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笹岡秀旭と第一回順位発表式

「グループバトルではメインボーカルを務めチームの希望の光となりました」

その名前が呼ばれる前に、堪えきれないようにぐっと身を乗り出したのは小林大悟くんだ。確信したように「ひで」と小さく声をかける木村柾哉くん。待ちきれないと司会を見つめる小池俊司くん、呼ばれるやいなや喜びを爆発させて拍手をする阿部創くん。

自分のことのように、ひょっとしたら自分のこと以上に、33位となった笹岡秀旭の残留を笑顔で祝福している。弁当少年団に並び、笹岡が大事にしているもう一つのチーム、DU Quintet の仲間たちである。

DU Quintet

DU Quintet は第一回放送時のレベル分けテストの際に笹岡が振り分けられたチームである。DUとはダンスユニットの略だ。

バックダンサーの経験がありオンタクト評価順位が最も高いうちの一人である木村柾哉くんを筆頭に、ダンス5年以上の経験者として阿部創くん、小池俊司くん。未経験ながら人を惹きつける力を持つ小林大悟くん。そこにボーカル志望でダンス初心者の笹岡が加わった。

番組内では練習風景としてダンスの基礎練習を行っている様子が取り上げられていた。「柾哉くんはみんなのダンスの先生です」と愛嬌たっぷりに語る阿部くん。圧倒的な技術を持つ木村くんだが周囲との調和を大切に自分が持つものを惜しみなく教えるスタンスであることが見て取れる。練習中の盛り上げ役は人懐っこい小林くん。確固たる技術がありながらもどこか控えめな印象の残る小池くん。

弁当少年団のみならずこのチームも雰囲気が良くビハインドからは平和に練習が進んでいく様子が伝わってくる。円になって座り何かのきっかけで大笑いしている5人。レベル分けテストのために初めて集いコミュニケーションも手探り状態だったであろうに、短期間で打ち解け家族のように笑い合っている。「自分を信じて仲間を信じて頑張ります」そうコメントをした笹岡のモットーは「友情・努力・勝利」少年ジャンプスタイルである。

曲はSEVENTEENの「24H」。時計の針をイメージしたスタイリッシュな構成が特徴的なダンスチューンである。サビ前には超高音ともいうべき箇所があり、少なくとも笹岡の得意とする音域ではないのだが、ダンスを得意とするメンバーの多いこのチームでは恐らく高音部分を期待されてのアサインだと推察された。

「24時間、あなたの心を踊らせます。
ダンシング戦隊・DU Quintetです!」

本番ではチームとしてのまとまりが非常によく取れていると感じた。5人のチームはレベル分けテストの中でも最多人数であったが、個人のスキルのバラつきを感じさせない。恐らく木村くんの考えた振りやフォーメーションは自分だけでなく誰にもスポットライトが当てられるように、さらに誰も悪目立ちしないように考え抜かれたもののように思えた。スポットを抜いて引きで見ると、彼らがどれだけ心を通わせて練習を重ねたか良くわかる。笹岡は一部高音が思ったように出せなかったが、それでも期待されたボーカル面でチームに貢献していた。

順調なように感じたDU Quintetだが、小池くんが立候補しダンススキルの高さを審査員にアピールすることに成功するも、Aクラス候補であった木村くんがBクラス判定となり、さらにAクラスに抜擢された小林くんがステージ上での態度をKENZO先生に叱責されるという事態に陥ってしまう。バックステージでは他の4人が小林くんを温かくフォローし、彼が必要以上に自分を責めないように声をかけていた。

小池くん(Aクラス)、木村くん(Bクラス)、笹岡(Cクラス)、阿部くん(Dクラス)とそれぞれ自分のクラスに対する思いは十分にあったであろうに、自分の気持ちを差し置いてでも仲間への声かけをしている姿に、彼らの人間性を読み取った視聴者は多かっただろう。

