落語協会のおじいちゃんズはやっぱりつよつよでした|初春四景(さん喬・雲助・権太楼・市馬)

当日のTwitter 感想では「雪の瀬川」のことしか書いていなかったのだけど、本当に四師匠が皆さまそれぞれに最高だったのです……!
すでに雲助師匠の「初天神」と、さん喬師匠の「雪の瀬川」はnoteにしていますが、こちらのnoteで他の高座についても記しておきたい所存。

初春四景 ─長講競演落語会─

柳亭左ん坊 出来心
柳亭市馬  禁酒番屋
柳家権太楼 質屋庫
〜仲入り
五街道雲助 初天神
柳家さん喬 雪の瀬川

20230124
国立劇場 小劇場

⬇︎雲助師匠の「初天神」の感想

⬇︎さん喬師匠の「雪の瀬川」の感想



市馬師匠「禁酒番屋」

「禁酒番屋」は、愛してやまぬ白酒師匠の十八番なので、白酒版はけっこう回数を聴いていると思うのですが、もしかしたらちゃんとしたやつ(おい)は初めてじゃなかろうか。
まぁあ〜楽しかったのであります!

最初にお屋敷が禁酒になった経緯が語られるのだけど、これが結構深刻なやつだった。人、死んでた。白酒版でも語られていたかもしれないけど、その後の顛末にわたしの記憶はすべて持っていかれてて覚えてない。THE ざる耳。

それはさておき、市馬師匠がお演りになると、武士たちにまさしく侍然とした厳格さがあって。
番屋で御同役に話しかけるときと、町人に相対するときの態度が全く違い、とにかく町人にめっちゃくちゃに厳しい。上下で表情変わりすぎやろってくらい、町人に向ける表情がキビしい。
なので酒屋の連中がムキになって、身分にあぐらをかいた侍連中の鼻をなんとか明かしてやりたいと思うのもわかる気がする。生まれの差だけで日常的にあんな態度取られてたら腹立つよね〜。わかりみ。

一転して、瓶の中身が酒だとわかったとき、そして毒味のときの、嬉しさを隠しきれていない表情がね、また最高なのであります。市馬師匠のステキなところが溢れ出してる……!それでも下手側の顔は、やっぱりこわかった!

この役人たち、最初の一升を呑んだ時点で結構な酔いっぷりなので、お酒に特別強いというわけではなさそう(たぶんこの藩、近藤氏が異常)。これまで我慢していた分をもったいない精神で取り戻しているのかしら? なんて思ったりしました。

そうそう。三便めが届いたときの、瓶の蓋の扱い。

桃版で、ポーンと放り投げているのが印象に残っていたのですが(なんでも比較対象が桃か雲で申し訳ない)、市馬師匠もやはりそのようにされていました。酒の前では武士もかたなし、完全に酔っ払いなんだな〜。もうほんと、楽しかった!!

権太楼師匠「質屋庫」

お正月から落語研究会の放送で権太楼師匠の「疝気の虫」で笑い転げていたので、この日久しぶりに拝見できるのを楽しみにしていました。
遅ればせながら、ご復帰おめでとうございます!闘病明けだし、どうかご無理なさらずに……とは思うものの、やっぱりお元気そうなお姿を見られるだけで、嬉しい。

権太楼師匠の「質屋庫」は、なんといっても、定吉。誰がなんと言おうと、定吉。権太楼師匠の小僧どんって、必ず「う、うるせ〜!」ってなるけど、そこがほんとうに大好きです!

この日も、定吉の絵に描いたような八つ当たりっぷりが最高でした!
泣いたり怒ったり、もう忙しいなぁ。旦那に言われたお小言の意味もよくわかっていないのに、受けとめきれなくて、熊さんにそのままぶつけるのが可笑しい。

「目をかけてやったら!」
「増長してっ!」
「行儀がわるいッ!」
って。も〜!涙が出るほど笑いました。

あと、定吉が所望するのは「栗まんじゅう別あつらえ」だというのも、焼き栗こだわり派のわたしにとっては胸アツ。栗が二個入りの特別感。それは小僧どんだって、一生に一度は食べたいよね。

まくらでは投薬の影響でむくみが取れないとお話しされていたけど、そんなハンデもなんのその。その後の畳み掛けるような熊さんの食材泥棒の一件も、三番蔵の見張り番も、終始明るくってとても楽しかった!

* * *

さん喬・雲助・権太楼三師匠は皆さま、over 74 という事実に改めて衝撃を受ける。そして市馬師匠、意外とお若いのね。

若手の方をもっと応援したい気持ちもあるのだけど、落語界のおじいちゃんたちの引力があまりに強すぎて。まだしばらくこの周辺から離れられそうにありません。

つよつよおじいちゃんズの魅力に、これからもずっと取り憑かれていたい。

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