東方シンフォニックウィンドアンサンブル感想 〜宴は確かにここにあった〜

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・初めに
5/21に行われた『東方Symphonic Wind Ensemble』(東方シン)の感想です。語彙力不足なところは多々ありますが、ご了承ください。
(『』の部分は私が曲ごとに勝手に感じた印象(テーマ性)です。)


Pre-1.いつか見た夢、終わる夢
『夢という非日常の中にある無常』

ピアノとトロンボーン&ユーフォニアムで奏でられたプレコンサート最初の曲。

原曲の「東方萃夢想」は終始賑やかな曲なんですが、この曲は一味変わって凄く落ち着いています。「東方萃夢想(arrange version)」の中盤のパートのような静けさでしょうか。

途中でトロンボーン→ユーフォニアムに変わり迫力が上がりますがそのスタイルは変わりません。
2種類の楽器が生み出す無常かつ静寂な雰囲気が醸し出された、最初の最初にふさわしい演奏でした。

Pre-2.不思議な不思議な笛の集い
『不定期開催の付喪神の集会』

一般的な高音域の「フルート」から、お目にかかるのも珍しい低音域の「サブコントラバスフルート」など、様々な笛の音を組み合わせた8重奏。

陽気でどこか可愛げのある笛の合奏は、まるで笛の付喪神たちが夜中に集まってわちゃわちゃ騒いでいるような感覚でした。

原曲の複雑なメロディーもしっかりと拾っていましたね。特に、この曲のベースとなっている「不思議な不思議なお祓い棒」には、「いつものフレーズ」付近に印象的な高音パートがあるんですが、フルートによって力強く優美に演奏されていてたまらなかったですね。


【第一部】

1.マーチ「レイディアントトレジャー」
『夢中になれる宝探し』

 題名にもある通りマーチ、学校の吹奏楽部が演奏していそうな陽気なアレンジ。特に好きなポイントは序盤の「春の湊に」のパートですね。あのマーチの流れや力強さは本当に素晴らしかったです。楽しくお出かけしたくなってくる心地でした。

 コンサート開幕の音の迫力が自分の予想を大きく超えていて、ずっと驚きっぱなしでした。全体的な流れはシンプルながらもこの曲で「東方シン」の世界に完全に引き込まれましたね。


2.誰の物でない夜空 〜あの虹の向こうで
『満天の星空の元、ようやく始まる自由市場』

 希望全開の「あの賑やかな市場は今どこに」を中心とする独特なアレンジ。終始エモさ全振りです。

 最初はピアノや笛の小さい音から始まりますが段々と賑やかになっていきます。 ここの段々強くなっていく部分で使われているのが「待ちわびた逢魔が時」のパート。まるで市場開演前からどんどん期待が膨らんでいる様子が垣間見えます。

 原作で流れる「待ちわびた逢魔が時」も夕方〜夜の流れを楽しめる曲なので、盛り上がりにはすごくピッタリですね。

 そして開演を告げるかのような盛大なファンファーレが鳴り響き「市場」のパートが始まります。「市場」自体も流動性の高いアレンジとなっており、絶えず盛り上がりを見せる市場の様子を感じることが出来ました。

   最後の煌びやかなチャイムの音色はこの市場を星空が祝福しているようでした。まるで一連の物語のような曲でしたね。非常に感動しました。


3.イドルム・デウスの審判 〜偶像に世界を委ねて
『劇場版「東方鬼形獣」』


「#東方シン」の感想ツイートでも皆さんこの曲について言及している方は多かったですね。それほど完成度が高すぎです。これを第一部に持ってくるのは正気かと思いました。

 指揮者兼編曲担当のFDさん曰く「ハリウッド映画風」にしたかったそうで、その思いが見事に表現されていると思います。さながら映画のプロローグのように静かな曲調から始まり、曲が変わるにつれてどんどん奥へ奥へ進んでいくような感覚に陥られました。

