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弁護士総合診療科

子供の頃から民話や説話のたぐいが好きで、民話集を擦り切れるまで読み込んでいました。私とは国も時代も違う人々がどんなことを考えて生きていたのかを想像するのがきっと楽しかったのでしょう。私がこの仕事を続ける根本的な理由も、私ではない誰かの人生に触れたいからです。

そのため、専門分野を聞かれると答えに困ってしまいます。どの分野に注力しているというよりは、依頼者の話をじっくり聞きとって、その人生や価値観を汲み取ったうえ、法的に通用する言葉に変えるという通訳者のような仕事を魅力的に感じているからです。取扱件数の多い分野や少ない分野はありますが、それも成り行きでそうなったというほうがしっくりきます。

こうしたことを友人の医師と話すと、もし医者だったらよい総合診療科医になれただろうということを言われました。総合診療医は「患者さんの抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医(関西医科大学HP)」だそうです。もちろん、リソースの制限から、総合診療医は専門診療医の各専門分野では太刀打ちできないでしょう。しかし、双方がそのことを弁えていれば(それが問題だという愚痴を上記の医師からよく聞かされましたが)、総合診療医が患者の人生を幅広くサポートし、その範囲を超えたものは専門診療医がその専門性で解決するというやり方は優れているように思われます。

それは弁護士も同じです。ある分野に注力されている先生には、その分野では到底かないません。ですが、弁護士にも上記のような役割分担があって。私は人生の幅広い問題をサポートできる弁護士でありたいと思います。そういう訳で、専門を聞かれた時にはこう答えるようにしました。

「とりあえず持ってきてください。できないならできないと言います。」

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