ミサンガがつなぐ絆

再び順位発表式に戻る。笹岡の33位の後も、DU Quiutetのメンバーの順位発表は続く。着実に順位を伸ばす小池くんは26位、小林くんは22位だ。1位は田島将吾くんとの激戦の末に木村柾哉くんが返り咲いた。以下はそのコメントの抜粋である。

「さっきDU Quintetの創がチームのみんなにくれたミサンガがファイナルの6月13日にきっと切れることを願って、これからも一生懸命頑張っていきます」

そう語る木村くんの手首には赤いミサンガが飾られている。

順位発表式のビハインドムービーでは、阿部くんがDU Quintetの仲間たちに色違いのミサンガを手渡す様子が映されている。綺麗にラッピングされた手作りのミサンガを取り出して見せると、4人の仲間たちは歓声を挙げて喜び、すぐさま手首に付けている。笹岡の手首には緑の、小池くんには紫の、小林くんには青の、阿部くんには黒のミサンガが揺れている。

「みんなでデビューしたいから」とミサンガを取り出した阿部くんだが、順位発表式の前の順位が58位であった阿部くんは、もしかしたらこの順位発表式で自分が名前を呼ばれないであろうことを覚悟して臨んだのかもしれない。それでもなお、恐らく他の4人が名前を呼ばれることを信じて、そして離れた場所にいても自分を含めた仲間同士であり、どんなことがあっても応援し続けるということの証に、このミサンガを用意したのだと想う。

ミサンガは阿部くんから仲間に向けた精一杯のエールだ。そして4人の仲間も、同じく阿部くんに向けてエールを送っていたはずだ。発表式を終えた笹岡はまっすぐに阿部くんの元へと駆け寄る。4人で阿部くんを囲むと、阿部くんは「みんなと出会えてよかった。(自分は)全然ダメだったけど....」と泣きじゃくる。創は全然ダメなんかじゃない、というように、木村くんが肩を叩く。

これは阿部くんに限ったことではない。

どんなに小さくとも、あなたが画面の端に映り込むのを逃さず見つけてくれる人がいる。あなたの名前を掲げて手を振る人、投票画面であなたの名前を最初に押す人、あなたのパフォーマンスの成功を、自分よりもあなたの幸せを誰より願う人がいる。

その尊さは数では測れない。人を想う気持ちに優劣はない。どうか今までの日々の積み重ね、流した涙に胸を張って欲しい。あなたはもう既に、誰かにとっての唯一無二のアイドルなのだ。

覚悟の「RED」

順位発表式に臨む笹岡の髪色は赤に染まり、それまでの暗い茶色と大きくイメージチェンジしている。順位発表式の前に公開されたYouTube広告ではカラーチェンジをした練習生が多く見受けられ、大きな話題を呼んだ。

恐らく本放送を見る多くの視聴者は笹岡のことを澄んだ高音と優しい人柄の持ち主と認識しているのであろう。しかし多くの笹プ(笹岡のファン)はこの現状を歯痒い思いで見つめている。笹プのほぼ全員が、彼の高音でも優しさでもなく彼の中低音の歌声に「感電」させられて彼を推しているのである。本放送でわかるのは笹岡の実力の1/2にも満たない、と感じているファンは多いはずだ。


笹岡は何故赤髪を選んだのだろうか。赤色に込めた想いは何なのか。笹プの間では、笹岡が座右の銘としてあげる歌詞に由来しているのでは、という声が多く上がった。

楽はしない 偉ぶらない 誰のせいにもしない

笹岡が尊敬するアーティストの一人、B'zの稲葉浩志さんが作詞した楽曲「RED」の一部である。

この記事を公開するのは第二回現場評価(ポジション評価)の当日である。私たちは現時点で誰が何の楽曲でパフォーマンスをするのか知る由もない。

礼を尽くし 栄華を捨て 泥まみれにもなろう
千切れないこの絆の色 RED

脱落していった仲間たちの想いを背負い、覚悟の赤髪で笹岡は何を歌っているのだろうか。

世界はまだ笹岡を知らない。

笹岡よ、今こそ君の実力を世界に見せつける時だ。
今日のステージを支配する覇者であれ。





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