Royal Sash (Family#1-t)

牝系を辿ってきた旅の続きであり最終章。

血統

父 1951 Princely Gift ⁃ GB
 父父 1940 Nasrullah ⁃ GB
 父母 1943 Blue Gem ⁃ GB
母 1957 Sash of Honour ⁃ GB
 母父 1943 Prince Chevalier ⁃ FR
 母母 1948 Sylko ⁃ GB


Nearco 3×3
Pharos = Fairway 4*4×4
Blandford 5・4

父 Princely Gift ⁃ GB

父は英国産馬 Princely Gift 。
現役時代は短距離路線を走り古馬になってから覚醒。種牡馬としては早熟なスピードを伝えていることが産駒 Tesco Boy[テスコボーイ]の成功によって日本に知れ渡り、馬産地に惚れ込まれ「すぎ」たことで有名です。

Royal Sash が日本にやってきたのが1973年。Tesco Boy の日本初年度産駒ランドプリンスが皐月賞を勝ったのは1972年。のちの活躍馬キタノカチドキ・テスコガビー・トウショウボーイはまだ表舞台にいません。
Princely Gift の後継牡馬ではなく繁殖牝馬を導入したのはだたの偶然なのか意図的だったのか?サクラユタカオー や Royal Sash の牝系たちによって育まれた Northern Taste との関係性を鑑みると考えたくなってしまいます。

Princely Gift はかなり濃厚系の血統です。
Pharos = Fairway 3×3
Blandford 3×4
The Tetrarch 4×5

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父 Nasrullah は Good Deal の息子 Straight Deal と同期で共に走っており、気性面の問題からたくさんの逸話を残しつつも最終的には英チャンピオンステークスを勝ちます。引退後の功績は絶大で世界各地で父系を伸ばし、今もその名を轟かせる大種牡馬です。

母父 Blue Peter は英二冠を獲ったあと、第二次世界大戦の影響を受けて急遽セントレジャーステークスが中止されたことにより夢を絶たれた「幻の英国三冠馬」。後継にはあまり恵まれませんでしたが母方に入っての評価もあって渋く生き残ってきました。

父と母父に共通する《Pharos = Fairway》は〈Phalaris × Scapa Flow〉の間に生まれた同血ですが、体格や性質などが正反対であまり似ていなかったようです。それでも結果的には両者とも後継となる名馬を輩出して成功を収めました。特に Pharos の息子 Nearco が世界を席巻したこともあり、血統の奥に両者を抱えている馬は星の数ほど存在します。

The Tetrarch は斑点模様を持つ芦毛のスピードスター。後脚で前脚を蹴りつけて頻繁に負傷してしまう程の長い脚と大きなストライドを持っていました。デビューから驚異の能力を放ちながら、度重なるこの怪我に悩まされ、レースへ出走できたのは2歳時のみでした。

4歳の若さでスタッドインしたものの種付を嫌がる傾向があったらしく産駒の数は増えず仕舞い。とはいえ少数精鋭でリーディングを獲るなど確かな能力を伝えました。中でも名牝 Mumtaz Mahal を通じて後世へと繋げたスピードは競馬界の大きな遺産となります。Princely Gift が示した短距離特性と子孫に与えた資質も彼の影響が強く受け継がれていたからこそでしょう。

Princely Gift × Sash of Honour

Nearco の3×3。懲りることなく再び王者王道の濃いクロス。
加えて Princely Gift が3×4で持つ Blandford の父は Swynford 。ということで、父父 Nasrullah / 父母 Blue Gem / 母母 Sylko 其々のラインにおいて〈Pharos = Fairway + Swynford〉が共通する近似な関係になります。

Pharos = Fairway 兄弟の母父は Chaucer ですから、この脈略は Sylko の項でも触れた Swynford と絡む Canterbury Pilgrim アソート。Royal Sash はこのセットを三本抱えている構成です。

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参加する気配を全く感じない母父 Prince Chevalier ですが、目を凝らしてみても Swynford の父 John o'Gaunt があるくらいでした。異系おじいちゃんは淡々と我が道を進みます。彼を父に持ったことによって五代クロスを5×5一本まで希釈していた Sash of Honour だからこそ Princely Gift の迫力をすんなりと受け止められたのかもしれません。

Royal Sash [ロイヤルサツシユ] (1966)

Royal Sash はたった一度2着の戦績が記録されているだけで詳細不明です。参考までに半姉 Irish Laurel (1965) は英国の障害レースで22戦6勝と2着6回。半弟の Irish Favour (1967) が平地で47戦11勝して2着13回、重賞入着した際の距離記載は16-18F 。どちらも仏2000ギニー馬 Tyrone が父です。
Sash of Honour が伝えるステイヤー資質……と垣間見えてしまう2着力。

Progeny

Royal Sash が英国で産んだ子供達については Mistiana (1971) が フランスで6戦1勝2着1回(距離不明)、 Race Au Corps (1972) に至っては戦績なし。共に牝馬で Race Au Corps は娘を産んでいたようですが以降が不明です。

英国で続いてきた長い道程。
ここからは遠く東へと羽ばたいていきます。

1974 白老 牡 鹿毛 ヤタノヒカル
Yatano Hikaru by Bold and Able ⁃ USA
JRA-13[3-4-1-5] 2918.7

1976 白老 牡 鹿毛 アスコットロイヤル
Ascot Royal by El Centauro ⁃ ARG
JRA-24[4-2-4-14] 6164.0 

1977 早来 牝 鹿毛 シヤダイフレツシユ
Shadai Fresh by Lassalle ⁃ FR
JRA-3[0-0-0-3] 0.0 

1978 早来 牡 鹿毛 アウンエイブル
Aun Able by Bold and Able ⁃ USA
JRA-11[0-2-1-8] NAR-60[6-3-6-45] 973.5

1979 早来 牝 鹿毛 ダイナサツシユ
Dyna Sash by Northern Taste ⁃ CAN
社台レースホース 1600
JRA-9[0-2-1-6] 340.0 

1980 早来 牡 黒鹿 アグネスハンタ
Agnes Hunter by Huntercombe ⁃ GB
JRA-1[1-0-0-0] 420.0

1981 早来 牝 黒鹿 ダイナギフト
Dyna Gift by El Centauro ⁃ ARG
社台レースホース
JRA-26[1-3-3-19] 1418.3

1982 早来 牝 栗毛 ダイナホツト
Dyna Hot by Dictus ⁃ FR
社台レースホース
JRA-26[5-4-2-15] 5814.6 

1983 早来 牡 鹿毛 ダイナジョーカー
Dyna Joker by Hard to Beat ⁃ IRE
社台レースホース
JRA-2[0-1-0-1] 160.0 


いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。