Grade 9: Spring Break - The “end”
4月5日 水曜日
春休みももう翌日で最終日だった。
Sugarちゃんを含め、日本人のよく話す友達やIちゃんたちがそれぞれ不在の休みだったからすごくゆっくりと時間は流れて行ったに違いない。
この日の夜、めちゃくちゃ久しぶりにSugarちゃんがMSNにあがってきた。3月20日ぶりの会話だった。
「Sarryちゃーん おひさしぶりっ!」
元気にしてた?!Eくんとは会えてる?お話できてる?そんな感じの会話を交わした。
前もってたてる約束とかじゃなく、当日急に連絡が来ることが増えたかな。そう伝えるとSugarちゃんは心配してくれる。
すれ違いがあることを学年の差のせいにした。
この時、Sarryちゃんは大好きなんだよね?に対して「もうわからなくなっちゃった」って言ったらSugarちゃんは後押ししてくれただろうか。
Eくんなんて忘れて捨てちゃった方がいいよ、そんな雑に使う人を追いかける必要なんてないよ。って。
Sugarちゃんがいうには、「こないだ」Marioくん遊んでいる時にEくんからメッセージが届いたらしい。
「Sugarちゃんと今遊んでる」という内容を送ったのか、Eくんが「いーな らぶらぶで」と書いてあったらしい。
「だからSarryちゃんとはらぶらぶじゃないのかなってなったの」と言っていた。
きっときっと多感な時期だったからだとは思うけど、この頃の私はたぶん心が荒んでいて、Eくんに対して「いったいこの人は何を言ってるんだろう」という感情しかなかったと思う。
私と会うと不機嫌そうなだけなのに、何を求めているんだろう、と。
だけどMarioくんにこれを言うってことは、もしかしたらEくんも不安だったのかなと思う。
この一年後にリリースされる曲に答えがあった。
Taylor Swiftも歌っていたように、Eくんに必要とされるのが生きがいだったように思う。
そうではなくなっている(ように感じる)今、全ての関係からフェイドアウトしたいと思い始めてた。
Sugarちゃんが、あたしも同じ頃そうだったよーと共感してくれる。
ランチをみんなで食べてる時も、友達と喋ってる時も、どこか心は虚無でどうでも良くって、消えていなくなりたいとさえ思う。
だけど本当は構ってほしくて、誰かとは一緒にいたくて。
Sugarちゃんが全部そんな気持ちをわかってくれた。
Eくんに対するメールの返信だって冷たくなってしまってることを、Sugarちゃんはその裏に込められた気持ちだって分かってくれてた。
なのに、本当は連絡だって全然ないし、会えもしないし、これを付き合ってると言えるのかさえも分からないことを、Marioくんと順調なSugarちゃんには言えなかった。
4月6日 木曜日
春休み最終日。
Sugarちゃんと今日も今日とてMSNで話していた。
EくんのMSNのニックネームがまたしても意味深で、げんなりしていた。あるいは本心はまだ彼の心の中に自分がいるかもしれない可能性を信じて強気でいれたかもしれない。
“You don’t ask me to…”から“what an I saying is not this thing”と変えたEくんの名前は、その時の彼の英語力もあるけど、意味が全くわからなかった。
「君は僕に何も聞かない」
「僕が言いたいのはそういうことじゃない」
恐らくそういうことだったんだろうと思うけど、身に覚えはなかった。
もしこれが、事実だとしたらEくんは本当に私の出方を様子見してた可能性は高い。どう行動すべきかがわからなかったのはお互い様だったのかもしれない。
でも、Eくんの気持ちがどこにあるのかがわからなかった私は、これを聞いてまだEくんが私を好きな可能性を信じて、かなり久しぶりにEくんとしっかり話し合うことを思い立った。
ケジメをつけたかったのかもしれないし、少しでもEくんがまだ私のことを好きなのだとしたら、少しだけでもEくんの心の中の傷として残れるかもしれないと思ったのかもしれないし、 Eくんはなんだかんだ私をきっと好きじゃなくなくなることはないとまだ思ってたのかもしれない。
いやいやwそうじゃなくて、今のこの2人の関係について、どう思ってる?
「あーそういうことか」
悪い方向に変わってしまった自分のことを、なぜだか誇りに思っていそうな口ぶりだった。
Eくんは結局最初にゴタゴタが原因で別れてからというもの、その痛みを乗り越えることができていなくて、傷はまだ膿んでいて悪化していたにも関わらず蓋をしようとして更にじゅくじゅくになってたんだと思う。
お互いに絶対に、綺麗さっぱり離れたほうがいいのはわかってるくせに「相手が可哀想だから」とこの後に及んでも相手を「気遣う」振りをして答えを出せずにいた。
実際に、Eくんはこの次にこう釈明しかけた。
ここでEくんが飲み込んだ言葉は、きっとこうだ:
俺がなんで冷めちゃったか、考えたことある?
Sarryちゃんのせいで俺がこうなったんだから、Sarryちゃんが責任を持った行動を取るべきだったんだよ。
だけど、そんなこと言っちゃうとあまりにも身勝手すぎて、自分の弱さを認めるようで、きっと彼は飲み込んだ。
「これ以上言ったってもう終わったことや」そう思ったに違いないんだ。
そして彼なりの釈明を始める。
ついには助けてくれてたはずのIちゃんやSugarちゃんにまで矛先を向けるEくんに失望した。
私はこうなってもまだ、Eくんの決断を待っていた。今回よりを戻したのはEくんの受けた傷を癒せるものだと思っていたし、私が何か決めるとまた裏切ることになってEくんは傷を負うのだと思ったから。
だけど、EくんはEくんで、自分が悪者にならないように、そして私が後悔をしないように、私に決断を委ねた。
きっと彼に取っては「SarryちゃんがEをものすごく大好きでまた付き合いたいと願ってる」という話だと聞いていたのに、いざよりを戻すといつも怯えた表情で、不機嫌にも見え、会話もなく何一つ「好意」を感じないからがっかりしたんだろうな。
きっとこれがEくんの本音だったんでしょう?
