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Baghdadの風景~Bazaarデッキの比較検討~

⓪初めに

こんにちは、vwxyza648204ことsapuriと申します。
普段はMagic Online(以下MO)のVintage環境で主にDredgeをプレイしているものです。

冒頭から私事で大変恐縮なのですが、昨年末に紙でMox JetとMox Emeraldを購入しました。理由としては加速度的に値上がりしているP9を現実的に買える値段のうちに買っておこうという金銭的な面もあったのですが、それ以上にVintageのトーナメントにおいてDredgeのみで戦っていくことに限界を感じていたためです。(この理由については後述しています。)

これまでは専らDredge専門のGrinderだったのですが、今回のMox2種の購入を期に12月頃からDredge以外のBazaarデッキをいくらかプレイしました。試行回数はさほど多くない練習不足の状態でしたが、先日のVintage Challengeでは2位という望外の結果を残せました。今回は自らの整理を兼ねていつものDredge記事ではなくBazaarデッキというよりマクロな観点からVintage環境を見ていこうと思います。

本旨では
①Vintageにおけるデッキ分類
②Bazaarデッキの項目別評価
③各Bazaarデッキの位置づけと総評
の順で説明をしていこうと思います。

①Vintageにおけるデッキ分類

早速、Vintageのデッキ分類を見ていきましょう。
大まかに3種類+その他にタイプ分けされます。

1.青いデッキ
2.《Mishra's Workshop》を使うデッキ
3.《Bazaar of Baghdad》を使うデッキ
4.その他のデッキ

1.青いデッキ

・Combo(Tinker/Underworld Breach/Doomsday/Paradoxical Outcome/Spy)
・Fair(BUG Midrange/Jeskai Archanist/4c plainswalker/Oath
etc…

【特徴】
・ヴィンテージの花形であるP9をふんだんに使う。
・特に《Ancestral Recall》と《Time Walk》が強力でこれらのカードがほぼ確実にデッキに入る。
・同ジャンルの中でも多様性があり、それぞれのデッキごとにプランが大幅に異なる
・青いカードが多く使われている関係で他ジャンルよりも攻め手に対する受けが広く丸い傾向がある。
・その他の分類のデッキと比較して(一部のデッキを除き)激しいクリーチャー展開は控えめな傾向がある。

2.《Mishra's Workshop》を使うデッキ

・Tax(Golos Shops)
・Aggro(Raveger Shops/Aggro Shops)
・Combo(KCI/Jewel Shops)
etc…

【特徴】
・Mishra's Workshopと各種Moxのマナ加速を利用した高速展開デッキが多い。
・《Sphere of Resistance》《Trinisphere》等の妨害置物カードでマナを縛る傾向がある
・デッキが茶単or茶タッチ青で組まれることがほとんど
・先手時の置物設置による制圧力が極めて高い
・デッキの構造上、カウンターが採りづらく受けは弱い傾向がある

3.《Bazaar of Baghdad》を使うデッキ

・Pitchvine
・Hogaakvine(Hollowvineを含む)
・Dredge
etc…

【特徴】
《Bazaar of Baghdad》の2枚ドロー、3枚ディスカードを生かし高速でカードを展開しアドバンテージを得る
・墓地を利用するデッキが多い。
・マナの支払いを行わないか、行う場合でもその依存度が著しく低いデッキが多い。
・対策が薄いメインゲームの勝率が他のデッキと比較して著しく高い
・《Bazaar of Baghdad》への依存度が高く、初手の良し悪しによるゲームの影響度が高い。

4.その他

・Death and Taxes(W Initiativeを含む)
・Mono Red Prison
・Elf 
・Goblin
・Merfork
・Dark Depth
・Helmvoid
etc…

【特徴】
・書き出すときりがないため比較的数を見るデッキだけ列挙。
・非青のアグロデッキと、非青のコンボデッキとなる。アグロ系のデッキは何かしらの手段を講じて相手の展開を縛って戦うものが多い。コンボ系のデッキはヴィンテージでは対策しにくい土地・エンチャントを経由したコンボが多い。

