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第一巻第十二話 パリークシットの誕生

第一巻第十二話 パリークシットの誕生

ー 聖仙シャウナカは言った ー
アビマニュ(アルジュナの戦死した息子)の妻ウッタラーの胎児は、アシュワッターマンが放ったブラフマーストラで滅ぼされたが、主によって蘇生した。聖シュカから神理を授かったあの偉大な人物は、どのように生まれ、何を成し遂げ、どのように死を迎え、その後どんな運命を辿ったのか、私は知りたい。

ー 吟誦者ウグラシュラヴァスは続けた ー
クリシュナの御足へ奉仕したことで、ユディシュティラ王は楽しみから完全に解放された。彼は父のように国民を守り、彼らを満足させた。

ユディシュティラは莫大な富を蓄え、祭祀を行い最高の地位を得た。妻ドラウパディーや兄弟たちは彼に敬意をもって仕えた。彼の統治はジャンブー・ドウィーパ(地球を象徴する大陸)から全地球に広がり、名声は天にまで届いたが、彼自身に喜びはなかった。

パリークシットが母の胎内でブラフマーストラに焼かれた時、親指ほどの大きさで、浅黒い肌に黄色の衣、金の冠を纏う光輝く存在を見た。それはアチュタ(不変の者,ヴィシュヌやクリシュナを指す神聖な称号)、クリシュナだった。四本の腕に純金の宝飾をつけ、赤い眼で輝く槌矛を回しながら胎児の周りを回り、ブラフマーストラの火を消した。胎児は一体誰なのかと不思議に思ったが、ダルマの守護者である主は、十ヶ月の胎児が見守る中、静かに消えていった。

東の地平線に吉祥な星が昇った時、パーンドゥ一族の血を継いだ壮健な子どもが生まれてきた。パリークシットの誕生した神性な時間にブラーフマナたちは喜び言った。「ああ、神の意によって途絶えようとした血は全能のヴィシュヌ(クリシュナ)によって守られたのです。この子はヴィシュヌラータ(ヴィシュヌによって救われた者)の名で知られるでしょう。」

ユディシュティラ王は訊ねた。「この子は一族に生まれた王仙たちと同じく、素晴らしい名声を得ることができるでしょうか?」

ブラーフマナたちは答えた。「あなたの孫は、ヴァイヴァスワタ・マヌ(大洪水の際船に乗り人類の始祖となった)の長子イクシュワーク(太陽系王朝の創始者)のように国を守り、ラーマのようにブラーフマナに帰依し、自分の言葉に忠実な者となるでしょう。ウシーナラのシビ王のように困窮者を救い、バラタ(インドがバラタと呼ばれる由来となった王)のように祭祀者と国民の名声を高めるでしょう。聖仙シュカの教えでアートマンを悟り、ガンガーの岸辺で肉体を捨て、あらゆる恐怖を超越するでしょう」と、占星術に通じた彼らはユディシュティラ王に告げた。

この子こそ、後に「パリークシット(調べる者)」として知られる人物である。彼は母の胎内で見た主の姿を忘れず、人々の中にその姿を探し続けた。その後、パリークシット王子は、祖父母の愛情に包まれて成長した。

ユディシュティラ王は、親族との戦争を償うため馬供儀(アシュヴァメーダ)を行い、主を喜ばせようと決意した。しかし財源がなく困り果てると、弟たちはクリシュナの指示で北方の地に眠る莫大な富を持ち帰った(第九巻第二話)。罪を恐れる王は、三度の馬供儀を行い主を満足させた。主は友人や親族を喜ばせるため数ヶ月共に過ごし、その後、ウッダヴァやサーティヤキらとともにドワーラカーへ帰った。

※※※
物語の中で時々登場する「アシュヴァメーダ(馬供儀)」、ちょっと気になりませんか?というわけで、調べてみました。この儀式、実は古代インドのスーパーVIPな王様たちが、自分の権力と繁栄をアピールするための一大イベントなんです。でも、やり方がちょっと変わってて、選ばれた馬に護衛をつけて、なんと一年間放牧するんです。馬がパカラッパカラッと駆け抜けたり、のんびりテクテク歩いたりするたびに、そこが「王の領土である」と宣言される仕組みなんですね。なんともザックリしたルールで、「ここは俺のものだー!」と言えるのも、相当な軍事力と度胸がないと無理ってもんです。もし、これに文句があるなら? ええ、馬の進路を妨害するか、力ずくで立ちはだかるしかありません。ということは二、三人の護衛ではないということ。物凄いお金が掛かるんでしょうね。
馬が無事に帰ってくると、今度は神様へのお供えとして馬を捧げるんです。これで、王様はそのパワーと徳を神々に認めてもらい、王国の繁栄と平和をゲットするという流れ。つまり、王様のステータスもグイっとアップ!これ、古代インドでは超重要な儀式だったわけです。いやー、王様って大変ですね。

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