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私が仕事で嬉しいこと

忘れてもらうことが嬉しい!?

保育士でもある私が、仕事をしていて1番嬉しいこと。
それは「子どもの成長がわかるとき」

成長がわかるときと聞くと、多くの人は「何かができるようになったとき」を思い浮かべると思います。

たとえば、歩けるようになった、自分の名前が言えるようになった、といった具合です。私自身も我が子について聞かれたら、同じように回答します。

でも仕事をしているときの私が、成長を感じる瞬間は独特です。


なぜなら、私が園児の成長を感じるときは、「私のことを忘れてくれるとき」だからです。

「忘れる」に成長を感じる……
今日はそれを具体的に説明するために、Aくんとのエピソードを紹介します。

Aくんとの出会い

園で大人の助けが必要な子に、マンツーマンでサポートをする。これが私の仕事です。
小学校でいうと、通級指導教室(通級)の先生を思い浮かべると近いでしょう。

マンツーマンで補助するくらいなので、自分の気持ちを言葉で伝えてくれることは少なく、意思疎通が難しい子がほとんど。だから試行錯誤しながら、1年間じっくりゆっくり向き合って過ごしていきます。


とある年に担当したAくん。
「馬が合う」という言い方が合っているかは分からないけれど、お互いに心地よい関係を築けたお子さんがいました。 

素直に出してくれる感情が私にはわかりやすかったし、こちらの話も分かってくれる。周りの先生からも「いいコンビだね」と言われる仲良しでした。

Aくんのママからも「Aがこんなに好きな先生、ほかにいないかも」と言われるほどで、担当になれて本当に幸せでした。

進級で徐々に変わるAくんとの関係

でもせっかく1年かけて築いた関係も、進級とともに次の先生へバトンタッチ。私も別の子の担当になります。


そこまで大きい園ではないから、クラスが離れてもそれなりに顔を合わせるし、会えば声をかけることはできます。
でも今までのように私がずっと寄り添うことはできません。


進級当初、クラス替えという事情がすぐには飲み込めないAくんは私を見かけると、足早に寄ってきて「おはよう」のタッチを求めてきました。

自分のクラスに私を連れて行こうと手を引いたり、ぎゅーっと抱きついたり。「なんでぼくと一緒じゃないの?」と渋い顔をして見つめてきたこともあります。


不安でいっぱい。

眉毛を寄せて曇った表情をするAくんの表情で、いろいろ分かってしまうけれど、
「先生はAくんのクラスじゃなくて、△△ぐみなんだよ。今日は◯◯先生と遊んでね」
寄ってくるAくんに私は笑顔で言い聞かせ、新しいクラスに送り出していました。


そんな日を過ごしながら1ヶ月、2ヶ月と過ぎていくと、
Aくんもだんだんと新しい環境、新しいお友だちに慣れていきます。
そしてだんだんと私にも近寄らない日も増えてきました。


「Aくん」と声をかけても、振り向くだけで無反応の日
「ん……(ー_ー)」とちょっと人見知りするような表情の日


Aくんにとっての私が「1番身近な先生」から「知らない先生」に変わっているのをひしひしと感じる瞬間。

でもそれは、Aくんが新しい環境に順応して、自立する力を身につけたという成長を確信できる瞬間でもありました。

寂しさ以上に感じる成長

いわゆる普通の子と違うから、今までの関係にプラスして新しい関係を積み上げていけない寂しさは、正直なところあります。

でも私とのことを忘れる代わりに、彼は新しいことをどんどん吸収しています。
彼は忘れることで「成長する力」を得ている。
そんな気がしています。

とある先生が「あのね最近Aくん、こんなこと1人でできるようになったんだよ」って教えてくれました。

・踏み外しそうで手を繋いで降りていた階段も、1人でスタスタと降りていくし、バスの乗車順も守れるようになった。
・お庭にある木の枝にどうしても捕まりたくて、無言でバンザイしながら視線で訴えることもなくなった。

きっと私がずっと担当だったら、新しいことを吸収するのはもう少し先だったかもしれません。

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今日も私とすれ違っても、こちらをチラリとも向かずまっすぐ駆けていくAくん。

担当の先生は呆れ顔で「あんなに仲良しだったのに、忘れちゃったのー?」なんて言ってくれるけど、私は気にしません。

「ほんとに塩対応……っていうか忘れてますよね。
でもいいんです。きっとそのぶん、新しいこといっぱい見てるし聞いてるし。Aくんがいっぱい成長している証拠ですから。」


かたわらにBくんを連れた私は笑顔で答えながら、Aくんの背中を見送ります。


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最後までお読み頂きありがとうございました。
今回はWebライターラボの、7月のコラムテーマ「仕事をしていて嬉しかったこと」について書きました。

Discord名:大内沙織
#Webライターラボ2407コラム企画


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