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いつまでも あると思うな

ここ数年、全国各地でバス路線の廃止や休止が相次いでいます。

多くは利用者が少なく赤字続きになっていた路線や、バス事業者がバスの運行に必要な「免許」を維持するために運行していた「免許維持路線」なのですが、中には戦前から続いていた歴史の長いバス路線も含まれていたりして、少子高齢化と乗務員不足の荒波がバス業界を容赦なく襲っていることを実感させられます。

先日、Twitterを眺めていたらこんなツイートを見つけました。

埼玉県飯能市を走る国際興業バスの山間部路線が再編になるというツイート。この路線再編、実はバスを運行する国際興業のホームページには全く出ていません。ですから、私もこのツイートを見るまでその話を全く知る由もなく…

ということで、8月のお盆前の日曜日に行ってきました。

山間部と名栗村へのバスが発着する飯能駅

乗ってきたのはツイートでも紹介されていた「中藤・中沢線」。

この路線に乗るのは初めてではなく、2005年以来およそ17年ぶり。今冬に行こうと思っていたのですが、再編で行きづらくなるので行けるうちにということで行ってきました。

飯能~中沢と間野黒指(まのくろざす)が再編対象

お昼の便に駅から乗ったのは地元住民が数人程度、近隣の東飯能駅から同業者が乗ってきたくらいで無論ガラガラ。

飯能駅からおよそ40分ほどで終点の中沢へ。

8月末で大型バスが朝しか来なくなる中沢

復路の便は途中で沿線住民を拾っていきながら駅に向かい、利用者は20人近くいましたが、やはり不採算であることには変わりないようです。

国際興業の飯能地区でのバス事業は長い歴史があるようで、前身のバス事業者での運営から数えて今年で100年近くになるそうです。
国際興業は東京・八重洲に本社を構え、主要営業エリアは東京23区北部と埼玉の「埼京地区」と呼ばれる京浜東北線・埼京線沿線のエリア。飯能地区はいわゆる「飛び地」になるエリアです。

平成23年。国際興業は不採算を理由に飯能地区からの撤退を市に申し出たそうです。

市の施設で開催されていた企画展にて

それに対し飯能市は国際興業が市から撤退してしまうと公共交通機関が消滅してしまうということで、話し合いを続けて補助金の拡充などの維持策を提示し、国際興業は平成26年までの運営継続を決めたそうです。

国際興業が提示した運営継続期限を10年経過した今年、ついに山間部に再編の手が入ります。

飯能市山間部の路線再編はどうやら決定事項のようで、いわゆる路線バスが山間部へ乗り入れるのはこの8月までということになりそうです。

山間部の路線再編を知らせるリーフレット

再編の波は山間部の路線バスだけでなく、都市部を走る路線バスにも容赦なく襲ってきます。

東京・足立区にある東武バスの「花畑営業所」

9月末で閉所となる花畑営業所

東武鉄道直営時代は「花畑出張所」という名称で竹の塚にある足立営業所の補助的役割を担う拠点として区内の公共交通を支えていたこの営業所も9月末でその歴史に幕を下ろします。

営業所の入口に掲示された閉所のお知らせ

足立営業事務所への統合についてはその他にも理由があるとは思うのですが、近年バス営業所の統合集約があちこちで行われているので採算悪化に伴う拠点の整理というのもありそうです。

飯能市山間部にしても花畑車庫にしても「無くなることはないだろう」と甘く考えているとある日突然「廃止」の告知が…

近年、バス業界を取り巻く環境は非常に厳しいものがあります。バス事業者はバスを運行して地域に貢献するだけでなく、バスを運行することで利用者がその対価として支払う運賃で会社を経営しています。利用者が減って赤字経営になるとバス路線の維持だけでなく会社の経営も厳しくなります。
バス会社が行うバス路線の運行はボランティアではなく商売として行っていますから成り立たなければ止めるしか方策はありません。

「いつまでも あると思うな 路線バス」

自分の街のバス路線がある日突然、廃止になってしまう。こんなことが皆さんの身にも十分起こりえることなんです。

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