がなくても、自ら笹岡にまつわる新しい何かを見つけ出して、共有しあえる笹プがいる。

笹岡に出会った春の日の、ふと手を止めて笹岡の言葉を、初めて彼の穏やかな語り口を聞いたあの瞬間が、今でも鮮やかに耳の奥に蘇る。

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「どうか僕を見つけて下さい。
絶対に期待を裏切りません!!」

期待を裏切るどころか、いつも期待を超えてくるひと。笹岡が未来を作り出す力を、私たちは信頼している。

練習生の笹岡秀旭くん、6月13日をもって番組は終了したけれど、未来の笹岡秀旭くんをいつまでも応援し続けます。いつもたくさんの感動と驚きをありがとう、これからもどうぞよろしくね。









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