「光聴」岡田一実

光聴の読書会の締切がもうじきなので、そしてこの読書会はかなり良いものになる予定なので宣伝です(読書会を末席で手伝っています)。お申し込みは下記から、ぜひ!!パネリストの人の話が私も楽しみです。

https://twitter.com/kocho_read/status/1375016065462198279

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岡田さんの句を初めて読んだのは、BL俳句誌「庫内灯」を創刊する時だった。実はその時点で俳人の知り合いが(久留島元さんと中山奈々さんなど数名を除き)ほとんどおらず、雑誌の内容について相談していた久留島さんに「それならいい人がいます」と紹介していただいたのだった。〆切の時に、送られてきた岡田さんの連作を見てびっくりした。もちろんそれまでも俳句は好きだしBL俳句も好きだったが、こんなことが、こんな筆致で、他人に衝撃を与えるレベルで詠めるのかと思った。俳人が作るBL俳句はこんなに凄いのか、それなら俳句をもっともっとちゃんと勉強してもっと上手くなってBL俳句を作りたいと思った。

 それ以来、句集や連作が発表されたものを追いかけるようにして読んでいるが、岡田さんの句は、新しいものが発表されるたびにどんどん変化して研ぎ澄まされていくように感じる。別の視点を理解してインストールしてアップデートするまでの時間が多分、早いのだ。第一句集と第三句集は文体がもはやかなり違う。そんなに出版された期間が空いているわけではない、第三句集の「記憶沼」と今回の「光聴」も明らかに異なる。記憶沼に「虚」の句が多く、過去や内面に潜るような構成だったのに対して、光聴はより「実」具体に寄り、かつ表現の精密さを増しているように思う。

はくれんを夢のごとくに穢のおよぶ

って、この上5の「を」、やばくないですか??? いやもう、私なら「に」もしくは攻めても「へ」とかにしちゃう。でもそれだと、この一面のはくれんにざあっと夢のように穢れが来た感じが格好良く出ないんだよ、だから絶対ここは「を」がいい。

空に日の移るを怖れ石鹼玉

この感覚よ。いや、だって空に太陽が動いていくのって、ごく普通じゃん?でもこの作中主体はそれが怖いんですよ。日が動いていくことが。その過敏すぎる感覚と、石鹸玉の表面のあの虹色のギラギラ感、それが陽の当たり方によって微妙に変化していくことがリンクして、すごい不安感を与えてくる。

疎に椿咲かせて暗き木なりけり

疎に椿、っていう言い方をまずできなくてすごいなと思うわけですけど、まあ木にいくつかだけ椿が咲いていて、ぱっと一度見るとその椿の明るい色彩だけが目に入る。しかし全体を見るとじつは椿の葉はかなり暗い色で、椿という木そのものは暗いことに気づくだろう。だからコントラストで花が浮き上がるように、木は沈み込むように見えるのだ。

本当は全句このようにして延々と喋り続けたいのですが(実際最近20句くらい友達に喋り続けた)、近日句集の読書会もあるということで、この辺りにしておきます。

それではまた、読書会でお会いしましょう。あなたの鑑賞も聞きたいです…!

https://twitter.com/kocho_read/status/1375016065462198279


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