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SAP FIカスタマイズ 基本設定シリーズ 0 ~財務会計モジュール概要 / FI Module Overview 解説~

本投稿は、FI コンサル ”基本設定シリーズ” 概要編です。
SAPのFI モジュールの概要について、初心者でも理解できるよう分かりやすく・詳しく・具体例を交えながら解説することを目的としています。
SAPを業務で利用する方や、SAPの導入/運用・保守に関わる方であれば絶対に知っておきたい重要知識ばかりですので、是非最後までご覧ください。

なお、”SAP コンサル 基礎知識編”シリーズに関する投稿内容・目的についてはこちらをご覧ください。

また、本投稿に関する質問・要望・感想などあればコメント欄、メール、TwitterのDM経由で受け付けております。お気軽にご連絡下さい。
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SAP FIカスタマイズ 基本設定シリーズ は全⑥弾で構成されており、
それぞれに解説編とデモ編を用意しています。
すでに投稿済みの記事へは下記リンクからアクセスできます。
是非ほかの記事も併せてご覧下さい。

<FI コンサル 基本設定 シリーズ>
⓪ : FIモジュール概要 - 解説  ← ☆☆今回のテーマ☆☆
① : FI 組織構造 - 解説 / デモ (有料公開中)
② : バリアント & 会計年度 - 解説 / デモ (有料公開中)
③ : 通貨と換算レート - 解説 / デモ (有料公開中)
④ : 勘定科目表 - 解説 / デモ (有料公開中)
⑤ : 得意先 & 仕入先マスタ - 解説 / デモ① / デモ② / デモ③ (有料公開中)
⑥ : 銀行 - 解説 / デモ (有料公開中)

また、他のSAPカスタマイズ シリーズも公開中です。
シリーズまとめ買いで割引価格が適用されるので、是非ご利用下さい。
各シリーズのコンテンツ内容・価格・おすすめの購入方法についてはこちらにまとめているのでご一読下さい。
FI 全シリーズまとめ(前編)
  ・基本設定シリーズ (*全編投稿済み)
  ・伝票 & 転記管理シリーズ (*全編投稿済み)
  ・消込管理シリーズ (*全編投稿済み)
  ・その他基本プロセスシリーズ (*全編投稿済み)
FI 全シリーズまとめ(後編)
  ・固定資産管理シリーズ① (*全編投稿済み)
固定資産管理シリーズ② (*全編投稿済み)
  ・応用設定シリーズ (*79% 投稿済み)
  ・決算処理シリーズ (準備中)
  ・その他シリーズ (準備中)
・CO 全シリーズまとめ(前編)
  ・CO 基本設定シリーズ (*60% 投稿済み)
* 投稿進捗・・・2022年3月13日時点

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今回の解説概要 

今回の解説は、FI モジュール基本設定シリーズを学んで頂く前にその全体像を理解して頂くことを目的とした、概要解説編となります。
・そもそもSAPのモジュールとは何か?
・FI(財務会計)とは何か?
・FI モジュールの重要性とは?
などについて解説しています。

解説編を見終えた皆さんは、以下のことが理解できるようになります。
・ERPにおけるモジュールの役割
・財務会計とは?
・財務会計と管理会計の違い
・SAPにおけるFI モジュールの重要性

1.モジュールとは?

モジュールを説明するために、まずはERPとは何かの復習と、モジュールが誕生するまでの経緯を簡単にご説明します。
* ERPについては別の投稿でも詳しく解説しているのでぜひそちらもご覧ください。

SAPを含む一般的なERPとは、企業が持つ複数の業務システムを一括管理し、スピードや生産性を向上させるためのプラットフォームです。
企業はERPを導入することによって情報を一元管理し、スムーズな日常業務の遂行と、迅速な意思決定につながる情報収集という大きなメリットを得ることができます。

今日では数多くのERP製品が世に存在し、各社がそれぞれ開発を進めていますが、しかしその一方で、昨今の競争激化に伴って増大しつづけるソフトウェア開発の複雑性が懸念されてきました。
ソフトウェアが複雑になりすぎて、開発時に致命的な間違いを起こしやすくなってきているのです。
これに対する解決策として登場したのが、「モジュール化」という考え方です。
ソフトウェアの再利用性を最大限に高めるようなモジュール化のアプローチを使い、共通のビジネスプロセスを内部トランザクションの中にカプセル化するというものでした。 
その結果、SAP はオブジェクト指向を用いた「ビジネスオブジェクト」の概念を導入しました。これがモジュールのはじまりです。

つまりモジュールとは、企業が持つ複数の業務範囲をカバーするために複雑になりすぎたERPを細分化し、ERPシステムを構成する要素を機能ごとにまとめたものだと言うことができます。

システムを車に例えると、車がシステム全体にあたり、エンジンなどの部品はモジュールに該当します。
エンジンはそれ自体でも機能しますが、システムを構成する要素でもあります。
ERPにおけるモジュールも同じで、ERPというシステム全体の中にいくつものモジュールが組み合わさっているのです。

SAPに限らず、ERP製品であれば基本的にはこのモジュールの組み合わせでできています。
すべてのモジュールを洗い出すとかなりの数になりますが、基本モジュールは「財務会計(FI)」「管理会計(CO)」「販売管理(SD)」「在庫購買管理(MM)」「生産計画/管理(PP)」の5つとされています。

<SAP 代表モジュールの一覧> 

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2.財務会計とは?

