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偽りの果実と真実の悟り

第四話 アートマデーヴァの救い

ナーラダ仙はサナカ兄弟に尋ねた。「バーガヴァタを七日間聴講することで、どのような人々が心の浄化を得られるのでしょうか?」サナカ兄弟は答えた。「罪深い者、不道徳な者、悪人、怒りや意地悪に満ちた者、激情に身を任せる者、彼らの心も浄化され、救いを得ることができる。これから語る物語を聞けば、全ての罪が消えるだろう。」

サナカ兄弟は物語を語り始めた。
ある美しい町に、ヴェーダに精通したブラーフマナ(ヴェーダの知識を持つ最上位階級)のアートマデーヴァがいた。彼は若く美しい妻ドゥンドゥリーと裕福に暮らしていたが、子どもがいないことに悩んでいた。悲しみに暮れた彼は、森へ行きサンニヤーシー(隠棲者)に出会った。
アートマデーヴァは自分の悩みを打ち明けた。サンニヤーシーは言った。「過去のカルマにより、七生の間、息子は生まれない。家庭を持つ希望を捨てることが幸福となる。」しかし、アートマデーヴァは言った。「子どもが得られないなら、この世の楽しみは何もない!」
サンニヤーシーは特別な果物を与え、こう言った。「妻が一年間、真実と清浄、親切な心で施しをし、一日一食の粗末な食事で暮らすならば、素晴らしい子どもを産むだろう。」

アートマデーヴァは森での話を妻にし、果物を渡した。しかし、妻は子どもを産むことを嫌い、果物を食べるふりをした。彼女の姉が訪れ、この話を聞くと、「私に子どもができたら、お金と引き換えにあげるから、あなたは妊娠したふりをしなさい。その果物は牛に食べさせなさい。」と提案した。

やがて、姉に子どもが生まれ、ドゥンドゥリーはその子どもをもらった。アートマデーヴァは大いに喜び、その子をドゥンドゥカーリーと名付けた。また、果物を食べた牛は美しい子どもを産んだ。彼はその子をゴーカルナと名付けた。

二人の子どもは成長し、ゴーカルナはよく学び賢く育った。一方、ドゥンドゥカーリーは性根が悪く、盗みや放火、人を殺すことを楽しむようになっていた。彼は父親の財産を使い果たし、両親を殴って家を出て行ってしまった。

全財産を失ったアートマデーヴァは嘆いた。「妻は子どもを産まない方が良かった。悪い子どもは苦しみの原因になるだけだ。」
そこへゴーカルナがやって来て言った。「お父さん、この世には何の真実もなく、息子も財産も自分のものではありません。それに執着すれば苦しむだけです。幸福は、感官(聴覚,触覚,視覚,味覚,嗅覚)の楽しみを捨て隠棲生活をする人のものです。」

ゴーカルナは続けて言った。「この身体を自分だと思わず、妻や息子を自分のものと思わず、この世は一時的なものと心し、離欲の喜びを味わい、神へのバクティ(献身)を確立してください。この世の義務を全て放棄し、聖者に仕え、感官の楽しみを追わないようにしましょう。他人の欠点や長所を批判せず、主の物語を聞く喜びを味わってください。」

アートマデーヴァは息子の助言に従い、森へ隠棲した。彼は昼も夜も主に仕え、シュリーマド・バーガヴァタの第十巻を読んだ。
その結果、彼はクリシュナに至ることができた。

※※※
アートマデーヴァが手に入れたその果実は、彼のヴェーダの学びと人々への施し、そして善行に対する恩寵だったと思うんだけど。
で、ふと自分を振り返ってみると…うーん、仕事には全力投球だったけど、家事や育児は「まぁいいか」って感じで、周りの人への親切も「今日は忙しいからまた今度ね」状態。
これじゃあ、甘い果実どころか、枯れた枝しかもらえないかもしれない。でも、誰かが「あれ?この人も頑張ってるじゃん」って気づいてくれたら、酸っぱいレモンくらいはもらえるかもね。

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