見出し画像

夢題

まだ夢に見るなんて、それも泣かされるなんて。

自分はまだ、起こりもしない奇跡を
心の奥で願ったりしてるんだ。
もう4年だよ、離れてから。
自分の愚直さに心底絶望してるよ。

いつまでこの呪いは続くのか。

何年経てば、本物そっくりの声と話し方で、
夢に出てこられることがなくなるのか。
何年経てば、流した涙に驚いて、
目が覚めることがなくなるのか。


いっそ死んでくれないかなあ。
そしたら堂々と、綺麗な額に入れて飾れるから。
「綺麗でしょう?」なんて、
他人に見せびらかすこともできるから。
もう無理やり箱詰めをして、
一番奥にしまわなくても良いから。

辛いなあ。苦しいなあ。
勝手に出てこないで欲しいなあ。
約束忘れてるくせに。
というかどうせ、何にも覚えてないくせに。


やっぱりいっそ。




「大丈夫ですよ。僕いつでも死にたいので。」
ノールックでスタスタと車道を横断しながら、
その人は言った。

「そんな事言わないでくださいよ!!」

なんて、言っていいのだろうか。

変わらない態度の裏に、
ひんやりしたものがあるのが少し怖かった。
もし本気だったら?
私なんかがかける言葉はないよな。

「○○さんが生きているから、
私も生きてるんです!!!」

続きの言葉も思い浮かんだけど、
いやいや...と思い直した。さすがにキツい。
この数秒間、あらゆる神経細胞が発火して、
音まで聞こえた気がした。

結果、何も言えなかった。
聞こえなかったフリをして、
ちょこちょこ走りで追いかけた。

夜の灯りが視界の端で、チカチカ揺れた。




前はそんなこと言ってたかな。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、
私の知らないところで何かあったのかな。

なんで死にたいなんて、人の前で言うのかな。
私は全く死にたくないのに。
むしろこの瞬間のために生きているのに。

新しい口癖みたいに、あっさり言うのやめてよ。
私じゃ分からないよ。

でも本当に死んでしまったら?

それも私の知らないところで。
当たり前だけど実家の住所なんて知らないし、
共通の友人も特にいない。
この人が死んだら、誰が私に知らせてくれるの?
どうやってお別れとお礼を言いに行けばいいの?



死なないでほしいよ。


死ぬくらいならさあ、いっそ結婚してよ。


次に夢で会ったら、
その後ろ姿に言えると思うよ。

貴方が振り向くまでの数秒間、
私の涙が零れませんように。

感覚的に「いいな」と思ったらおねがいします