労働観をアップデートせよ 〜無料の牧草〜
今、Twitterで #先生しぬかも
というタグが賛否を生みながら話題になっています。
個人的な思いはこんな感じです。
ファクト「牧草の正体は?」
「コモンズの悲劇」という言葉をご存知でしょうか。
僕は大学時代、法学部でありながら、なぜか環境問題に関する研究(というほどでもない)をしていて、環境関係の授業ばかり受けていました。当時から環境問題に関してよく使われるワードに「コモンズの悲劇」というものがありました。
コモンズとは共用物を意味します。要するに、誰もが自由に使える状態のものを指します。さて、どんな悲劇が起こるのでしょうか。
さて、突然ですが、あなたは羊飼いだとします。
多くの羊ちゃん達をメェメェと育てて生計を立てているあなたにとって、最も重要なモノは「牧草」です。
その牧草は、それぞれの羊飼い達が所有している牧草地のものを基本的に与えます。しかし、牧草はくり返し生えてくるとは言えど、有限な資源なので、自分が所有する牧草地の広さと、保有する羊の数を適正に保つことに力を注がなければなりません。
ある時、羊飼い達の間でこんな噂がまことしやかに囁かれるように。
「何かあそこの牧草地は誰でも無料で使えるらしいぜ」
ここで言う「誰でも無料で使える牧草地」こそが、コモンズなのです。
さあ、これからどんなことが起こるのでしょうか。
鋭い方はもうお気づきでしょうが、みんなこぞって羊達を引き連れ、そこのコモンズ牧草地へと向かうでしょう。だって、自分の牧草地の草を減らさずにキープしつつ、羊達のお腹を満たすことができるのですから。
案の定、無料で振る舞われたコモンズ牧草地は、多数の羊飼いに引き連れられた羊の大群に食い荒らされ、あっという間にハゲチョビンになってしまいました。
・・・この具体、学校に置き換えてみましょう。
牧草地は一体何にあたるのか。
そう、給特法を根拠とする労働力のサブスクリプションサービスを好評実施中の公立学校の教員なのです。僕らは無料の草とみなされているのです。
アクション「リフューズをしよう」
では、牧草であることを自覚した上で、僕たちが取るべきアクション(行動)は何なのでしょうか。
それはリフューズ(拒否)です。
外部団体は、僕たちが無料で振る舞われる牧草であることをいいことに、本来コストがかかるはずの業務を平気で持ちかけてきます。
名指して申し訳ないですが、漢検協会は酷い。
本来であればアルバイトを雇って、有償ですべき業務を、学校に委託することで実質的に無償で請け負っているわけです。(多少の協力金は出るが、それは学校における担当者に渡るわけでない)
しかも、牧草は文句を言わないと決めつけられているのか、その事務関係の運用システムが手書きFAXという平安時代レベルだったり、現金の扱いが恐ろしく煩雑だったりと本当に酷い状態。受験者全員の氏名や受験級や金額等を手書きで記入するなんて、教育の生産性を謳う僕にとっては蕁麻疹が出るレベルのことでした。ということで、その方法をリフューズ。こちらの自作のエクセルデータで送信しました。
この他にも、夏休みの作品展、書き初め展、貯金箱コンクールと、無料の牧草頼みの事業展開をしている団体はたくさんあります。
もし、僕に決裁権があるなら全部をリフューズして、学校を介さず子どもと団体の直接のやりとりへの移行を進めたいところです。Tシャツプレゼントの応募とかも個人と企業で直接やり取りしますよね。それと同じ仕組みです。
と思っていたら奈良県教育委員会が率先してそれをやっていたのです!
このように、現場レベルと自治体レベルでリフューズをしていくことが、僕たちの労働環境をよくしていくための第一歩だと考えます。
そのためには、僕たちが労働観をアップデートし、労働力という牧草を「タダで食わせてやるかこのやろう」という意識を持つことが大切なのではないでしょうか。
例年踏襲という思考停止のもと、羊たちにはむはむされるループから抜け出しましょう。