けさのまにえふしふ85

馬の音のとどともすれば松陰に出でてそ見つるけだし君かと(11-2653)

 馬音之 跡杼登毛為者 松蔭尓 出曽見鶴 若君香跡

けさのまにえふ。「馬の音がどんどんと響くと、松陰に出ては見た。あるいはあなたかと思って」

シンプルでいい歌やね。現代においては連絡なく会うことはサプライズとされて、うれしいか引くかのリスクをともなう行為なので、ぱっと読むと、一度関係が切れてからの歌と読めなくもない。

君を待っていても来ない歌としては、額田王の「すだれ動かし秋の風吹く」が1000年越しのキラーフレーズだが、その歌からもおそらくは100年は経っており、松陰に見にいくあたり、人間的になっている感じがする。

とどは馬の音のオノマトペで、とどろくは擬音の動詞化したものだろう。「馬の音すれば」でも意味としては伝わるが、「とどとも」という擬音が、リアリティを演出して、歌としての工夫がみられる。

さいごの「けだし君かと」は、仮名が美しい。「若君香跡」ここには、詩としての工夫がある。

照屋へんかん。

待ちすぎて樹木になったあの人の水をあげても私ではない(照屋conv.)

(20161129)


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