 そして訪れる「セラミックの杖刀人」のパート。原曲の時点で既に溜めてから爆発力が高いサビを放つ曲ですから、オーケストラだとさらに大迫力。音圧をダイレクトに感じながらも、そのまま2周目に突入。1周目と同様溜めて溜めて溜めて溜めて…もっと溜めて溜めて溜めて…


 ドーーーーーーン
「偶像に世界を委ねて 〜Idoratrize World」


 この入りを聞いた瞬間、このコンサートに来て本当に良かったと感じました。
 「偶像に世界を委ねて」自体が人気の曲なので、どんなアレンジになるんだろうと期待していた東方ファンも私含めて多かったと思うんですが、あの入りは確実に我々の心を掌握していました。
 ここからの偶像も最高。立ち塞がる神との最終決戦を表すかのような荘厳さ、そして異変解決を試みる「人間」の主人公達と「人間の味方」である袿姫で戦うことになってしまったという切なさ、この二つの属性の両方を楽しむことが出来ました。


【第二部】
4.The Grimoire of Marisa
『イケイケのスピードスター』

ここまではオーケストラ感満載だったのに対し、この曲はどこかジャズみも感じるイケイケなアレンジ。サックスの活躍がやはり大きいでしょうか。どこかとある怪盗を彷彿とさせる気もしますが気のせいですかね。

周りのお客さんもかなりノリノリでしたね。昔からの有名曲で皆が知っているからというのもあると思いますが、やはりこのテンポの良いアレンジがどこか魔理沙っぽさを感じるからというのもあるでしょう。とてもマッチしていると思います。


5.虹色の境
『館の輝かしく素敵な毎日』

上海紅茶館メインのアレンジ。この曲を聞いた時の率直な感想はとにかく美しい、綺麗。基本的に崩したりしない原曲のメロディーのままのアレンジですが、チャイムや笛の生み出す音色が非常に心地よいものとなっています。

 これは後でとある方に言われて気づいたことなんですが、「上海紅茶館(夢違科学世紀)」には「上海紅茶館(東方紅魔郷)」にはない少しの「溜め」もしっかり表現されていました。

 蓬莱人形や夢違科学世紀の影響が大きいからかもしれませんが、「上海紅茶館」や「明治十七年の上海アリス」はすごく大きなお屋敷のイメージが湧くんですよね。(館の門番の曲だからというのもあるとは思います。)今回もそんなお屋敷の明るい雰囲気を感じ取ることが出来ました。


6.Mystic Fantasia
『旧い軌跡を駆け巡る』

 古い人気曲にアレンジが続いた第二部ですが、〆を飾るのはさらに旧い人気曲。旧作曲(東方怪綺談)を怒涛の勢いで駆け抜けるまさしく「怪綺談メドレー」といったアレンジ。 

 旧作曲自体が元々速い曲が多いので、「幺樂団の歴史」等でよく聞いている方にとっては、聴き慣れたスピードに思えたのではないでしょうか。今回のアレンジは旧作曲のメインメロディーを中心に編曲されているので、今回で旧作曲を初めて聞いたよという方もぜひ元の原曲の方も聴いてみてほしいです。

一番印象的だったのは終盤の「Peaceful Romancer」のパート。今まで高速で進んできましたが、ここで突然切り替わって優しく包み込むような音色が奏でられていました。この曲は旧作のラストを飾る曲ということもあり、儚さを感じつつもオーケストラの壮大さを失わない非常に良いアレンジになっていたと思います。旧作ファンにとって大興奮間違いなしの演奏でした。


【第三部】

7.蓬莱伝説 〜そして誰もいなくなった
『素敵な幻想の楽園にご招待』

このコンサート唯一の1曲のみを使用したアレンジ。
東方の中でも和の雰囲気が強い曲である「蓬莱伝説」をどうシンフォニックに落とし込むのか、原曲では穏やかな曲調がずっと続くこの曲をどのようなアレンジに仕上げるのか、演奏が始まる前はこんなことを思いながらずっと期待していました。