以上がVintageの大まかなデッキ大別となります。
今回はこの中の《Bazaar of Baghdad》を使うデッキに着目していきます。

②Bazaarデッキの項目別評価

前段が長くなりましたが本論に入っていきたいと思います。
VintageのBazaarデッキは上述の通り3つです。まずはサンプルリストです。

①Pitchvine
カウンター濃い目のクロックパーミッション
2種の《Squee》+《Bazaar》でリソースを確保

Vintage Challenge 1/7 2023 by KingHairy

②Hogaakvine
《Bazaar》+αでクロックを展開しながら《Hogaak》でライフを詰めるアグロデッキ

Vintage Challenge 12/25 2022 by vwxyza648204

③Dredge
Dredgeによる墓地展開からリソースを確保し横並び展開でライフを詰めるカウンター薄めのクロックパーミッション

Vintage Challenge 12/24 by Wizard_2002

その他にも《Survival of the Fittest》を用いたSurvivalやReanimate等のデッキもないわけではないですが、今回はメタゲームの中心となっているこの3つのデッキに絞って話を進めます。

ここからは各項目別にそれぞれの立ち位置を見ていきましょう。
評価する項目は以下の通りとなります。それぞれの項目をBazaarデッキの中からそれぞれ三段階(〇/△/×)で評価していきます。言うまでもないことですが評価項目の選定及びそれらの点数評価は筆者の主観となります。

①《Bazaar of Baghdad》への依存度=マリガン依存度
②墓地対策への対抗度合
③《The Tabernacle at Pendrell Vale》への対抗度合
④アグロデッキとの相性度合
⑤コンボデッキとの相性度合
⑥同型デッキ(Bazaarミラー)の相性度合
番外編:デッキバレ時の受けの広さ=顔メタによる影響度合

①《Bazaar of Baghdad》への依存度=マリガン依存度

ポイント:《Bazaar of Baghdad》がなくても戦えるかどうか

Pitchvine: 評価✕(極めて高い)
Pitchvineは《Master of Death》《Squee, Goblin Nabob》《Hollow one》のように中心となっているカードの性質上、クリーチャーの展開からカードの補充までをほとんどすべて依存しており、《Bazaar of Baghdad》が機能しないことにはゲームがはじまりません。《Wasteland》と《Strip Mine》から一応マナの捻出はできますが、基本的にキャストはできないため完全な機能不全に陥ります。また、初手が減れば減るほど展開やガードが薄くなるデッキで、初手への依存度は極めて高いです。
いわゆる「バザーを引くまでマリガン」というデッキとなっています。

Hogaakvine:評価〇(比較的低い)
Hogaakvineでは他の2種類とは異なりマナを生み出すカードがデッキに含まれており、依存度は最も低いです。《Stitcher's Supplier》のお陰で《Bazaar of Baghdad》以外にも墓地にカードを落とすことができるので依存することなく《Hogaak, Arisen Necropolis》をキャストすることができます。もちろん《Bazaar of Baghdad》を引けたほうが強力な展開が期待できますが、なくてもゲームになるハンドも十分期待できます。

Dredge:評価△
Dredgeは初手で《Bazaar of Baghdad》を引くことが必須なものの、1度起動ができれば墓地にDredgeパーツを落とすことで次のターンから通常ドローでカード展開をすることができます。また、場合によってはDiscardでDredgeクリーチャーを落とすことで半永久的にDredgeを続けることができます。
加えて、Dredgeは仮にマリガン回数が増えて手札枚数が4枚以下になってしまった場合でもデッキとしては十分に機能することから評価は△としました。

②墓地対策への対抗度合

ポイント:墓地依存が高いカードの枚数とマナ捻出の可否

Pitchvine:評価△
手札補充のキーパーツである《Master of Death》《Squee, Goblin Nabob》が封じられ、ゲーム展開速度の鍵となっている《Vengevine》が封じられてしまうものの《Basking Rootwara》《Blazing Rootwara》《Hollow one》といったクリーチャーのキャストは可能でゲームの展開も行えるため致命的な影響は発生しません。

Hogaakvine:評価△
墓地対策が影響するカードは《Hogaak, Arisen Necropolis》《Bloodghast》《Vengevine》《Stitcher's Supplier》と多いものの、他の2種のデッキと異なりマナが生み出せることから完全な死荷札になるのは《Hogaak》だけです。
また、《Deathrite Shaman》の起動能力がコンバット以外のクロックを生み出すことができます。加えて今回のデッキの中で《Blazing Rootwara》の起動能力の赤マナが安定して払える唯一のデッキのため、高いクロックを維持しやすく、相手の墓地対策には3種の中で最も強く戦えます。