かといって「女の子とかもうどうでもいい」と言われたからにはこっちだって改める気だってない。第一にこちらからするとEくんの態度だって大概だった。
「だってSarryちゃんがそんなだったから俺こんななっちゃったんじゃん」
遂にEくんは認めた。
きっと彼の目には、1月に起こった出来事で戦わずに諦めることを決めたのは私だったと、そう映ってたんだと思う。
私が戦わずにあっさりと降参したのはEくんだったと思っているように。
2人とも独りよがりで、自己中心的だ。
詰め寄る私
詰め寄られると逃げる彼
Eくんが呆れた結果、別れるという決断をだした。今回もまた、綺麗な別れじゃなかった。
きっと同じことを思っていたEくんが、次に言った言葉は実際に今でもはっきりと覚えてた。
がっかりすりとか、後悔するとかじゃなく、ただただ苛立った。
決断をした後も話が続く。
Eくんの「たまにはSarryちゃんが遊びに誘ってくれれば良かったのに」やっぱりこれが彼の本音だったんだろうと思う。
Sugarちゃんが察したことは当たってたんだと思う。
「今更何をいってんの?」そう思ってため息でしか返せなかった。
勝手に美化してるだけかもしれないけど、Eくんはいつだって私が落ち込んだ素振りを出すとそうやって励まそうとする。そんな嘘な優しさなんかいらなかった。
この時以上にEくんの「〜にゃー」がむかついたことはない。
実際EくんはSugarちゃんにこの会話があった頃「Sarryちゃん泣いてるかな」と聞いてきてたらしい。
「こんなんで泣くわけねーじゃんw」と思った。
こんな人のために泣いたら涙が勿体無い。って。
Eくんは私が泣いてると知ったら勝ち誇るんじゃないかな、今回は自分が傷つけたって喜ぶんじゃないかなって思ってた。可愛くないよね。
ねえ、Eくん。
君は一体どんな答えを求めていたの?
SugarちゃんとMarioくんみたいに別れてから仲良くなるカップルに憧れてた?それとも自分を悪者に仕立て上げられるのは避けたかった?私と付かず離れずの距離でずっと繋がりを持ちたかった?それとも、適当に言ってみただけ?
私は、今の今までの話の内容からしてそんな適当に遊びに誘われるの不快でしかなかったし、Eくんの人間性を疑ったよ。
いつも誠実で優しいEくんだと思ってたから、裏切られたとさえ思った。
それがEくんの目的だったのかな。
失望して欲しかったのかな、私がまた同じ人と傷つかないために。
最後の最後まで、私は捨て台詞をいってた。
思い描いてたことにならなくて、我儘にもむしゃくしゃした。
今回よりを戻したことについてまたIちゃんとSugarちゃんのせいにするEくんが本当に許せなかった。
自分は自分で相談したり、いろいろ話をしてたくせに手のひらを返すように2人を裏切ったこと、最低だと思った。
は?だった。
最初の時からずっと自分の意思ないんじゃん。すぐに人のせいにしてきてなんなのこの人?
Sugarちゃんと2人で、そんなのひどすぎるよ。と怒涛のチャットをしていた。
Eくんとの会話の終盤に言ってきたのはこれ。
どうやら、Eくんとばったし会うことがあったらしい。
「久しぶりに見たSarryちゃん」がきつい。
前回も休みの最終日、今回も同じ休みの最終日。
なんでいつも休みの日に限ってこうなるんだろうと私は嘆いてた。
あまりにも2人とも傷が癒えていなかった。
あまりにも2人ともお互いに理想をなすりつけていた。
時間が少し経って、少し冷静になった私はそう分析していた。
ある程度の期間を置いて、そして「前回の続きを始めよう」と思うのではなく「また新しい人と付き合った」気持ちで挑まないと上手く行かないんだろうな。そう結論を出した。
私たちは「従順」さと「優しさ」を互いに演じあってもらわないと成り立たない関係だったんだと。
Eくんとはこの件以降、学校でもMSNででも一切話さなくなった。Eくんのことを「ゲイ」と裏で呼び、あんな人だいっきらい。付き合ってたなんてきんもー!と笑いものにすることで自尊心を保った。
Sugarちゃんとは仲を深めた。特にこのことがきっかけで私の口調が完全にSugarちゃんに似る。
そして、私のメンタルは絶不調になる。誰にも知られたくなかったので誰かに助けを求めるわけでもない。
信じて必要として欲しかった人に手を離されたこと、「私のせいで」Eくんが「こうなってしまった」ことを一層責めた。
嫌われるためならなんだってしようと思った。
第一印象で好かれるのではなく、嫌われたかった。どうせ後で嫌われるなら、と。
アホな考えだったのかもしれないけど、純粋で無垢なSarryちゃん像を壊すことにした。そんなイメージを与えると中身を知った時に失望されてしまうかもしれないから。
長かったEくんとの思い出はいったんここでストップ。
無言の間、彼が何を思い何を誰に話して過ごしてきたのかはIちゃんもSugarちゃんもわからない。
いつか、機会があったら、Eくんとこの頃のことを覚えてるか聞いてみたい。
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