では、ERPの基本モジュールのひとつであり、今回のテーマそのものでもある、「財務会計」とは一体何でしょうか?
*「財務会計」= 「Financial Accounting (FI)」

「財務会計」という言葉を説明するには、言葉そのものを一旦「財務」と「会計」分離して別々に説明したほうがわかりやすいかと思います。

「財務」とは?

企業において「財務」と言った場合はおよそ以下のような意味になることが多いです。

1.資産、負債、損益、キャッシュフローの管理
2.資金調達(銀行融資)、余裕資金の計画・運用

「財務部」が存在する企業の場合は、「財務」という言葉はおおよそ、日々のお金の流れを管理し、資金がショートしないように資金繰りを考え、お金を調達してくる仕事を指していることが多いかと思います。
「財務部」が資金調達の仕事を進める時には、「経理部」が作成する決算書(などが必要とされることが多く、「財務部」と「経理部」は切っても切れない関係にあります。 「財務部」が存在しない企業においては、「経理部」が財務の仕事まで担当していることが多く、「経理」と「財務」という言葉は厳密に使い分けられていないこともあるでしょう。

「会計」とは?

会計の語源は、中国の『史記』に出てくる「計は会なり」という言葉だそうです。
「計」は「正確に話すこと」、「会」は「増えること」を意味しているため、「会計」とは「増えたことについて、正確に話すこと」となります。
*減った場合はどうするの?という疑問はありますが古い言葉なのでそこは大目にみましょう。。。

つまり、企業のおいて会計とは、金銭や物品の出納を、貨幣を単位として正確に記録、計算、管理等することを意味し、「経理」とも呼ばれています。

では「財務会計」とは?

上記で説明した通り、「財務」とは資産・負債・損益の管理と資金の計画・運用のこと、「会計」とは増減を正確に記録、計算、管理することですので、この二つの言葉を合わせた「財務会計」とは、

企業における財務状況(資産・負債・損益の状況、資金の計画・運用の状況)を正確に記録、計算、管理することを表しているということになります。

そして財務会計の最終目的は、集めた情報を”財務諸表”として企業外部の利害関係者(株主、債権者、徴税当局など)に対して提供することになります。

3. 管理会計との違い

財務会計と似た言葉に管理会計というものがあります。
管理会計(COモジュール)も、ERPの基本モジュールのひとつになります。

ここでは、よく初心者が混乱しがちな財務会計と管理会計の違いについてお話したいと思います。

管理会計とは、社内において各業務プロセスからデータを集計加工し、直接費や間接費の原価分析、収益性分析のレポートを作成、それをもとに現状把握や経営判断を行うことを目的とした会計のことです。

つまり結論から言うと、「財務会計」と「管理会計」は同じ会計であっても、その目的が全く違うということです。

財務会計は対外的に経営状態を開示するために財務諸表を作成するための会計、管理会計は対内的に現状把握や経営判断のための会計ということです。

具体的な違いの一例をあげるとすると、「財務会計」と「管理会計」では管理する情報の粒度が異なります。
財務会計上は、どの部門が使った経費であったにせよ経費は経費です。
対外的に報告する財務諸表上で部署別の詳細を明示する必要はありません。
しかし、部門別に損益を把握するような管理会計を導入すると、「どの部署(または個人)が、いつまでに、どれくらいの目標を達成すればいいのか」が明確になり、業績の管理や評価がしやすくなります。
売上管理のみならず、バックオフィスの予算管理にも有効です。
経営側は社内全体の進捗状況を俯瞰できるようになり、経営計画をスムーズに立てることができるでしょう。

財務会計とは、良くも悪くも企業会計原則に基づき、決められたルールの中で対外的に経営状態を開示するために財務諸表を作成するための会計でしかありません。
一方で、管理会計はあくまでも内部資料として作成されるので、特に基準などはなく、企業独自で経営判断に必要と考えられる情報を収集・分析することができるのです。

重要な経営判断を下すための情報として「財務会計」だけでは不足していると企業が判断した箇所を補うために「管理会計」が存在すると表現することもできるのではないでしょうか。

<SAPのコアプロセス全体像から見た財務会計(FI)と管理会計(CO)>

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4.SAP FI モジュールとは?

