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名刺交換したい

最近新しく名刺を作ったのだけれど、このコロナの騒動で全く名刺を交換する機会がない。
私は大学を卒業してからほとんどの期間を個人事業主として働いてきました。20代は7、8割の仕事をメインとする業務委託先からもらって、ちょっと手が空いたら他の仕事もする、といった働き方だったため、個人事業主とはいえどもそこまで自分の時間に自由があったり裁量がある働き方ではなかったです。
そんな働き方だったので簡易な自分の名刺は持っていたけれどほとんどはその7、8割の仕事を受けている会社の名刺を使っていてあまり自分の名刺を出すこともなかったので、そんなに気合いを入れて名刺作らなくてもいいか〜と思って、会社の名刺を使ったりたまに簡易な名刺を使ったりすることでなんとなく日々を過ごしていました。

ただ、この度30代にも突入したし、仕事も自分名義で受けるものも増えたし、受ける仕事も種類や数が更に多様化し始めたので、簡易な名刺ではなく「ちゃんと作った!」と思える名刺が欲しくなり、作ろうと決意。
その経験が自分の中で面白かったので、このようにnoteで残しておこうと思い、書いてみました。

誰に頼むか

誰に頼むか。今までいろんなデザイナーさんとお仕事させていただいたり、憧れのデザイナーさんも何人かいるのですが、「自分の名刺を頼む」と考えた時に迷わずすっとこの人にお願いしようと思いついた人がいました。

天宅正さんというデザイナーさんです。

天宅さんは、元々ドラフトというデザイン会社にいて、その後独立されて神戸市のクリエイティブディレクターをやられたりお酒のラベルデザインから本のデザインまで、様々なフィールでご活躍される方。
私は、2015年?くらいにトラベルムジカというプロジェクトをご一緒させていただいてからのご縁です。
プロジェクトは大変なことがたくさんあって、大変なことの一つにシルクスクリーンでTシャツ を何枚だろう100枚とか?(もっとかも)手刷りするという仕事があり、当時私が住んでいた築70年の底冷えする木造建築に奧さんのかすみさんと一緒に、手作りのお弁当を持ってきてラジオを聴きながら一日中(それを何日か)Tシャツを刷るということをしたりしました。
ご活躍されているデザイナーさんにそんなことを頼むこと自体恐縮だったのに、結局全部のTシャツをうちに来て刷ってくれて、かすみさん手作りの美味しいご飯まで一緒に食べさせてくれて、大変だと思ってたTシャツ刷りの作業は楽しい思い出になりました。(私的には、天宅夫妻はすごく大変だったかも)

上記のようなお人柄やご夫婦の関係性と、後私はデザインのことはあまり詳しくないのですが天宅さんの丁寧で優しくあたたかみがあるのに大胆なデザインが好きで、天宅さんだ!とすぐに決めたのでした。

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↑その時の様子

どんな名刺を作ろう

私は自分の仕事で、ポスターやチラシを作ったりしたことはたくさんあって、元々ある目的に基づいて、発注したり、デザインフィードバックをしたりみたいなことはしてきたけれども、いざ自分のこととなると、全くやったことがなくて困りました。
正直絶対に譲れないデザインの希望もないし、自分の肩書きすらよくわかっていない。
でも発注するなら何か希望は出さねばと思い、一生懸命考えた結果が下記。

①名刺の典型的なフォーマットであること。
②色は水色が好き。
③名前(英/日)、電話番号、メールアドレス、肩書きを入れたい。

希望というより、ほぼ必要事項、ほぼ丸投げって感じですが、こんなふわっとした内容でお願いしました。
でもこの希望を出すのも本当に悩んで、まず、肩書きで困りました。私は、特に専門性もなく決まった領域もなく技術も持っていないのですが、色んな業界に潜り込んではその場で必要とされてそうな仕事(主に裏方そして結構現場寄り)を考えて、ただ進める、という仕事をやってきたように思います。肩書きとして、マネジメントもディレクターもしっくりこず。ただ演劇業界でいう制作さん、という言葉は「あ、自分のことだ」と思って、日本語表記は【制作】としました。その後英語表記。これもあーでもないこーでもないと考えていたら、天宅さんがポンと、「coordinatorは?」と仰ってくださって、色んな意味はあれど検索したら一番に出てきた【進行役】という言葉が非常にしっくりきたので、【coordinator】としました。

