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「エッセイ」永遠の青写真#シロクマ文芸部#虎吉の毎月note

 青写真を描いていた。
年老いたら二人でずっと一緒に居るんだって。
今は忙しくて二人きりになれる時間は少ないけど歳を取ったら、もっと田舎へ引っ越して縁側のある家に住もうって。

「俺は好きな絵を描くよ、sannちゃんは?」
「私は、その隣で小説を書くわ」

一日が忙しなく動くのじゃなくて、ゆっくりゆっくり過ぎていく中で、二人きりになろうよ。

「貴方は友達が多過ぎるけど、大丈夫?」
「そりゃ、来るだろうな~、ガッハッハ」

じゃあ、皆のために庭にはピザ釜を作ってね。
あ、お庭でバーベキューをするのもいいね。

庭には梅の木があるといいな、そしたら、私は梅酒を作るね。
毎年毎年、甘く濃くなっていく梅酒を二人で飲もうよ。
「俺、一人で全部飲んじゃうかもよ」
「じゃあ、梅の木、いっぱいないとね」

わんこも飼おうね。田舎だから、ダーちゃんまた、ノーリードでお散歩出来るよ。

「俺はゴンじゃなきゃ嫌だな〜」
「でも…わんこは寿命が短いから(泣)ゴンちゃん、そこまで生きられないよ(泣)」
「俺はゴンのクローンを作ってもらう」
「はぁ〜?」
「こんな賢くて良い子は他に居ないから、ゴンのクローンを作る!」
「ゴンちゃんの子供じゃダメなの?」
「絶対、絶対、ゴンじゃなきゃダメ!なぁ、ゴンちゃん」

ダーちゃんは私に出す声よりも、100倍は甘ったるい声を出してゴンの頭を撫でる。ゴンちゃんも、うっとりしたような顔で晩酌しているダーちゃんのあぐらの上から離れない。本当に「親バカ」なんだから(笑)


青写真を描いていた。
今は皆に尽くしていても、いつかは必ず私の元へ帰って来るからねって約束してくれた。いつもいつも何度も何度も…。

「ねぇ、sannちゃん……」

あの笑顔も好きだった声も、今は地球上に存在しない。
分かってるんだ。私は一人だって。


春になったら、また貴方が逝った日が来る。
春が来たら、私はダーちゃんと離婚する。 
今までずっと籍は抜かなかった。ダーちゃんの毎年の法事を私が取り仕切る為に…。
いや、離婚して籍を抜いたからって、私がダーちゃんの神棚(我が家は神教)を守っていく事も法事を取り仕切る事にも変わりはない(たった一人のお義姉さんは葬儀には出席してくれたが、法事には出ていない 泣)
ダーちゃんが長男なのに亡くなってから、一度も大好きだった実家に帰れなかったのには事情がある(泣)
ご遺体になった主人を彼の実家は受け入れてくれなかった。それ等の話しは、とても酷いのでいつか有料記事にでも書きたいと思う。
ただ私はダーちゃんの葬儀が終わると共にいきなり豹変して、私を全く無視し始めたお義姉さんと一緒の墓には入りたくない。人はお金が絡むと手の平を返したように変わってしまう。
それを目の当たりに見てしまうと幻滅しかなかった。
ダーちゃんを生かしてしまった私が悪かったのか?!でもダーちゃんのご両親からもお義姉さんご夫婦からも私は遂に一円の援助も受けなかった。

人はお金で変わる。
だから私は春になったらダーちゃんと離婚する事を决意した。
六年目の春に私は、ダーちゃんと同じ苗字の新しい戸籍を作って本当の意味での独りになる。

独りの私が死んだら、亡骸は灰にして海へ流して欲しい。
下の弟に全てを任せたけどシスターコンプレックスのあいつは、きっと泣くだろうな。
それでも海へ流して欲しい。
ダーちゃんが好きだった海へ私を。

でもどうしてもどうしても、それが出来なかったら、私を梅の木の下へ埋めて欲しい。私の身体が養分になって梅に沢山の花が咲くといいな。私達が描いた青写真のように他の人の目が豊かになればいい。






小牧幸助さんの企画と虎吉さんの企画に参加させて頂きました。よろしくお願いしますm(__)m

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