再現答案 R4 予備試験 経済法

1 本件計画に基づいてX社がY社から甲の製造販売事業の全てを譲り受けることは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」)16条1項にするか。
2 行為要件
(1)X社は、「会社」である。乙は、甲と競争関係にある「他の会社」である。Y社の当該事業は、同社の事業の「重要部分」(同項1号)にあたる。
(2)よって、本件計画による譲受けは、行為要件を満たす。
3 効果要件
(1)「一定の取引分野」
ア 競争が実質的に制限されることとなるか否かを検討する範囲を示すものであり、一定の取引が対象とする商品・役務の範囲、地域の範囲等について、基本的には需要者にとっての代替性の観点から、補充的に供給者にとっての代替性の観点から検討し、確定し決定する。
イ 競争が制限されうる取引として、甲の販売取引が考えられる。甲は、乙の部品であり、乙の部品として甲に代わるものはなく、また、乙の部品として用いる以外に甲の用途はないから、需要者・供給者双方にとって、甲と他の商品との間に代替性はない。よって、まず甲の販売取引分野が、一定の取引分野として画定しうる。
 次に、大型甲と小型甲の販売取引で、別個の取引分野となりうる。大型甲の代わりに小型甲を用いることはできず、逆もまたしかりである。また、大型甲の製造設備を小型甲のそれに変更できず、逆もまたしかりである。よって、両者は別個の取引分野となる。
 そして、地域について、X社・Y社を含む甲の製造販売業者は、世界中に向けて甲を販売できる体制を整えている。また、乙は日本を含む世界中で販売されている。日本に所在するものも含む乙の製造販売業者は、必要な大型甲及び小型甲を、それぞれ世界中の甲の製造販売業者から購入している。販売価格に占める輸送費や関税の割合は小さく、大潟甲及び小型甲のいずれの取引においても、国ごとの価格差はない。よって、対象地域は世界といえる。
ウ よって、①世界における大型甲の販売取引分野、②世界における小型甲の販売取引分野が、それぞれ一定の取引分野として画定され、決定される。
(2)「競争を実質的に制限することとなる」
ア 一定の取引分野、すなわち市場の有する競争機能が損なわれる蓋然性があることをいい、企業結合の事案では、当事会社が、単独で又は他の事業者と協調して、その意思によりある程度自由に、価格・品質・数量その他各般の条件を左右しうる状態がもたらされる蓋然性があることをいう。
イ 以下、①と②の各取引分野において検討する。
ウ ①
(ア)単独的行動
 本件計画に基づきX社がY社から当該事業の全てを譲り受けた場合、X社のシェアは90%と過半をこえ、きわめて大きなものになる。競争者としてA社が存在するが、そのシェアは10%しかない。近年、大型甲の需要は減少傾向であり、Y社の大型甲の製造販売分部門は大幅な赤字が続いているものの、X社・Y社の製造余力は十分である。一方、A社は、余力がない。そのため、競争圧力は小さい。
 また、甲の製造販売事業を新たに開始することは困難であるから、新規参入圧力もない。
 そのため、X社が単独で価格の引き上げ等を行った場合、A社は対抗できず、X社がその意思である程度事由に価格等を左右しうる状態がもたらされる蓋然性がある。
(イ)協調的行動
 本件計画の実現により、X社の他にはA社しか競争相手がおらず、意思疎通や監視が容易になるといえる。また、A社は上記のとおりシェアも少なく、余力もない。そして、A社は、本件計画に先立ちY社からなされた大型甲を含む甲の製造販売事業の全ての譲渡に関する申し出を断っている。仮にこの申し出を受ければ、X社とA社はともに50%のシェアとなるが、A社には大型甲について余力が無いことから、①の分野でX社と争う意思がなかったものといえる。
 よって、本件計画の実現後、X社が価格の引き上げ等を行った場合は、これにA社が追従する可能性が高い。
 よって、協調的行動によっても、X社がその意思である程度事由に価格等を左右しうる状態がもたらされる蓋然性がある。
(ウ)正当化事由
 競争制限効果を上回る競争促進機能がある場合には、正当化される。
 本件計画が実現しなければ、Y社は①分野から近い将来撤退する蓋然性が高い。そのため、本件計画の実現により、競争主体の減少による競争制限効果を防ぐことが可能とも思える。もっとも、仮にY社が撤退しても、X社のシェアはなお過半を超えた大きいものであり、十分な余力がある一方、競争者A社のシェアは小さく、余力もない。そのため、本件計画がなくとも、X社の単独的または協調的行動により、X社がその意思である程度事由に価格等を左右しうる状態がもたらされる蓋然性がある。
 よって、正当化されない。
(エ)よって、①において「競争を・・・こととなる」。
エ ②
(ア)単独的行動
 本件計画の実現により、X社のシェアは30%になるが、他にもシェア30%のA社及び20%のB社、C社がおり、シェアはほぼ同等といえる。また、X社・Y社ともに十分な余力がない一方、A、B、C社は十分な余力がある。さらに、小型甲の需要は増加傾向にあり、活発な競争が行われ、小型甲の製品サイクルは短い。そのため、競争圧力は高い。
 また、モバイル型乙の製造販売業者は、取引交渉上の地位が強く、低価格調達のため発注方法を工夫しているから、需要者圧力も高い。
 よって、本件計画の実現により、X社が単独で、その意思である程度事由に価格等を左右しうる状態がもたらされる蓋然性はない。
(イ)協調的行動
 本件計画の実現後も、上記のとおり、X社の他、有力な競争者が3社もおり、意思疎通や監視は難しい。また、②分野は競争が活発であるから、X社が価格の引き上げ等を行ったとしても、他社は、十分な余力をもって、これに対抗する可能性が高い。
 よって、②において「競争を・・・こととなる」とはいえない。

<コメント>
1:こんなオウム返しで時間を浪費してしまった・・・
3(2)ウ(ア):「本件計画に基づきX社がY社から当該事業の全てを譲り受けた場合、」は、「本件計画の実現により、」で時間短縮できた
3(2)ウ(ウ):振り返ると的外れだ。仮に撤退しなくても、上記のとおりX社が支配できるんだから。
3(3)(ア)(イ):参入圧力や需要圧力に一応ここでも触れておいた方がよかった。
最後:「よって、本件計画の実現は、法16条1項に反する。」と書ければよかった。最悪でも「よって反する」くらいは書きなぐっても良かった。気合が足りない。
ただ、このとき、もしかして、競争の激しい小型甲市場で効果要件が満たされないから、全体として適法か、と思っていたので、むしろ書かなくてよかったか?
いや、いずれにしても、途中答案である・・・


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