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ピアッシングしてきました。

還暦を優に過ぎてピアッシングをしてきました。耳にピアスの穴がないところに初めてピアスをつけることを「ピアッシング」と呼ぶそうです。
二週間前にふと思い立ち、どこでピアスを開けるべきかネットで調べました。クリニックで開けるのは衛生上は文句なしですが、美的センスや文化的背景からのピアッシングには何だか不安を感じました。もしかすると医師ではなく看護師さんが開けるかもしれないという懸念もふっきれません。そこで、ボディーピアススタジオを訪ねてみることにしました。

そこは完全予約制の静かなお店でした。丁寧な説明を受けた後、施術室に通されました。緊張しないように「気になること、何でも質問して下さい」と言われました。穴を開けてくれるその人には、どこかで見たことがあるような既視感がありました。
あぁ、ナルトに出てくる暁の長門だ。息子が昔ハマっていた漫画「NARUTO」のキャラクターです。長門は身体中にボルトや金属パイプを貫通させていましたが、目の前で穴開けニードルを手にする彼もそんな雰囲気でした。これかもしれない、私が望んでいた安心感。

彼はマーカーで印をつけ、「鏡で見て確認して下さい」と促しました。覗き込んで見ると、確かにバランスは良いようです。私の耳は左右がアンバランスで、右側が少し後方の上についているうえに耳たぶも尖っています。後でじっくり考えてみたら、おそらく右耳を下にして寝る癖のせいで、少し上の奥まった位置に、潰された耳たぶは裏側に反ってしまったのでしょう。
それでも彼は、私の顔を正面から見たときにピアスがバランスよく見えることに集中していました。好奇心から「この位置には意味がありますか?」と聞くと、彼は「初めてのホールとしてはここが最適です」と説明してくれました。彼は丁寧にその理論を解説してくれました。「なるほど、理解しました。ではお任せします」と、診察台に腰掛けて目を閉じました。

「ちょっと痛かったですよね?気分は悪くありませんか?」と尋ねられ、「ええ、少し痛かったです。これじゃあ、軟骨に開けるのはものすごく痛いでしょうね」と答えると、「いえ、軟骨の方が痛さを感じませんよ」と彼は言いました。そんな会話をしながら、無事に両耳のピアッシングを終えました。
どうやら私の耳たぶが厚く弾力があるため、ニードルをぶれずに貫通させるのに力を込めたとのことで、心配になったようです。

ピアッシングは穴を開けて終わりではなく、外皮ができて穴が塞がらなくなることで完成だそうです。そのためには二、三ヶ月を要します。自分好みのピアスを付けられるのは、秋が深まった頃でしょう。それまでは楽しみに待ちます。

せっかくピアッシングしたので、ずっと気になっていた映画『蛇にピアス』(2008年)をNetflixで観ました。鑑賞後、その映画は心に深く突き刺さり、ふとした瞬間にも残像が去来します。今期の大河ドラマの主役を務めている女優の初主演作で、当時センセーショナルに騒がれていた記憶が蘇りました。今やトップ俳優と言っても過言ではない俳優二人がちらっと出演しており、渋谷センター街でボコられる演出に驚きました。監督が蜷川幸雄であることを知り、大いに納得しました。要するに友情出演やリスペクト出演の一種でしょうか。
そして、Charaの気だるく甘い歌声が流れるエンドロールに、今回訪れたピアススタジオのオーナーらしき方が Piercer としてクレジットされていました。なるほど…。

しかし、正直に言うと、この映画を観ていたら、あの日ピアッシングには行かなかったかもしれません。私の気分とはベクトルが違うように感じたからです。
そして、自分に問いかけました。
「ねぇ、ピアッシングすることで、自分を再認識しようとしたり、作り変えたりしたかったの?」

「しかも、還暦を過ぎてから?」



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