…正直ここまで『幻想』を表現できるとは思っていませんでした。
最初は原曲同様いかにも平和でゆっくりな始まり方ですが、時々不穏さが現れてきます。
そして、パレードのように華やかになりでまるで非現実的なものが迫ってくるような感覚に陥られ、最後に楽園へと誘なわれた者を祝福するかような終わり方…もう気づいた時には幻想に引き込まれていました。


8.地の底に眠れし星の火よ、裁きの光をかざせ
『体感型弾幕アトラクション「東方地霊殿」』

本コンサートの看板曲にして大トリにふさわしい超大迫力な編曲。ナレーターの方も「とにかくこの音圧を体感してください!」と強く言っていましたね。同じく大迫力アレンジの「イドルム・デウスの審判」との違いとしては、あちらが「ハリウッド映画」ならこちらは「ハイスピードアトラクション」といったところでしょうか。

序盤は始まりの恐ろしさを忘れさせてくれるようなとても綺麗なアレンジがずっと続いていくんですが、「業火マントル」でパーカッション(打楽器)がメインになることでどんどん壮大になっていきます。

そして、ついに「霊知の太陽信仰 〜Nuclear Fusion」に突入。ここで登場する印象深かったポイントが警告音。最初は微かにしか聞こえませんが、途中から様々な警告音が入り混じりついにメロディーすら乗っ取るほど喧騒に鳴り響いてきました。この警告音の連鎖には本当に驚きました。

 もう立ち入り禁止の禁忌の領域に来てしまったということをひしひしと感じさせられましたね。灼熱滴る危険区域を縦横無尽に駆け回り、逃げていくような音運び。そしてその果てに待つ「ラストリモート」の存在感。まさにパワー全開、「聴く」ではなく「体感する」音楽でした。


【アンコール】

Ex1. 「四季百景」
  『四季の爆発的フィナーレ』

今回のコンサートの裏ボス枠。パンフレットにもCDにも載っていない最強の隠し玉。四季をテーマに様々な原曲が駆け抜けるので、原曲を知れば知るほど深く楽しめるメドレーだったと思います。(使われている原曲特定してる方々もtwitterで散見されました。一回聞いただけなのにお見事。)

そして終盤ではこの時まで溜め込んでいたかの如く全楽器フルパワーの大演奏。まさに四季が暴発したかのようなコンサートのフィナーレにふさわしい交響曲でした。


Ex2.「ぼくらの非想天則」
  『大団円で終わる私達の宴』

このコンサートの真のフィナーレがこの曲で終わると誰が予想できたでしょうか。「奏でるアレンジを楽しむだけがコンサートではない」とこの時強く感じました。


まさに『演奏会は「奏者」と「観客」で作るもの』というのが体現された瞬間でした。

しんみりとした終わり方も好きですが、このはっちゃけた感じで終わるのもどことなく「東方らしさ」を感じます。とても「楽しい」音楽会でした。

・終わりに
 とてもとても長い感想文に付き合ってくださりありがとうございました。もはや感想というか楽曲解説みたいになっているところも沢山あったと思いますが、ご了承ください。

 このコンサートに来た方々、全員が東方に詳しいというわけではないんですよね。「無料で近くでやってるから来た」という方、「知人が行くから東方よく知らないけど来てみた」という方もおられると思います。そういう方はぜひ原曲の方も聴いてみてください。「元はこんな曲だったんだ〜」と驚くと思います。


 また、今回演奏に行くことが出来なかった方々も、これからのイベントで本コンサートのCDを頒布するということらしいので、機会がありましたら是非手にしてみてください。持ってて損はしないです。私が保証します。


 そしてこのコンサートに行った方々、またはCD手に入れて聞いた方々、もしイベントで主催者様に会う機会があったら、ぜひその言葉で感想を伝えてあげてください。こんな数千字の感想文よりも数百倍思いは伝わると思います。

 最後の最後になりますが、本コンサートに関わった全ての方々と主催者のFDさんには多大なる感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。


(Sari)

追記:両手が腫れるほど拍手したのはこの日が初めてでした。

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