舞台版コインロッカー・ベイビーズ~舌は何のメタファーなのか?~


ごきげんよう。
モ…の舞台風のタイトルで初投稿失礼します。

舞台版コインロッカー・ベイビーズの「青い舌」、「ワニの国の使者に噛みつかれた舌」、「噛みちぎった舌」など、象徴的に登場する「舌」ついて、色々思うことがあったので書きます。


原作でもハシが舌を噛みちぎるシーンなど「舌」はショッキングな描かれ方で登場しますが、それ以外にも残酷な出来事が多すぎて、原作読了後にさほど「舌」意識することはありませんでした。
しかし再演で初めてこの舞台を見たとき、河合くんの嗚咽を聞き、床に滴る血糊を見て、アイコンとしての「舌」を意識するようになりました。
本当に最悪のオタクなので最悪のことを言いますが、正直河合くんの出血シーンと嗚咽に大興奮してしまい、これを書いているところもあります。
前置きはこのくらいにして、本題へ移ります。


・連想ゲームの舌
舌はナカにしまわれた器官なので、私は安直に内臓や子宮を連想します。器官というのは機能によってそう呼称されるのであって、明確な境界がある訳ではありません。故に舌は内臓そのものでもあります。(と思っていますが、医学的に違ってたらすいません)
舌は、ナカの器官で唯一意識的に動かすことができるため、自由な意志を表していると仮定します。


・ハシと舌
舌で、承認欲求の塊のようなハシはDに性的な愛撫をします(青い舌)。最終的にはその舌を自分で噛みちぎってしまい、Dの寵愛を受けることが出来なくなってしまいます。また、ニヴァへの攻撃性と自己愛が増強されます。Dの心がハシから離れたことが、舌を噛みちぎったことで満足に愛撫出来なくなったかどうかや、歌声の変化によるものかは不明ですが、ハシの内面的な変化を「舌」が表しているということなら、理由はさほど重要な要素ではないように思います。

舌(自由な意志)の一部失ったハシは、脳をハエの王様に乗っ取られてしまいます。また、薬物依存になり、ハシの原動力は「心臓の音」を探すことだけになり、音を聴くためなら行動に見境がなくなります。
最後には「僕は誰かの役に立ちたかっただけなのに」などとDに最後の懇願で白々しい歌を披露したあと、トラウマを克服するために妊婦のニヴァを明確な殺意を持って刺します。


・青い舌の謎
「青い舌」について調べたのですが、殆どがキリンの舌はなぜ青いのか?という内容だったで、「青い舌」の意味はさっぱり分かりませんでした。どなたか、教えて下さい!


・ハシと父性
若い女性にフェラをさせているシーンで、ハシは勃起しません。そしてそれを馬鹿にされます。
劇中では、ハシの父性の否定について意図的にフォーカスされなかったような気がします。
原作のハシは、父親になることを不安よりも気味悪がっており、妊婦になったニヴァをもっと邪険に扱っていた印象だったからです。
この演出の背景が男性アイドルを主役にキャスティングしているからだとすれば、少し勿体ないと思いました。


・キクと舌
キクはワニの国の使者(アネモネ)に舌を噛まれます。ワニ(アネモネの神様)は、高速道路で死に絶えますがその血を浴びたアネモネはワニの神様と一体化します。
キクは面会のキスシーンで、アネモネの舌を求めます。ここには、噛まれた舌を取り戻すという意味があるのではないかと思います。
以降、キクには舌にまつわるシーンがありませんし、誰かにコントロールされるシーンもありません。ダチュラを東京にばらまいて壊滅させるという当初の目的を達成しています。
舌を保っているキクは生き残っているんだろうと思いますがハシは…
物語の後、キクは目的がなくなってしまって自殺してしまうのではないかと真っ先に暗い想像をしてしまうのですが、アネモネと一緒にワニの国で幸せに暮らしていてほしいです。


・おわりに
なぜ今の時期なのか?私の中で、コインロッカー・ベイビーズの舞台はまだ過去のものではありません。消化に時間が掛かっているからというのもあります。未だにこうやって思い出しては文字に起こして理解しようと試みます。こういうことを考えられるのは、河合くんの新しい外部舞台が決まり、ABC座が終わって、やっと気持ちが落ち着いたからなんだなと思います。

☆おそらく機会がないと思うので舞台の感想も
・好きなシーン①
ハシは、自己愛のエネルギーが強く、優しいニヴァに攻撃的に接したり、(親という意味ではなく騎士のように)保護者の役割を果たしたキクがDの従者に傷つけられても保身的な態度を見せます。
これは橋本くんと河合くん、二人の解釈の違い滲んでいて好きなシーンなのですが、キクがDの従者に袋叩きにされたとき、橋本くんのハシは心から兄弟を心配するような優しい印象を受けましたが、河合くんのハシはもうずいぶんDに夢中でキクを「過去の人」扱いしているような気がしました。


・好きなシーン②
ホワイトノイズで歌われる「あの音を探してる」理由は、橋本くんだと「過去の傷を塞ぐため」だと思いましたし、河合くんは「前に進むため」だと思いました。
橋本くんのハシはDに抱かれる意味を知っているし愛されたいと同じくらい愛したかったんじゃないかなと思います。
河合くんのハシは抱きしめたら崩れるほど脆いのに、妙に図太く、利用できない人には容赦ない残酷さがあり、原作の年齢設定相応の印象でした。

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