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その日、私は台南市街地から徒歩で安平へ向かった。 どうやら普通はバスかタクシーで行くらしい。 バスを使えば30分そこそこで行けるにも関わらず、なぜかその時はそういう選択肢が私の中にはなかった。 結果、1時間半ほど近くかかって辿り着いた安平。 3月下旬、既に暑くなり始めていた頃ではあったけれど、まだ「猛暑」ではなかったからよかったのだろう。 安平地区に入ってすぐのこと、気怠い午後の陽射しの中、老女が居眠りをしているその光景がなぜか無性に懐かしく、「来てよかった」と思った。
古いものが好きだ。 なので、海外へ行ってもどうしても古いものを見たがってしまう。 老街、老屋、古厝なんて文字をガイドブックや地図に見つけようものなら、その日の行先はもう決まってしまったようなものだ。 そんなわけでこの日の新化行きもわりと衝動的に決めた。 新化には鉄道が走っていないのでバスが重要な交通機関。なのでバス停「新化站」には立派な待合室がある。 バスを降りて5分も歩かないうちに見えてきたノスタルジックな建築群。 日本統治時代の建物が数百メートルほど続く商店街だ。
台南中心部からバスで1時間ほどの郊外にある、300年程の歴史がある小さな集落。 目の前には台湾海峡があり、一時は漁業が盛んだった場所だと思われる。 過疎化が進み廃れていく街を盛り上げようと、台湾では人気の食材であるサバヒーの形をした虱目魚包(サバヒーバッグ)を売り出したりして活気を取り戻した事もあったようだが、私が訪れた時には店も閉まっており、ただただ静かな時間が流れているだけだった。 時期的なものなのか、それともバッグの人気も一時的なもので終わってしまったのか、まだ確認で