もうすぐで、春

もうすぐで、春ですね。

もう本当は僕たちは春のどまんなかににるのに、それでもこれからくるかもしれない悲しい夏とか、それよりももっとすぐそばにある春を考えたりしている。最近はどうもこうにも何もすることがなくて、時間を無駄に使ってしまっている。無駄に使うのもどうしたものかと思って、今まで少し距離を置いてきた本を呼んだりすることに時間を使ってみる。

本を読む準備というものがある。

それはもちろんその本を買うことで、先週は荻窪のTitleと吉祥寺のBASARA BOOKSに行った。Titleでは「これからのエリック・ホッファーのために」と松浦弥太郎の「もし僕がいま25歳なら、こんな50のやりたいことがある。」を、BASARA BOOKSではヴォネガットの「パームサンデー」を買った。どちらも個人の小さな本屋さんで、居心地がいい。Titleはもう完全に街の本屋さんになっていて、通りすがる人々がなに身構えることなく自然に入っていく風景を何度もみれて、なんだかそれがすごくよかった。安心した。荻窪にこういう本屋さんが新しく、これからもずっとあるのだという事実にすごく安心した。BASARA BOOKSで本を選んでいる時には、店主の男性とお客さんの女性がレジ前で話していて、店主の方が「コーヒーが飲めるなら、それでいいじゃない。」と言っていて、それが今でもずっと耳に残っている。確かに、コーヒーがのめればそれでいいのかもしれない。結構お金はないけれど、自分が好きな仕事に関われて、自分の好きな人たち、愛くるしい季節の匂いとか、そういうものを感じることができて、そんな生活でコーヒーが飲めれば、それでいいなって最近はよく考える。

そろそろ上野公園でみんな花見を始める季節がやってくる。僕が上野公園で思い出すのは毎年、この季節で、桜がすこしだけ散ったベンチの風景。僕が「僕はハシビロコウと、サイが見たいんだけど、君はなにがみたいの」なんていうつまらない質問をしながらチケットの列に並んでいた時に彼女は「君だよ。動物園でハシビロコウやサイを見ている君を見に来たんだよ」なんていうから僕はその後彼女の顔を真っ直ぐみることが出来なかった。そのくらい愛おしくて、でもショッキングで、愛の深さというものを知ったのは多分、この時だったんだと思う。もうひとつは、別の女性と上野公園のベンチに座りながらコーヒーを飲んでいて、僕がこれから僕達はどうなっていくんだろう。なんて再びつまらない質問をしたら彼女は「結婚をしよう。あと3年後に結婚しようよ」と僕をみないで、自分が履いていたunited nudeのヒールを見ながら言った事。僕は笑いながら、そうだねなんて言った。そんな曖昧な答えも笑い声も咲くかもわからない来年の春の桜みたいに、意味がなかったのに。

僕達は大人になることができない。僕達は特に女の人の前では愛とか恋とかそういうものに関しては勝てるわけがない。今年も来る季節。春。もう僕達はその渦の真ん中で踊っているのだから、あとすこしだけ踊り続けてよ。一緒に。

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