デザインその1

上記のふんわりした発注内容を元に天宅さんがその1をあげてくださいました。

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こんな素敵なコメントと共に。過大評価な気がしますが嬉しかったです。
これをいただいた時に、まず自分は不均一な丸の方が自分らしい、と思ったのと、自分の名前は非常に日本的な名前なので名前が縦書きというのは、しっくりくるなと思いました。後情報量が少ないので、やっぱりシンプルなデザインというの非常に難しく、ハイレベルな印象。私はなんかまだそこまでの土壌に上がってないなと思い、表に情報をまとめた方が自分らしいと思いました。
てなことを、お返ししました。

デザインその2

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水色が好きで憧れなんだけどなんか、水色って私らしくないのかなーと薄ぼんやり思っていたところでした。
「人々の期待に答える」という言葉もすごくこれからの自分に必要な視点な気がして、対話をしてデザインを重ねることの面白みを感じました。
Cのフォントがゴシックでも明朝体でもなく、自分の名前のひらがなの味わい深さが出ている気がして気に入りました。
また、ちょうどこの時にドリフターズ・インターナショナルでやっているRE/CREATIONというスクール事業の中で「はみ出す」ことについて考える授業がありました。(詳細こちら
私は、はみ出しまくっているものをギリギリのところで枠に収めるのが自分の仕事かなと思っていたのですが「はみ出す」ことについて考える授業を行った時に、果たして収めることが本当に良いことなのだろうか?という疑問がちょうど湧き出たところでした。
ギリギリで収めるなんて、余白がないしなんかつまらないな、と。したたかに、こっそりはみ出すくらいの気持ちを持って今後仕事をしていきたいと思ったので、天宅さんにはちょっとはみ出したいと伝えました。

デザインその3

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途中にも色々とあったのですが最終の提案はこんな感じでした。天宅さんのお言葉に甘えて存分に迷った末、
・期待に応えるピンク
・憧れの水色
・ちょっとはみ出てる
という観点から1枚目のC_01_03_01に決定しました!!長かった!

活版印刷の立会い

天宅さんから印刷は活版印刷はどうですか?と提案いただき、前から興味があったので、活版印刷でお願いしました。

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まず紙を決めました。
紙の手触りを触りまくったり、エア名刺交換して人の意見を聞いたり、天宅さんに色の乗り方のアドバイスを聞いたりしながら、表と裏でちょっと手触りが違う紙にしました。裏にはなんの情報もないし、割とシンプルなデザインと情報なのでちょっと紙に質感を持たせました。

紙を選んで、天宅さんに伝えたら、印刷立会いしませんか?と、お誘い。
即答でついていきました。
ALL RIGHT PRINTINGという大田区の鵜の木にある活版印刷所です。

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↑活版印刷機。かっこいい

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↑作ってもらった版の一部

そして刷り師さんがミュージシャンの東郷清丸さんでした。
ライブも聞いたことがあったので驚きました。この頃はちょうどコロナで色んなイベントやライブが中止になり始めた時期で、「ライブがどんどん中止になってます〜」みたいな話を聞きながら刷ってもらいました。東郷清丸さんはミュージシャンとしての側面の方が有名だと思うのですが、ご自身はそれだけではなく、活版印刷職人とも名乗っており、ジャンルや肩書きみたいなものからの自由さを感じました。本人が楽しいならば何か一つにことにとらわれる必要はなくて、色々やったらいい。
東郷さんは今ライブができなくても、活版印刷職人としての仕事もあり、印刷技術を使ってアーティスト活動をすることができて、コロナみたいな状況下にも強みがあるな〜と、テキパキ働く姿を気持ちよく眺めながら思いました。

↑活版印刷機が動く様子、機関車みたいでかっこいい。

↑試し刷りしたピンクが少しくすんでいたので、すぐに直してくれた。

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↑左が元のピンク、右が直したピンク。ぱきっとして綺麗!

完成

長々と書いてしまいすみません。
今まで仕事でデザインには関わってきたのですが、クライアントやプロデューサーの意向がある中での指示しかしてこなかった私にとって、今回自分だけの意思でデザインしていくという行為が初めてで、個人的に非常に新鮮な体験だったので、記録を残しておこうと思って書きました。

そしてこの自分でデザインについて考える体験をするのに、やっぱり天宅さんにデザインをお願いするのは間違いなかったなと思います。
天宅さん、本当にありがとうございました。

そんなこんなで名刺が届き、とっても嬉しいのですが、このコロナ状況下で、仕事も飛んだり延期になったり、人に会うこともなくなって、せっかくできた名刺、全然配れてません。
今なら時間もあるので、誰かと郵送で名刺交換したいなーと思って。(暇人)

よかったら名刺交換しましょう!!してくれる人連絡ください!!


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