会ったことのない祖父の話。

今日は私がまだ幼い子供の頃に亡くなった母方の祖父の話です。

子供の頃から母や祖母からあまりいい話を聞いてきませんでした。

明治41年生の祖父と、大正3年生の祖母。
叔父にあたる人からの紹介で、写真だけのお見合い結婚だったという。
祖父が顔を真っ赤にして働く姿を見た叔父は、祖父に対して働き者と良い印象を持ったようだ。

当時にしては高学歴の大卒（福岡から関西大学へ）。
そして顔はハンサム（イタリア人のようだったとか）。
そして働き者！
この3拍子だったら祖母が結婚したのもうなずける。（＾＾；

ところが後日談で何度も聞かされたのが、実は顔が真っ赤だったのは、お酒のせいだったとか、、、。祖父は酒好きだったのだ。
大学を卒業後、いったんは大手企業に就職するも宮仕えが性に合わず、パン工場、喫茶店、たばこ屋などを経営。ところが経営が苦手でことごとく事業に失敗。

母の記憶では、店先に並ぶ商品を家族のものがよく食べたり、人にあげたり、「儲けはなかったのでは？」と苦笑する。

借金も増え、次第に夫婦喧嘩も多くなり、いつの間にか祖父は家出。
女手ひとつで戦後の厳しい時代を4人の子供を育て上げた祖母の姿を見ていた子供達も、父である祖父に対していい感情を抱いていなかったようだ。

そんな祖父も、人付き合いだけは得意だった。
人脈があり、医者の知り合いがいて自分の子供を優先的に診てもらったり、お金もいろいろな人から借りていたと言う。

そのような人脈エピソードの一つに、戦闘員として戦地に赴きたくなかったために、知り合いの将校に賄賂を渡し、食料班にしてもらったそうだ。
社交的で、世渡り上手ではあったのだろう。

そうやって事業の失敗もあって散財し、祖母は相当苦労をしたようだ。
私は学生時代に祖母と住んでいたこともあり、そんな話は祖母からよく聞かされた。

でも私は疑問だった。
いくらそんな父親でも、子供として父に愛情はなかったのだろうか？
亡くなったときも悲しくはなかったのだろうか？
幾度となく母に聞いたが、
「家出して長いこと居なかったし、そんなに悲しくはなかった。でも今にして思えば可哀想な人だったなと思う。」と言う返事。

そして祖父の身の上話になるのだった。
祖父はまだ幼い頃、実母を亡くし、継母に育てられた。
曾祖父は事業家で裕福ではあったので、お金は与えられたけれども、継母からの愛情はなかった。
ボンボンで育った祖父は世間知らずで、人にもだまされやすかったのだろう。

けれども一方で人に愛される人でもあった。
天理教など、いくつかの宗教もしていたようで、晩年はいろいろな方にお世話になって生活していたらしい。
ある住職を師と仰ぎ、その方とは母の代まで親交が続いた（私もお会いしたことがある）。要するに人とのご縁は大切にする人だったのだ。

そして私はふと思った。
祖父は時代を先取りしていた人だったんだろうなと。
戦前戦後の厳しい時代を、世間の枠に縛られず自分の思うままに生きた人だったのではないか？

今の言葉で言うなら、ワクワクに従って自分のやりたいように生きた人生だったのではないだろうか・・

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数年前のこと、驚くことがあった。
当時私は、熊本から隣の県の福岡までカラーセラピーを習いに行っていた。その先生のお宅は母が生まれ育った地元にあった。
それは知ってはいたけれど、あるとき母親から祖父が眠るお寺の名前を聞かされてびっくり！

それは当時、毎月のように通っていたカラーセラピーの先生のお宅から、わずか50ｍほど先にあるお寺だった。私は何も知らずによくそのお寺の前を通っていたのだ。

おじいちゃんの眠る場所の前を、何年も素通りしていたなんて・・！

そしてある日、カラーセラピーの勉強の帰り、その寺にお邪魔してご住職にお話を伺ったけれど、世代が変わり、その方も祖父のことは知らないようだった。すでに永代供養で合葬され、お墓もなかったけれど、祖父の魂に手を合わせたのだった。

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↑ 戦後、祖父が経営していた『山の家』という名の喫茶店のお皿。
なぜか1枚だけうちにあり、今も便利な大皿として使っている。
母の記憶では、福岡は天神のど真ん中に、当時としては珍しかったソフトクリームが食べられるおしゃれな喫茶店として流行っていたという。
これが私と祖父をつなぐ唯一のもの。

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今日も記事をお読みいただきありがとうございました♪

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Sara

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