オナニート対話篇α－１

オナニートＡ：アル中のアラサーニート
オナニートＢ：アル中のアラサーニート
場所：オナニートＢの家賃二万円のワンルーム

Ａ：こんにちはソクラテスじゃなくて、A君、
Ｂ：あけましておめでとう、
Ａ：なにがおめでたいんだ？　この残酷無類の世界におめでたいことなどあるのか？
Ｂ：いや、たまには凡人どもの真似をしたかったんだ、
Ａ：（テレビを見ながら）あいかわらず学生どもが走っているね、
Ｂ：ああ大いに走ってる、きっとみんな恋人がいて、友達もたくさんいて、将来ちゃんとした仕事に就くんだろう、俺たちとは対極的な人生を歩むんだろう、
Ａ：俺はこんなキラキラした青春劇を見ていると生きているのがますます嫌になる、こんなものを正月から放送するなんてニートいじめにも程があるよ、大谷翔平がどうしたとか藤井聡太が何冠だとかそんな情報を浴びせられていると自分の惨めさがいよいよ許せなくなってくる、こんな若さあふれるキラキラコンテンツは全部なくなっちまえばいいんだ、もっと陰鬱で十五分も見ていると首を吊りたくなるような番組を作ってほしいね、それが無理なら「暗い日曜日」でもずっと流してりゃいい、「成功者」の存在は誰も幸せにはしない、ほとんどの人間は「負け組」なんだから、認めようとしない人間がほとんどだけど、
Ｂ：特に俺たちみたいな「負け組」のなかの「負け組」にとっては拷問だろうね、俺はマゾだからあえて毎年見てるんだよ、俺は自分の惨めさに酔えるんだ、自己憐憫が極度に達すると下半身がムラムラしてくる、
Ａ：俺はまだそこまで突き抜けられない、きのう地震があったね、家族は無事だったかい？
Ｂ：ああ、あったね、誰とも連絡してないよ、この糞忌々しい日常がまだ続いているのが残念でならない、俺に屈辱と絶望を断続的に与え続けるこんな国はいますぐ巨大津波に飲み込まれて欲しいよ、来年も君とこんな話をしていると思っただけで心底ウンザリする、
Ａ：君はどんなときでもユーチューブのコメント欄のポエムみたいなことを言わないから一緒にいると安心する、だからこそ唯一の友達なんだ、
Ｂ：言おうにも言えないんだよ、「みなさんどうかご無事で」とか「ご冥福をお祈りします」とかなんて思ったことないもん、思ってないことは言えない、俺は誠実だから、
Ａ：その誠実さを貫き通すと世間では「人でなし」扱いされるんだな、
Ｂ：こまったもんだ、ただ俺は「貫き通している」という自覚はないよ、そういう「力み」は嫌いなんだ、
Ａ：酒買ってきたよ、氷結の新しい味だ、
Ｂ：よし飲もうか、
Ａ：来るべき「人類の集団自決」に乾杯、
Ｂ：しょうがい女陰とは縁がないだろう俺の腐れチンポに乾杯、