妊娠報告にまつわるエトセトラ
■妊娠したことを周囲に報告すること
妊娠したら、妊娠したことを周囲に報告する必要がある。パートナー、親、兄弟、子ども、親戚、友人、職場の人、SNS上の顔を合わせない知り合い。全ての人に報告する必要があるかどうかは別だが、最低限報告する必要のある人がいる。
しかし、いつ誰に報告をするか、なかなかタイミングがつかめないものだ。安定期に入ったらという人が多いのかもしれないが、安定期に入ってもいまいちタイミングに乗りきれなかった。
なので、しばらくは私とゲゲだけのヒミツとなっていた。それはそれで世界で二人しか知らないステキごとがあるという楽しさがあってよかった。
結局、5ヶ月目に入ってから(最近)、家族にはLINEで、その他の人にはSNSで報告をした。
インターネットさまさま!
お陰で報告を済ませられただけではなく、たくさんの人に祝福していただけた。これは大変喜ばしいことだ。
それに、人の幸せを祝える人がこんなにいるなんて、世の中捨てたもんじゃないと思った。世界が輝いて見えた。
ありがとう!!
■ゲゲに報告をした時のこと
なかなか眠れなかった夜がやっと明けようとしていた、そんな時、妊娠検査薬がブルーのラインを示した。妊娠である。
ゲゲを起こすのは気が引けだが、これは二人の一大事。一人ではどうも抱えきれない。ゲゲにいちはやく伝えたかった。助けてもらいたかった。
私はゲゲの体をゆすりながら、「ゲゲちゃん、ゲゲちゃん、起きて」と声をかけた。するとゲゲはうっすらと目を覚まして、「う〜ん、起きないよ〜」と言ってまたすぐ眠った。
おーい・・・
以前記したように、妊娠が発覚した私の気持ちは複雑だった。喜びと漠然とした不安とが混じり合ったソレは、言葉にするのが難しい微妙味のミックスジュース。
というよりゲロ!
なので、早くこの喜びを分かち合いたいというよりは、口いっぱいに広がる苦味と酸味をなる早でゆすぎたい、そんな気分だった。
しかし、「起きないよ〜」と言われては仕方ない。あきらめて私も眠ることにした。そして今度は、ゲゲを起こすことのないよう静かにベッドに潜り込んだ。
「(ゲゲちゃん、私、妊娠したんだよ...)」
翌朝(世の中で言う昼)、まだ二人ともまどろみから出られないうちに、私は例の話を切り出した。せっかちだが、もう耐えられなかった。
「おはようゲゲちゃん。ゲゲちゃんにプレゼントがあるんだよ」
まだ眠たげなゲゲは、タオルケット(※まだ暑い時期)にくるまったまま「ふぇ?なに〜?」と返事した。
私「はい、プレゼント」
せっかくだからリボンでも付けておけばよかったが、この時はそんな余裕がなかったので、渡したのは素のままの検査薬。
私たちは子どもについて、特に計画性を持っているわけではなかった。全く考えていなかったわけではないが、"そのうちに"くらいのものだったので、ゲゲがこの結果をどう思うのかわからなかった。
これは、ゲゲのことを信じてるとか信じてないという話ではない。私自身、この結果に予想外にも複雑な気持ちが沸き起こったのだ。もしかするとゲゲだってそうかもしれない。
ゲゲ「え、コレ・・・・」
私「うん、プレゼント」
寝ぼけて夢と現実がわからないのか、状況がのみ込めないのか、検査薬のブルーのラインが何を示しているのかわからないのか、ハテナ顔のゲゲ。
ゲゲ「え!コレ・・・?」
私「妊娠してるってことだよ」
ゲゲ「本当に?」
私「本当だよ」
ゲゲ「本当の本当?」
私「本当の本当!」
ゲゲ「・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・うわああああああ〜〜〜!!!」
ゲゲは飛び起きると瞬間的に私に抱きついて、「おめでとう!おめでとう!」と、めいっぱい祝福してくれた。
「おめでとう。」今度は私がそう言うと、ゲゲは「さおりん、ありがとう!」と言って、とびきりの笑顔を見せた。
さっきまで私の中を支配していた複雑な気持ちも、このゲゲの笑顔にはかなわなかった。ああ、何も心配しなくていいんだ。心から喜んでいいんだ。はりつめていたものがほどていくのがわかった。「ゲゲちゃん、ありがとう。」
私たちは、しばらく、おめでとうとありがとうを繰り返し送りあった。本当に?本当だよ。ここにいるの?いるよ。不思議だね。すごいね。と、言葉を重ねては実感した。二人とも泣いたりしないで、かわりにたくさん笑った。
この時間が、この世界に流れる時間の中で、一番しあわせな時間に思えたし、私たちがこの世界で一番のしあわせ者だと思えた。自惚れすぎかもしれないが、今だけは自惚れたってバチは当たらないだろう。
ゲゲ:いつわかったの?いつの間に?
私:明け方にコッソリ調べたんだよ。
ゲゲ:うそー!全然気づかなかった!
私:一応起こしてはみたんだよ。
ゲゲ:えーそうなの?もう本当ごめん!さおりん不安だったよね?ごめんね!大丈夫だった?呑気に寝てるなんて、本当ごめん!
私:いや、そんな、いいよ。(いい奴だなぁ...)
そのあと、二人で一緒にカフェでランチをして、文房具屋へ行ってノートを買って、またカフェに行った(ゲゲは大のカフェ好き)。
そしてノートを広げると、私は早速一連のことを書きはじめた。このノートは、私とゲゲと、お腹の子どものことを書き記すためのノートだ。読者はゲゲ一人。たった一人の読者はアイスコーヒーを飲みながら言うのだ。
「いつかもう一人増えるかもしれないね」
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