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合成と天然のあいだ

 原稿を書いている間にトイレに行って戻ってくると、自分の話の着地点が見えなくなるってよくありますよね。
 はい。今がそれです。

 とりあえず前回の続きです。そもそも四大添加物(言っているのは恐らく世界で一社だけですが)って何かって見ると「化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料」だそうです。
 なるほど、わかりやすいですね。でも、このわかりやすさは結構危険です。一つ一つ見て行きましょう。

 1.化学調味料 これって具体的になんの事かわかりますか?みなさんが想像するのは赤い蓋のアレとか、オレンジの蓋のソレですよね。あれの製法はご存知でしょうか?メーカーによれば赤い蓋のアレは廃糖蜜を発酵させて作ったグルタミン酸を精製した物です。あんな顔してますけど発酵調味料なんですね。
 でも、この白い粉を入れて色々と言われたくない飲食各社や食品メーカーは工夫をしました。発酵工程を変えることで「酵母エキス」とか、分解方法を変えた「タンパク質加水分解物」です。これらは「添加物ではなく、食品」なので無添加になります。成分はほぼ同じですが。
 2.人工甘味料 一般的にサッカリン、アスパルテーム、ネオテーム、スクラロース、アセスルファムKなどを指しますが、天然植物から作られるステビアやキシリトールなども一緒くたに批判される時があります。一般的な砂糖も糖蜜を精製して作る物なので、合成甘味料と天然甘味料の境界線はカタカナと漢字なのかも知れません。
 3.合成着色料 これはタール系色素とβ―カロテン、水溶性アナトー、銅クロロフィリン(銅クロロフィリンナトリウム)を指すと言って良いでしょう。一方でコチニール色素のような天然着色料もカタカナだからか、虫由来だから危険!と言う謎の主張もよくなされます。今は皆さん、喜んで虫食べてますよね。
 4.人工保存料 これも基準が曖昧です。例えばヨーロッパで一般的な安息香酸は天然植物にも含まれます。ほとんどの食品は天然原料を加工して作っている為、人工とも天然とも言えるのです。
 更に、多くの食材は複数の効果があります。食塩や砂糖は味だけでなく、防腐効果もありますし、酢やレモン果汁は酸味料としてもpH調整剤としても使われますが、そもそもpH調整は通常、保存効果があります。

 2020年7月16日布告の食品表示基準では、「人工」、「合成」と言う文言の使用を実質禁止しています。「化学」もほぼ同様です。
 あれ?となると四大添加物ってそもそも使っちゃいけない物なんだから、入っているわけないんですよね。(物質として使っていても、その名前では使えない)
 それでも「当社は不使用!」と言われると、となると他社は使っているって事なのかなぁ?となまこ壁のお寿司屋さんを見るたびに邪推しちゃう私です。

 面白いもので、自然食品を標榜するお店に輸入食品を持って行くと、天然の砂糖を使った商品でさえお叱りを受けます。「白い食品は毒なのよ!」だそうです。食品の安全性に絶対値はありません。黒砂糖だって食べ過ぎれば毒ですし、酢は酢酸なので食道炎や酸蝕症で歯をボロボロにします。輸入品と違い、成分調整が可能な国産食品は、裏面一括表示で印象の悪い原材料を避ける意思が働きます。これが法の網をかいくぐる様なグレーゾーンを生んで、旨みたっぷりの無添加国産食品が世に溢れる事になりました。
 現在、日本の食品産業展示会に行くと「無添加扱いになる物質」が沢山ある事に驚きます。下手に隠される位なら、堂々と表示されている商品の方がよほど安心できると、個人的には思います。

 着地点を見失ったまま、迷走は次回に続きます。

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