舞台「マリア~The first Xmas of the last children~」感想

※作品に関するネタバレが若干あります。ご了承ください。 

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 若林倫香さん、2019年最後の出演作品を観劇しました。

 場所は東京の高島平にある「バルスタジオ」。名前は変わりましたが、約3年前に、この時も若林倫香さん出演の歌ありの舞台出演が同じ場所であり、それ以来に伺うことが出来ました。久しぶりに高島平に私も降り立ちましたが、のんびりした駅前や街の雰囲気は全く変わってませんでした。12/20の14:00公演、12/21の13:00と18:00公演の3公演観劇です。

ざっくり、あらすじ

 空気が汚染されて住めなくなった地上の世界。地下シェルターの中、この世界で最後に生き残っているはずの5人の「少年たち」と、彼らを育てる女性型で優秀な子育て専用のAIアンドロイド「マリア」のお話。彼らはどこで生まれたか、親も、親の定義も知らないまま、かつての人類が遺した書物や動画を見て、決まった食事を食べ、すくすくと青年へと成長している。

 末っ子の「ミカ」は12月25日に16歳の誕生日を迎える。その誕生日を迎える1週間前、マリアから「16歳の誕生日を迎える日、子育てロボットとしての使命を終え、活動を停止する」と聞かされる。その機能を発動させないために、削除された記憶「ウタ」を呼び起こせば書換えプログラムが発動するかも?とマリアは語る。少年たちは「ウタ」を探すため、シェルターの外の地上へと目指す。

 幾重の扉を開き、その先には別のシェルターが。そこに辿り着き、自分たちと同じ人間、だが体付きが違う「少女たち」4人と出会う。この時、少年たちも少女たちも「男女」という定義を知らなかった。

 少女と共にシェルターの外の地上に出て、数日間の「ウタ」の探す旅へ。そこでは彼らが知らなかった目を背けたくなるような真実を次々と聴かされることになる。苦難を乗り越え「ウタ」に出会い、シェルターに還る。更に聞かされる真実。そしてマリアの活動停止を阻止できるか。

クリスマスというテーマのお話?

 メインビジュアル等を見て、最初はクリスマスをテーマにしたお話という観劇前の印象でしたが、どちらかというと、クリスマス付近に起こる隔離社会と退廃した世界が舞台のSF的なお話というのが主軸。序盤は少年たちが登場ですが、別シェルターに到達して少女たちと出会う。地上でも1人の少女に出会い、冒険的なお話の中で衝撃的事実が何度も飛び出す。中盤以降はショックと解決の繰返しで何度も心を揺さぶられる。

 シェルター帰還後の終盤に向けては一気に熱量が増してきて、探してきた「ウタ」をマリアに披露するシーン。10人の男女での合唱。オリジナルの讃美歌ですが、高低差ありの本格的なゴスペル。物凄く心に響く歌声。この辺りはクリスマス的な感じかなと思ってみたり。

 しかし、お話の流れとして、結果マリアは活動停止をしてしまいます。少年少女たちは失った悲しみを越えて、自分自身で生きていこうと決意する。そこにはマリアから学んだ教えに沿って「自分で考えて」生きていく、その決意とかマリアに叫ぶメッセージは終盤のハイライト。長く長く続く叫びは更に観ている側の心に訴えかけられる。更に強く強く感じる熱量。

生きるという名の叫び

 終盤からの勢いは、クリスマスというテーマを忘れたかのように、「生命」そのものを感じられるような、熱い血の流れを感じてしまうような勢いを感じてしまいました。温室のように守られた状態で育てられ、あることをきっかけに広い荒野に置き去りにされて、絶望を味わい、それでも尚、この世界で生きてやるという感情表現。それは育ててくれた「マリア」の教えが根底にあったからという彼らの気付きや決意。

 簡単に死にたい、人生を終えたい、諦めたいと思ってしまう世の中だからこそ、このメッセージを響くべき使命を持っている作品のかもしれないなと感じ取れました。この熱量は何かに迷っている人には絶対触れておいたほうが良いと、観劇しながらそういう想いが溢れてきました。

 この作品のパンフレットに、脚本家の蛭田直美さんの言葉が書いてあるんですが、1年前に本気で命を断とうとして思い止まった手記が書かれています。生と死の狭間から誰かからの「言葉」で立ち直った。この言葉をかけてくれたとある方への感謝の意味を込めてのこの「お話」を作り上げた。ということを記されています。

 出来ればこの作品は、クリスマスのこの時期に毎年上演して欲しいくらいの作品だなと。そして観ている人に生きる意味を思い返して欲しいですし、迷いを感じている人への一筋の光になって欲しい。キャストさんは毎年変えても良いから上演して欲しいな。この世の中に産み落とされた「使命」を感じます。なので、この感想に細かい部分のあらすじはそんなに書いてません。一部ぼんやりと書いてますが、色々回避しています。でも、この作品はいつかまた誰かの光になって欲しい。という勝手ながらの願いもこめて。

とはいえ・・・・

 シリアスな仕上がりとなっているこの作品ですけども、笑えるところも用意されている。しかもここで笑いを感じられるんだという箇所で埋め込まれている。それもめちゃくちゃ心地いいんですよね。落差が激しいんですよね。泣き笑いと言うのはこういう事なのか。

 あと、男子勢の少年5人のイケメンぶりが物凄くて。女性のファンの方もここ一番のおめかしをして劇場にいらっしゃいました。2019年最高のイケメンを見れたような気がします。

あとがき

 今回の「マリア」に似た作品を昨年の6月に観劇していました。「エンテナ PLAY UNION 第8回公演」。4本のオムニバス作品で、若林倫香さんもある一作品に主役として出演されていました。この作品群の中で一番最後に上演されていた「DreamBox」という作品。閉鎖された空間で無作為に選ばれた男女が集い、1人だけが生き残れるという内容。途中、合唱による歌唱があり、終盤には生き残った1人へのメッセージもあり。マリアを観劇しながらこの作品を思い出しました。嗚呼、この熱量久しぶりだなと。この作品を舞台「マリア」を書いた蛭田直美さんが書かれていました。

 若林倫香さんも別作品出演でしたが、この世界観に感動して、舞台「マリア」のお話が来た時に是非出たいということでオファーを受けたとのことです。巡り巡った出会いを感じて。しかも歌が上手いということで出演にも至って。いちファンとしてもその話を聴いて嬉しい限りでした。

 私も久しぶりの歌ありの若林さんの作品を観れて感激でしたし、この熱量の中での強い意志を持つ演技。ホントに観れて良かった。いつも演技に挑む姿は全力で熱量が多い若林倫香さんですが、より濃いオーラを纏った彼女を見れたような気がします。

 というか、この作品は全員主役と言ってもいい。

 主人公は「ミカ」ですが、キャストさん誰もが生命を感じ取れて、熱を感じ取れた。出演しているみんなが主役!!誰が話の中で主軸とか重要な役処とかそういうのはない。みんなが主役の作品でした。感激しました。ありがとうございました。改めてですが、同じキャストじゃなくてもいいので、再演希望です!!

 ということで、なんか変に長文でガチャガチャな文章になって申し訳ないですが、感想以上でございます。<(_ _*)>