4:《春の鼓動/Heartbeat of Spring》

2002年春。

トーメント発売後でいわゆる黒いカードの隆盛が目立っていたその当時。
地元公立中学校に進学した僕に唐突に転機が。


■なんだこの学校(驚愕)

「オレ、マジック:ザ・ギャザリングってゲームやってるんだけど」
「!?」

いつだったか、誰からだったのか。
本当にふとした自己紹介から何もかもが繋がった。

僕の入学した中学校は6クラスあった。
僕のクラスに二人、隣にも、また別のクラスにも。
切望し、求め続けた同年代の対戦相手がいきなり現れた。

どうも隣の地域の小学校では僕の小学校と時を同じくしてマジックが流行っていたらしい。
ちなみに当時の小学校同士の距離はまあまあ遠かったため、それぞれの小学校同士の交流はほぼ無かった。知らなかったのも無理はない。

特に何もしていないのに一瞬で道が拓けた。人生最高に上振れていたタイミングの一つだったと思う。
早速予定を取り付け、そいつらの家に突撃し対戦を試みる。
学校が終わった後の平日の時間だったが、絶対に楽しい時間になるだろう。

そして。

「あれ、そのカードスタンダードで使えなくない?」
「スタンダードって何?」

対戦はいわゆる異種格闘戦へと突入していた。


■そういうのは義務教育で教えてくれ

スタンダード。
今のマジックではもっともポピュラーなフォーマットで、大会も一番多く行われている。
読んで字の如く普通のフォーマットだ。

当時の僕以外にとっては、という意味で普通だったわけだが。
初めて聞いた単語だった。

聞いたところ、その当時のスタンダードとかいうやつは、インベイジョン・プレーンシフト・アポカリプス・オデッセイ・トーメント・第7版で構成されており、それらのエキスパンションに再録されていれば古いバージョンでも使えるよというもので、早い話が僕のデッキは古すぎて一部のカードが使えない、ということ。
そんなわけでちまちまと改良を続けていた僕のスーパー黒単は散華した。《暗黒の儀式/Dark Ritual》も普通に入っていたが、マスクスのカードなので当然スタンダード落ちしている。

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衝撃的な事実に驚きを隠せなかったが、考えてみればそれは確かにそうだなという理解も生まれた。
全てのカードを使える環境では個々の資産が物をいう。環境を更新しなければずっと同じゲームになってしまい、衰退は免れないだろう。
僕の資産程度のものが蓄積を続けたところで最強になるわけではなかったが、それでも飽きは来てしまうだろうなと納得のルールだった。

まあ不幸中の幸いという点も確かにあって、時はトーメント発売後~ジャッジメント直前。
つまりパックを買いさえすれば黒いカードを手に入れられるため、僕は生きるために無い小遣いを切り詰めトーメントを剥いては友達とのトレードを繰り返した。
地域としてはシングル販売している場所が少なく価格レートが不明瞭だったため、なんとなく系のトレードが非常に多かった。詳細は覚えていないが変なトレードもかなりあっただろう。

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そんなこんなで《ナントゥーコの影/Nantuko Shade》《もぎとり/Mutilate》を手に入れた。細部は怪しかったが、一応形にはなっている黒コントロールが完成したのであった。


■イカれたメンバーを紹介するぜ

当時の僕の中学校同学年でマジックをプレイしていた友人は以下だ。

赤黒コントロールを使っていたN。
《チェイナーの布告/Chainer's Edict》《無垢の血/Innocent Blood》で露払いし、《稲妻の波動/Lightning Surge》や《猛烈に食うもの/Magnivore》でゲームを決める。
僕の黒コントロールにはソーサリータイミングの除去しか投入されておらず、《猛烈に食うもの/Magnivore》の急襲を止めるのは非常に難しかった。

青緑を使っていたR。
デッキはいわゆる青緑マッドネスで、《ワームの咆哮/Roar of the Wurm》《不可思議/Wonder》の強力な攻めを《堂々巡り/Circular Logic》でバックアップする。
特に彼が好んで採用していた《霊気の噴出/AEther Burst》はミラーの長期戦には最適で、彼に同系戦を挑むとめちゃくちゃバウンスされてしまうのを覚えている。

色々使っていたI。
なんでも持ってるタイプで一番資産力があったと思う。固めるデッキが好きで土地破壊、対立、ブレイズ、とにかくなんでも使ってきた。
外見がおっさんで中学生の頃から現在まで外見が変わっておらず、逆荒木飛呂彦状態。今でも稀にマジックをしている様子が確認されている。

N・Rは2年に上がる頃にはマジックをやめてしまっていたが、逆に中学3年間はおろか今日に至るまで一緒にマジックを続けている友人もいる。

それが今の電結くんである。


■今では東北で大人気の神の子

何故か初のイニシャルではない名前で登場した電結くんについて話しておこう。
マジックは小学1年~現在と、これだけで既にとんでもない逸材だが、僕と同様に中学入学以前は個人的に細く遊んでいた期間が長い。
プレイスタイルは破壊的で破滅的だ。コントロールが好きで《神の怒り/Wrath of God》的なカードをよく使ってそうなイメージ。試合が長い。
最近も《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》をよく出しているそうだ。何も変わっていない。
また彼はいつからかレガシーメインのプレイヤーに転向しており、主にスニークショーを使っている。

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彼を語るには欠かせない話として、2014年秋のKTKのフェッチランドの再録発表の数時間前にONS版の《汚染された三角州/Polluted Delta》を4枚購入した逸話から「神の子」と畏れられている。
※その当時はまあまあ高額→再録で瞬間的にガタ落ちという流れで「使えればなんでもいい(版や言語にこだわりがない)」派の彼にはとんでもないダメージだった。現在では値段が戻ってきているので、時間経過を無視すればそんなに痛い話でもなくなってきている

彼とは中学で出会った時点から馬が合い、一緒にマジックの大会に行っていた。高校は別のところに進んだが、大会のない週末はよく僕の家で遊ぶなどしていた。
その後僕は東京の大学に進学・彼は地元に就職と別の道を歩むことにはなったが、帰省するたびに彼とマジックを楽しんでいた。

そんなわけで腐れ縁も長い。


■デビューしてみました

上記で大会について少し触れたが、僕の大会デビューもまさに中学1年の時だった。
彼らとマジックしているうちに以下のようなことがわかってくる。

・このグループ、Iだけ妙に強い。Iは大会の場に積極的に出ているみたいで、そこでトレード等で資産を集めているようだ。
・大会は月2くらいで行われている。そこでは年齢差関係なく熾烈な争いが行われている(偏見含む)
・彼らのデッキはそこで見た相手のデッキをよく参考にしているとのこと。

僕が使っていた黒コントロールは当時のデッキとしてはそこそこ強く(溜めて撃つだけなので簡単な方)、自分でも出てみたら結構楽しいんじゃないかと考え腰を上げた次第である。

ちなみにデッキは強くともプレイは一般中学生並みであったため、友達と遊んでいる段階から既に粗は出始めていた。
当時は《嘘か真か/Fact or Fiction》の分け方がどうとかでおっさんの話が盛り上がりそうな時代のまさに最盛期。

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こいつの分け方がとにかく下手でよくIに怒られていた。怒られていたというかIが嬉しそうに手札に入れていた。今なら間違ってたら教えてくれよと言いたい。
このカードは本当に色んなことを学ばせてくれた良いカードだ。

そんなわけで程良い大会の日程を確認し準備を進めるのであった。


つづく

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