予備試験は法曹コース導入後も絶対に無くならない

予備試験は法曹コース導入後は不要あるいは廃止すべきという意見を言う人がいますが、政策的にはナンセンスな意見です。

予備試験の制度目的は表向きには法科大学院に経済的な理由でいけない人に選択肢を与えるため、ということになっていますが、実はそれは表向きの理由がそうなっているという話に過ぎないのです。

表向きの理由もとても大事なのですが、それが実際に果たしている機能やそれが無くなったときにどういう不具合が起こるのかという観点から炙り出した「本当の理由」を議論しておくことも政策を議論していく上でとっても大事なのです。

予備試験という制度が設けられた「本当の理由」は、法曹に(東大生を始めとする)エリートを呼び込むため、だと考えられます。

要するに、予備試験というブランド価値の高い試験がなければ、以前の難易度の高い旧試験よりもエリートが法曹になろうとしてくれないわけです。エリートは試験の難易度とかブランドを重視します。予備試験という倍率の高い飛び級コースが無ければ本試験を含めた司法試験のブランド価値やエリートコースとしての価値が低下するので、エリートが法曹を選ぶことが少なくなってしまいます。エリートが法曹を選ばなくなると司法サービスの質が低下して世の中全体の不利益になってしまいます。これを避けるためにはエリートが法曹を選んでくれるような仕組みを作る必要があります。

また、予備試験というエリートを呼び込みやすいルートを作っておくことで、エリートが欲しい採用者にもメリットがあり、予備試験に受かっているかどうかという基準で採用側も選べば採用の手間やコストを抑えることができるのです。

ですから、予備試験が無いと実は採用者も含めた色んな人が困ったり法曹のサービスが低下して社会全体の利益も低下することになるわけです。

つまり、予備試験というのは法科大学院設置の際の司法試験ブランドの低下を避けるための政策だと捉えてください。

これを最近の例に基づいて言及すると、予備試験に選択科目が追加されたのは、法曹コースで早期卒業ができるようになることにより、予備試験の需要が減ることに対抗して、科目を増やすことで難易度を上げてブランド価値を維持することが真の目的だと考えられます。

国の政策の建前を素直に受け止めると物事の本質を見誤ることはよくあります。

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