杉田水脈さん。この国の「生産性」を下げた自民党は批判しないんですか?

自民党所属の杉田水脈議員の発言が話題になっています。
彼女は「LGBTの人は生産性がない」だから「税金を使ってLGBTを支援するのはおかしい」という発言をテレビや週刊誌などでしてしまい、それに対しLGBTやその支援団体の人達をはじめ様々な人からの批判を浴びています。
確かに、LGBTに対する支援や関連する啓発事業に税金が投入されており、もしもその額が大きく偏っているとすればそれは逆に公平性を欠くことになってしまうので、その支出を見直そうというのならばわからなくはありません。
しかし「生産性がない」ことを理由に支援を打ち切るべきだというのは暴論であり、発言全体の主意を曲げなくともこの部分だけは誤りであったとして訂正し謝罪すべきだったのではないかと思います。
しかしどうやらそういう動きもないようなので、杉田議員にとってこの「生産性」とやらは非常に重要なものなのだろうと思います。

私自身は、子供を生むことを「生産性」と表現し、その「生産性」が高いことがよいことで「生産性」がないことがわるいことだという考え自体どうかと思うのですが、しかしそれはそれとして一つの考え方として尊重しようと思います。世の中にはそういう考え方もあるのだと、そういう考え方をする国会議員もいるのだと、そのこと自体はよしとしましょう。
なればこそ、ではこの国の「生産性」を著しく下げた存在に批判を行わないのはどうしてなのだろうかと疑問が残ります。

日本の「生産性」を下げた戦犯は誰なのか?

ご存知のように、現在の日本では超少子化が進行中です。出生率が著しく低下し、子供の数がどんどん減り続け、社会保障制度の維持や労働人口の確保にも悪影響が出るであろうと懸念されるほど、子供の数が物凄い勢いで減り続けています。つまり、日本の「生産性」は著しく下がっているのです。

この画像を見ても一目瞭然です。若い世代ほど人口が減り続けています。
この原因は一体なんなのでしょうか?
少子化は先進国共通の病だとも言われます。国土の都市化が原因であるとも言われます。あるいは話題になっているLGBTの増加がこの少子化の主な原因なのでしょうか?

日本の少子化の特徴

ここに面白いデータがあります。まずはこれを見てください。

これは、30代~40代の男性について、年収階層ごとにその子供あり率を集計し、それを国ごとに比較できるように並べたものです。
黄色くハイライトされたのが日本の数値です。他国の数値とは大きくことなっていることがわかると思います。

少子化は先進国共通の病だと言われます。ライフスタイルの変化や多様化によって先進国には結婚を望まない人が増えていきそれが少子化に結びつくという考えです。しかしそういった国民のマインドの変化による少子化ならば年収階層とは関係なく数値として現れてくるはずです。
また、国土の都市化が少子化の原因であるという考えがあります。少子化が進展する以前から、都市部は出生率が低く農村等の田舎では出生率が高い傾向にありました。近代化以降国内に都市部が増え、あるいは都市流入人口が増えるなどして全国民における都市部居住者の割合が増えることで出生率が低下するというものです。この場合であれば、都市部の方が田舎よりも平均年収が高いので、年収階層においては高い層の方が子供あり率が低くなるはずです。
イギリスとスペインの数値を見てみましょう。どの年収階層においても子供あり率は60%台後半がほとんどであり、フラットな形をしています。これらの国においては、おそらく上記の二要因が強く少子化に影響しているため、年収階層による差があまり現れないのだと考えられます。
しかし日本は違います。年収階層による子供あり率の変化は突出して大きく、下位25%における子供あり率32.7%という数値は表中25ヵ国のどの年収階層においても見当たらない異常に低い数字です。
つまり日本は、低所得であることが子供がいないことに直結する国であると言えます。
先進国に共通する国民のマインドの変化とか、都市化による影響よりも、年収の差が大きく少子化と関係しているのです。

低所得化に舵を切った日本政府

2003年に労働者派遣法が改定され、それまで労働現場が限られていた派遣労働者の働き先が大幅に緩和されました。これにより、今では日本は世界でも一番人材派遣会社の数が多い国になってしまいました。



この急速で急激な派遣労働の拡大の影響を受けたのは、好景気に就職しすでに正社員となっていて、正社員はクビを切りにくいという日本の会社組織の体質によって地位を温存されたバブル世代以上の中高年ではなく、当時若者であった今の30代40代の世代でした。
派遣労働者は雇用の安定性に乏しく、また日本では派遣労働者は正社員よりも低賃金であることが多いため、多くの人間が貧困に喘ぐことになりました。
さらに、日本は先進国の中でも低所得者層への支援が非常に少ない国として知られています。生活保護の支給状況だけを見てもそのことは明らかです。


このようにして、日本の低い年収階層において子供を育てることが困難なほど生活が破綻した世帯が増加したことがわかります。

本当は解決が容易だった日本の少子化

もしも少子化がイギリスやスペインのような状況だったらその解決は困難だったでしょう。
つまり、イギリスやスペインのように年収階層による子供あり率があまり変わらないとなれば、低所得者層の生活を高所得者層のそれに近付けても出生率の伸びは期待できないからです。
残る課題は国民のマインドや都市化による影響でしょうが、これを解消するのは並々ならぬことでしょう。
しかし日本の状況は違いました。低所得者層と高所得者層の子供あり率に大きな差があるので、低所得者層の生活を高所得者層に近付ける努力をすればそれだけ出生率を伸ばすことができる。そういう余地が残されていました。
なにも低所得者に天国のような暮らしを用意しろという話ではありません。日本の最低賃金は先進国の中で低過ぎる程の最低水準にあったので、これを諸外国並にするだけでよかったのです。また低所得者層への生活保障を諸外国並に実施する。これだけでもよかったのです。

しかし日本政府はそういった方針を取りませんでした。最低賃金は先進国中最低水準のままであり、低所得者への生活保障も拡充しませんでした。
もしも諸外国並の水準に引き上げていたら、少子化自体は先進国病として避けることはできなくても、今のような超少子化に陥ることはなかったと考えられます。

つまり、日本の「生産性」を下げた戦犯は誰なのか?

失われた30年とも言われる長期不況の中、少子化への処方箋が見えているにも関わらず日本政府はその対策を行いませんでした。
その間一番長く政権与党であり続け、一番多く行政の長である内閣総理大臣を輩出してきたのは自民党でした。
その自民党に、少子化を放置し超少子化を招いてしまった国家運営失敗の責任はないのでしょうか?
ここまで日本の「生産性」を下げてしまった責任はないのでしょうか?

杉田水脈さんに言いたい。
あなたは何故自民党を批判しないのか?

LGBTを「生産性がない」として支援する必要なしとした杉田議員は、では同様に「生産性」を下げた自民党を批判すべきでしょう。
「生産性」を下げた自民党に、税金から政党交付金が支払われるのはおかしいと、そう同じように批判をすべきだ。
そうしなければ、LGBTは「生産性がない」と言ったのは単に考えなしに相手の悪い部分を言ってやろうとしたバカな行動だったことになってしまうし、あるいはダブルスタンダードの二枚舌ということになってしまう。
そうでないならば、一刻も早く自民党を批判するべきだ。そして、そんな党に所属していることも今すぐ辞めるべきである。
杉田議員がバカか二枚舌かあるいはそうでないのか、これからの行動から判断したいと思います。

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