サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!第957号『ゲーランダ・サンヒター』1:46

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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 2022.01.13.◆第957号◇

  目次 

     ◎ ゲーランダ・サンヒター 1:46

◆ 本文 
◆ 単語の切れ目・意味
◆ 原文の語順訳
◆ 日本語訳
◆ ポイント解説
◆ 編集後記


=◎ ゲーランダ・サンヒター 1:46 ================

◆ 本文(原文)

अथ जलबस्तिः।
नाभिमग्नजले पायुं न्यस्तवानुत्कटासनम्।
आकुञ्चनं प्रसारञ्च जलबस्तिं समाचरेत्॥४६॥
atha jalabastiḥ
nābhimagnajale pāyuṃ nyastavānutkaṭāsanam
ākuñcanaṃ prasārañca jalabastiṃ samācaret (46)
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◆ 単語の意味(連声を切った後の、各単語の意味)

atha さて、それでは
jala 水
bastiḥ バスティ
nābhi へそ
magna 沈められた、浸された
jale 水
pāyum 肛門
nyastavān 置かれた、保管された、横たわる
utkaṭāsanam ウトカタ坐

ākuñcanam 屈曲、収縮
prasāram 広げること、拡張すること、開くこと
ca また
jala 水
bastim バスティ
samācaret 実行する、なす

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 ◆ 原文の語順訳(原文を原文の語順と発想のままで読むための訳)

  さて、水・バスティである。
  へそ・沈められた・水に、坐し、ウトカタ坐を、
  収縮・伸張を、また、水・バスティを、なすべきである。

 ◆ 便宜的な意味(上の訳を自然な日本語の語順、流れになおした訳)

  以下が水のバスティである。
  臍の深さの水で、ウトカタ坐をなして、
  収縮と弛緩とをなす、かく水のバスティをなすべきである。

 ◆ ポイント解説

ここでまた「atha」の仕切り直しが入り、水のバスティ解説に入っています。これは前節でバスティには2種があり、水のバスティと乾いたバスティと規定されたところの、前者が語られ始めたことになります。

冒頭の「nābhimagnajale」は既出の表現ですが、どこで登場した内容でしょうか?

それはプラクシャーラナが語られた1:23でした。確認と再読を兼ねて今一度、原文と訳に登場してもらいましょう。

अथ प्रक्षालनम्।
नाभिमग्नो चले स्थित्वा शक्तिनाडीं विसर्जयेत्।
कराभ्यां क्षालयेन्नाडीं यावन्मलविसर्जनम्।
तावत्प्रक्षाल्य नाडीञ्च उदरे वेशयेत् पुनः॥२३॥
atha prakṣālanam
nābhimagno jale sthitvā śaktināḍīṃ visarjayet
karābhyāṃ kṣālayennāḍīṃ yāvanmalavisarjanam
tāvatprakṣālya nāḍīñca udare veśayet punaḥ (23)

以下が、プラクシャーラナである。
臍の深さの水に立ち、シャクティナーディーを取り出し、
両手で洗うべきである。マラが除かれるまで洗ってから、
管を再び腹部に戻すべきである。

そちらの流れが思い出せるでしょうか。そちらではシャクティナーディー、つまり直腸を外に取り出して洗うのに、同様に臍の深さの水に、という内容だったのですね。

その後の部分で両者に違いがあり、こちらには1:23にはなかった「ウトカタ坐」をとるというくだりがあります。

プラディーピカーではこの水のバスティがただ一種のバスティと語られていたことは既に触れましたが、登場したのは2:26でした。そこにこのウトカタ坐が同じように登場しています。そちらではこの坐を「ヤンキーずわり」に譬えてみたのですが、足をまげて膝を地に付けずに姿勢を保つ坐法ですね。

また節の冒頭が「nābhidaghnajale pāyau nyastanālotkaṭāsanaḥ」と、多少の違いはありながら同じような表現を用いており、明らかにどちらかがどちらかを踏襲している、もしくはさらに原形となる文があってそこから分かれた文章であることが読み取れます。

ただ、プラディーピカーにはこちらにはない、中空の管を肛門に挿入して水を引き込む旨が説かれており、こちらは道具を使うことが説かれていず、肛門の収縮と弛緩によって水を出し入れするようになっている違いがあり、どちらかだけを読んだ時より視点が増えますよね。

さて、少し話が逸れましたが、こちら1:46では1:23と同じ表現を用いていますが、1:23では「sthitvā」だったのに対して、こちら1:46ではウトカタ坐をとるという違いがあるわけですね。

では、前の部分、臍の深さの水に、というくだりはどうでしょうか?同じ深さの水でよいでしょうか?それとも違いがあるでしょうか。

1:23の配信では「sthitvā」を「立つ」と読みました。これは「留まる」とも読むことができ、そうすると「立つ」のではなく、こちら1:46と同様に、明記はされていませんが、ウトカタ坐をとる、と読むことも可能で、そうすると水の深さはウトカタ坐をとった姿勢での臍の深さの水、ということになります。

また1:23の「sthitvā」を「立つ」と解釈すれば、1:23での水の深さは立ったときの臍の高さ、1:46ではウトカタ坐をとった時の臍の深さ、と両者に水の深さの違いが出てくるわけです。ではどちらがより正しいと考えられるでしょうか?

これはご自身で行法の意義なども加味しながらあれこれ考察・検討していただきたいところですが、ウトカタ坐をとった時の臍の高さの水だと、立ち上がるとせいぜい膝より少し上くらいまでの水の深さですね。対して、立ったままで臍の深さだと、この深さで仮にウトカタ坐をとると、首まで浸るくらいの深さの水ということになります。

1:46では明記されているのでhウトカタ坐をとった時の臍の深さの水という点は確定でしょうから、ここからさかのぼって、1:23の水の深さは、立ったときの深さなのか、それともこちらと同様にウトカタ坐をとっての臍の深さなのか、前後を加味しながらご検討いただけたらと思います。

それに、そもそもこの水はどのような水なのでしょうか?流れのない、行法のためにこしらえたプールのような貯水地なのでしょうか。それとも川や池など自然の場所を想定しているのでしょうか。

その点についてはただ水とあるだけで、プラディーピカーもこちらゲーランダも、さらにラトナーヴァリーでも触れていません。この点もあれこれをイメージしていただけたらと思います。

ちなみに、ラトナーヴァリーでは、水に関してはプラディーピカーに準じた記述でしたが、方法はかなりの差別化を図っており、指を肛門に入れて、前号でも触れたチャクリの動作で肛門に水を量的に限界まで引き入れて、さらにヴィチトラカラニーという姿勢をとってから水を出す、というよりアップグレードされた方法になっています。

道具を用いないゲーランダ、管を用いるプラディーピカー、指を用いるラトナーヴァリーと、手法からしてそれぞれが違うところが興味深く、またラトナーヴァリーではさらに加味されている方法があって、やはり一つの教典を読んだだけではわかならい点が、複数の教典に接することで補完される部分が大きいという良い例と思います。
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  詳細解説はブログで

  https://note.com/sanskrit/n/n4ede84f58576

                       (第957号 完)
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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!
         発行者  誠  samskritamakoto@gmail.com

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