Dredge:評価×
Dredgeという性質上墓地にカードがないとデッキとしてまったく機能しません。故に3種の中で最も墓地対策が効くデッキとなっています。特に《Leyline of the Void》は劇的に苦手なカードでこのカードが展開されている限りにおいて、クロックとして機能するのは《Hollow One》だけとなり極めて辛い戦いを強いられることになります。

③《The Tabernacle at Pendrell Vale》への対抗度合

ポイント:いかにマナが捻出できるか、《The Tabernacle at Pendrell Vale》を乗り越えることができる勝ち手段があるか

Pitchvine:評価△
メインデッキから《Wasteland》《Strip Mine》が取られているので先置きできれば対処は可能です。ただし一度置かれてしまった場合の立て直しが3種類のデッキの中では一番厳しいため、評価は△です。

Hogaakvine:評価〇
メインデッキから《Wasteland》《Strip Mine》が取られている上、その他の通常の土地や《Deathrite Shaman》《Mox》があることから3種類の中で最も《The Tabernacle at Pendrell Vale》への免疫があります。一時はDredge対策に自らがサイドボードに取っていた時期もありました。

Dredge:評価△
メインデッキでの対抗手段はなく、サイドボードに3~4枚積まれた《Wasteland》《Strip Mine》が唯一の直接対抗手段となります。ただし、《Ichorid》には影響がないこと、《Creeping Chill》によるライフの直接干渉が存在することから評価はPitchvineと同様の△としました。

④アグロデッキとの相性度合

ポイント:クロックが大きく、横並びできるデッキが有利

Pitchvine:評価△
Vintage全体の中ではクリーチャー展開性能は上位なものの3種中では低め。タフネス4を超えるクリーチャーが戦場に出ると攻撃がビタ止まりしてしまいます。特にDRS系のデッキに入っている《Tarmogoyf》やShops系のデッキに入っている《Nettlecyst》《Golos, Tireless Pilgrim》に弱く昨今ではメインボードから《Snap Back》を取って《Tinker》をにらみながら、アグロデッキとの相性差を改善しようとする試みがおこなわれています。

Hogaakvine:評価△
8/8 Trampleを持つ《Hogaak, Arisen Necropolis》を展開できるため、アグロデッキ全般と相性は良いです。ただし、環境に一定数存在する白系のアグロデッキについては《Karakas》や《Swords to Plowshares》といった苦手カードがメインから複数枚取られているため例外的に苦手な相手となります。

Dredge:評価〇
大量のクリーチャーを横並びさせる上、そのクロックも大きいため文句なく〇評価です。コンバットで渡り合えない可能性があるのは《Sphinx of the Steel Wind》のような特殊な事例のみでほとんどの相手に有利が付きます。

⑤コンボデッキとの相性度合

ポイント:青ければ青いほど有利

Pitchvine:評価〇
3種のデッキの中で最も妨害手段を持っており、コンボデッキには無類の強さを発揮します。《Squee》2種によるリソース回復手段もあるため、他のBazaarデッキが苦手としている《Doomsday》に対しても有利が付く唯一のデッキとなります。

Hogaakvine:評価×
青が入っていないことからわかる通り、コンボへのガードは極めて低いです。メインゲームはほぼノーガードで、1T目のコンボ成立を妨害する手段は《Force of Vigor》(構築によっては《Mental Misstep》)のみです。サイドボードではとりわけ苦手な《Doomsday》対策をしたり、《Pyroblast》を取ってカウンターを狙ったり《Collector Auf》でファクトを咎めたりして何とか挽回を図る形になります。ただし、他の2種が苦手な《Sphinx of the Steel Wind》については確定除去できる《Boseiju, Who Endures》をメインから取っているのでTurn1の《Tinker》からへの対処は例外的に可能です。

Dredge:評価△
メインボードにはカウンターが7~8枚と2~3枚の《Force of Vigor》が取られており、対策札はあります。ただし、デッキの性質上《Bazaar of Baghdad》を引くまでマリガンをしなければならない上、Pitchvineとは異なり手札リソース回復の手段がないため、どこまでカウンターが引けるかは運次第でコンボに強い構築と言い切ることはできません。また、サイドボード後も相性差は改善されないため、評価は△としました。

