【マクラ落選噺2】ドッペルゲンガー

マクラにならなかった話シリーズ

今回の落選理由:本当の話なんだけど嘘っぽいから。


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みなさんはドッペルゲンガーというものをご存知でしょうか?

自分そっくりの姿をした分身のことで、それを見てしまうと本人は死ぬなどと言われています。


今回の話を結論から言うと


僕、


ドッペルゲンガーを見たことがあるんです。




どうですか?

もう嘘くさいでしょ?


本当にそんなものいるのか、と。

見たら死ぬんじゃないのか、と。

笹丸生きてるじゃねぇか、と。


そう思う方もいらっしゃることでしょう。


はっきり言います。



逆の立場なら僕もそう思います!




でも見たんです。


あれは僕が小学生の頃。

当時バスケットボールを習っていました。

放課後に3時間くらいの練習があって、帰る時にはもう暗くなっていました。


いつも通り練習を終えて自転車で帰る笹丸少年(そのときは笹丸じゃないけど)。

青いTシャツに黒の短パンを穿いて、自転車の前かごにバスケットボールを入れて、DAN DAN 心魅かれてく(FIELD OF VIEWが1996年にリリースした曲)を口ずさみながら走っていました。


DAN DAN 心魅かれてくがサビに入り笹丸少年のテンションも高まってきたころ、街灯の少ない住宅街を進んでいると前から自転車で走ってくる影が見えたのです。

まだ乗っている人の顔などは見えませんでしたが、その前かごにバスケットボールが入っているのはわかりました。


「同じチームの誰かかな? でもこのあたりに住んでる人いたかな?」


疑問に思いながらも、DAN DAN 心魅かれてくを歌うことはやめずに直進します。

そして

すれ違った瞬間

笹丸少年はゾッとしました。




「今すれ違った人、青いTシャツに黒い短パンだった…!」




そう、僕と同じ背丈で同じ服装で同じように前かごにバスケットボールを入れていました。


自転車を止め、

地面に片足をつき、

後ろを振り返ると、




向こうも同じ体勢でこちらを振り返っていたのです!




ギャーーーーーーーーー!!!!!!





で終わると普通の怖い話なのですが、実際この時の笹丸少年は声も出さず固まっていました。

恐怖と焦りと、それに抗おうとする冷静さが拮抗してしばらく無になっていました。


「ドッペルゲンガー? いや、まさか…」


蜃気楼的なやつかもしれない。

僕の姿が反射してるだけかもしれない。

絶対こんな普通の住宅街で起こる現象じゃないだろうけど。

でもそうに違いない。


そう思った笹丸少年が蜃気楼かどうかを試すために取った行動が




その場で裸になる…!




これで向こうも同じように裸になれば、これは自分の姿が反射してるだけだ。


服を抜いで相手のほうをパッと見ると、



奴も裸になっていた…!



ただし、こちらとは違うポーズで…!



これは反射じゃない!

ドッペルゲンガーだ!


震えだす体!

一気に溢れる恐怖心!

とりあえず早く服を着たい!


笹丸少年が叫びそうになったその瞬間、静かな住宅街に

「きゃっ!」


女性の小さな悲鳴が響いたのです。



え…?



振り向くと仕事帰りらしき女性が裸の笹丸少年を見て驚いていました…!


さらに増す焦り!

一気に溢れる羞恥心!

とりあえず早く服を着たい!


慌ててその場を離れてなんとか家に帰ったのです。


これからしばらく夜道を通るときには、ドッペルゲンガーと、あの女性に再び出会ったらどうしようという恐怖がつきまとっていました…。

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