けさのまにえふしふ86
かくばかり恋ひつつあらずは朝に日(け)に妹(いも)が履(ふ)むらむ地(つち)にあらましを(11-2693)
如是許 戀乍不有者 朝尓日尓 妹之将履 地尓有申尾
けさのまにえふ。「これほど恋に苦しみ続けていないで、朝となく昼となくいつも妻が踏む土ならよいものを」
そうか、万葉時代にも変態はいたんやなあ、と思ってしまいがちな歌だけど、それは現代が変態な時代の読みなんやで! たぶん!(たぶんかい)
この歌、わりとテンプレになっていて、上の句(こんなに恋に苦しんでいないで、いっそ)から、どう歌うか、みたいなゲーム性がある。家持さんなんかは「木石になりたい」と言ったし、坂上いらつめちゃんは「鴨になりたい」と詠んだりしてる。
で、この歌の「履むらむ地」が何なのかは、よく分からない。どこの、どういう行為なのだろう。たぶん、当時は、書くまでもないくらい当たり前のことだったのだろう。まさか、毎日外に女性が出て、その玄関だったりしまい。家族全員が踏むぜ。
まったく手がかりがないが、おそらく何かの儀式だったか。神事では「足踏み」という行為は、悪鬼を鎮めたり、結界を張る意味を持つ。鎮められる悪鬼になりたいのか。また、そういう場所を、娘には与えられるものなのか。分からないのだ。
まさか、本当に無生物に変化(へんげ)して踏まれてたい歌じゃないでしょうね⋯⋯。
照屋へんかん。
よわよわしい森羅万象でごめん、きみが泣くとき雨も降らせぬ(照屋conv.)
(20161130)
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