⑥同型デッキ(Bazaarミラー)の相性度合

ポイント:クロックが大きく、横並びができ、《Bazaar of Baghdad》の破壊手段があり、墓地対策が多いデッキが有利

Pitchvine:評価×
3種の中で一番クロックが細いため、メインボードは一番不利です。
サイドボード後からは墓地対策の枚数にもよりますが、若干Dredgeに有利が付くかどうかといった程度です。Hogaakvineに対しては《Hogaak》を出されるとかなり厳しい上に《Rootwara》2種が《Deathrite Shaman》の前でビタ止まりしてしまうためサイド後も有利はつかない厳しい戦いとなります。

Hogaakvine:評価〇
3種の中で太いクロックである《Hogaak》を持っているため有利です。
また、メインボードから《Deathrite Shaman》と《Wasteland》《Strip Mine》を使うことができるので一般にメインボード最強と言われるDredgeに対して土をつける可能性があります。加えてサイド後は《Leyline of the Void》に加えて《Boseiju, Who Endures》がさらに増えるので同型では最も強いデッキになります。

Dredge:評価△
展開力が高いのでメインボードでは最も有利が付きます。
一方でサイドボード後ではPitchvineには五分~微不利、Hogaakvineについては完全に不利となるので評価は△となります。

番外編:デッキバレ時の受けの広さ=顔メタによる影響度合

あまりにも露骨な内容のため番外編にしました。Vintageは紙でもMOでも競技人口があまりにも少ないため顔メタの要素が否定できません。

Pitchvine:評価△
《Bazaar of Baghdad》への依存度が高いため、《Wasteland》《Strip Mine》《Pithing Needle》でキープされると厳しい。一方でコンボデッキに対してカウンターを探しに行ったり、同型で《Wasteland》《Strip Mine》を探しにいけるため評価は△

Hogaakvine:評価〇

《Bazaar of Baghdad》への依存度が低いため、比較的柔軟なキープが可能。
コンボデッキに対しては不利なものの、Turn1に《Vengevine》をキャストできる手札をマリガンで探しに行くことができるため、可能性はある。同型には《Wasteland》《Strip Mine》《Deathrite Shaman》を探しに行けるので有利がつく。特にDredgeに関してはメインボードで顔バレおよびPowder公開によるデッキバレしている相手の場合、マリガンによって相性差を4:6から5:5程度まで改善することが可能。

Dredge:評価×
《Bazaar of Baghdad》への依存度が高いため、《Wasteland》《Strip Mine》《Pithing Needle》でキープされると厳しい。加えてコンボデッキに積極的に複数枚のカウンターを探しに行けるほどの対策枚数を取っておらず、同型にはメインボードに《Wasteland》《Strip Mine》がないため不利。
トーナメントで同じデッキばかり使い続けてデッキを特定されることが望ましくないアーキタイプのため、筆者は今回Mox購入に至っています。

③各Bazaarデッキの位置づけと総評

②でまとめた内容を〇を3点、△を2点、×を1点と換算してマトリクス化すると以下の表となります

番外編を除いたバージョン
番外編を入れたバージョン

ここで注意したいのが、これらの項目をメタゲームに合わせてどのように評価するかという点です。実際のトーナメントではこれらの要素が均等に評価されることはないし、プレイする前に正確な評価配分を見つけることはできないためです
例えばコンボデッキがメタゲームの中心にいるのであれば一定の係数を⑤にかけて評価してPitchvineの評価を上げるべきですし、みんなが自分のデッキを知っているのであれば⑦に係数をかけて評価してDredgeの評価を下げるべきです。
とはいえ、今回の評価からある程度の結論を導くことはできるので、最後にそれらをまとめて終わりにしたいと思います。

①Pitchvine

・コンボデッキがメタゲームの中心を占めており、アグロデッキ及び同型が少ないときに有効
・メタゲームが散っていて項目を均等評価した場合、3種の中で最も評価が低い
・引きに左右されやすい

②Hogaakvine

・アグロデッキ、同型デッキがメタゲームの中心を占めており、コンボデッキが少ないときに有効
・メタゲームが散っている場合、3種の中で最も丸く戦える
・引きに左右されにくい

③Dredge

・環境にアグロデッキが増えており、墓地対策が薄い場面で有効
・弱点が明確でデッキを顔メタには弱い
・サイドボード以後は引きに左右されやすい

以上となります。
流れで一気に書いたので加筆訂正の可能性がありますが一旦ここでアップロードしたいと思います。なお、これらは2023/01/17のMO環境での評価とです。直近では《Poxwalker》がMOに実装されることで大きな影響が出てくるのではないかと思っています。

長文になりましたが、ここまでご拝読いただきましてありがとうございました!

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