SAPのFIモジュールとは、上記で説明したいわゆる「財務会計」をつかさどるERPの基本モジュールのひとつであり、次のサブコンポーネントで構成されています。

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・財務会計総勘定元帳
総勘定元帳には、会社のすべての取引詳細が含まれます。
すべてのアカウンティングの詳細を維持するためのプライマリレコードとして機能します。
一般的な総勘定元帳エントリは、顧客トランザクション、ベンダーからの購入、および社内のトランザクションです。

・財務会計の売掛金と買掛金
これには、顧客が支払う金額の詳細と、会社がベンダーに支払う金額の詳細が含まれます。
つまり、APにはすべてのベンダートランザクションが含まれ、ARにはすべての顧客トランザクションが含まれます。

・財務会計固定資産管理
固定資産管理は、会社のすべての固定資産を扱い、固定資産に関するすべての取引の詳細を提供します。
財務会計の資産会計モジュールは、SAP MM、SAP Plant Management、EWMなどの他のモジュールと密接に連携します。

・財務会計銀行会計
銀行を通じて行われるすべての取引を処理します。
これには、実行されたすべての着信および発信トランザクション、残高管理、銀行トランザクションマスターデータが含まれます。
銀行会計コンポーネントを使用して、あらゆるタイプの銀行取引を作成および処理できます。

・財務会計旅行管理
このモジュールは、会社のすべての旅費を管理するために使用されます。
 これには、すべての旅行リクエスト、その計画、およびリクエストされたすべての旅行に関わる費用が含まれます。
SAPの他のすべてのモジュールとの統合を提供するため、組織が旅費を効率的に管理するのに役立ちます。

・財務会計基金管理
このモジュールは、会社の資金を管理するために使用されます。 資金管理モジュールは、銀行会計、総勘定元帳(G/L、SAP AR/AP、SAP資材管理など)のような他のモジュールと対話します。
 ファンドの詳細を取得します。
これには、資金受領、資金支出、および将来の費用に関するすべてのトランザクションが含まれます。
企業が予算予測を作成し、適切な方法で資金を使用するのに役立ちます。

・財務会計の法的統合
これにより、組織は複数のユニットを単一の企業として扱うことができるため、そのグループに属するすべての企業のすべての詳細を単一の財務諸表として表示できます。
組織は、単一のエンティティとしての財務状況について明確なアイデアを得ることができます。


以上が、FIモジュールの主な機能になります。
長々と書きましたが、要するに一言でFIモジュールを表現すると、会社、得意先、仕入先間の全てのモノの移動、サービス、及びその他すべてのビジネストランザクションに関する金融取引を記録するためのモジュールと言えます。

5.FI モジュールの重要性

4でご紹介したような金融取引の記録は、従来は全て紙ベースで記録・管理されてきました。
しかし、SAPのFIモジュールを代表するERPの登場により、紙ベースの金融取引の記録をシステム化し、さらには人の手をなるべく煩わせないよう業務を自動化・効率化することができるようになったのです。

今日のグローバルビジネス社会における取引量の増大を考えると、再び紙ベース管理の時代に後戻りすることなど到底考えられないでしょう。
FIモジュールが今日の企業にとっていかに必要不可欠なものなのかがお分かり頂けるのでないかと思います。

またFIモジュールを知る上では決して忘れてはならない重要なポイントがもう一つあります。
FIモジュールは販売・購買・生産などの他のモジュールとリアルタイムで連携されているという点です。
他のモジュールと連携されていることで、FIモジュール以外で実行されたビジネストランザクションに関する転記も自動で実施することができるようになります。
FIモジュールはそれ単体でももちろん機能しますが、他のモジュールと連携することで、会計業務の自動化・効率化の幅が無限に広がります。
実際のSAP導入時には、他モジュールと連携した仕訳計上方法・タイミング等の議論が最も重要であり、かつ最大の時間を費やし検討する内容になります。
またその複雑さ故に、業務とシステムの双方に精通した専門コンサルタントの知識が必要になるのです。

<FI モジュール & その他モジュールの連携イメージ>

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FIモジュールは、企業が行う全てのビジネストランザクションを記録するためのモジュールです。
従って、当然と言えば当然なのですが、非常に複雑です。
コンサルなしの導入はほぼ不可能と言っても良いでしょう。

SAP FI コンサル ”基本設定シリーズ” では、そんな複雑なSAPの FIモジュールを正しく動作させるための基本的なカスタマイズ設定について、なるべくわかりやすく、初心者の方に向けて紹介することを目的としています。

少しでもSAPを学習する皆さんの手助けになればと思い今後も有益な情報を投稿していきますので、ご興味ある方は是非フォローよろしくお願いします。

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