けさのまにえふしふ88

志賀(しか)の海人(あま)の火気(けぶり)焼き立てて焼く塩の辛き恋をもわれはするかも(11-2742石川君子)

 壮鹿海部乃 火氣焼立而 燎塩乃 辛戀毛 吾為鴨

けさのまにえふ。「志賀の海人が煙を立てて焼く塩のように、辛い恋をも私はすることよ」

志賀は九州の志賀島。そこでは海人が海藻を焼いて塩づくりをしている。で、ここから恋につなげるのに塩の「味覚」を使うのは、新しいよね(1000年以上前だよ)。

1982年に糸井重里が「おいしい生活」というコピーを考える前に、「塩辛き恋」というフレーズがあったわけだ。まあ、恋のにがさ、みたいな言葉も早くからあったんだろうけどね。

巻11のこのあたりの歌をみてると、上の句で叙景、下の句で叙情、という形式が確立していることがみてとれる。同時に、57/57/7という五七調の2フレーズ+リフレインが、575/77という七五調2フレーズに移行しているようだ。

この移行の一番の理由は、情報量だろう。詰め込みたいことが増えてきた、または、歌が唄われるものでなく、読みものになってきた、ということかもしれない。 

ところで、塩辛い恋ってどんなのだろう。今で言うしょっぺー恋じゃないよね。それ失恋みたいな意味だし。あと"恋「をも」する「かも」"をも、かも、って、あれ、これ、実際に塩の味がする海人(海女)を口説いてねーだろーな。

照屋へんかん。

天花粉(てんかふ)の甘い匂いの恋人よさらさらさらばたぶんきみから(照屋conv.) 

(20161202)

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