けさのまにえふしふ89
神名火(かむなび)の浅小竹原(あさじのはら)のうるはしみわが思ふ君が声の著(しる)けく
神南備能 淺小竹原乃 美 妾思公之 聲之知家口
けさのまにえふ。「神名火山のほとりの浅小竹原が美しいように、美しいと思うあなたの声がはっきりと。」
これも寄物陳思だけど、というより序詞を駆使したテクニカルな歌。
ふつう、序詞は、「刈る萱(かや)の束(つか)の間」みたいに、「つか」の音を次の言葉につなげる「音変換」を行なうのだが、ここでは、「うるはしみ」を同じ意味で使いながら「視覚→聴覚」と「感変換」(造語)を行なっている。
そういえば、前回のまにえふも、塩からい味覚から、塩からい恋と、恋を味覚形容化した歌だった。
この歌は、万葉仮名で読むと、その転換の鮮やかさがはっきりわかる。
真ん中の「美」一字で、ぐるっと転換しててかっこいいよね。
あと、誰が訳したのかわからないが、「美」を「うるはしみ」はいいね。うるはしく、うるはしきにしなかったのはなぜだろう。
あー、これ、いわゆるカクテルパーティー効果をうたった歌かもしれないな。
照屋へんかん。
日本海の冬の海鳴り、抱きながらまだわだつみに還らせはせぬ(照屋conv.)
(20161205)
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